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今こそ日本にインプロを!〜東京コメディストアジェイ

日本で活動している劇団は数限りなくあります。しかし、そのほとんどが一般に知られていないのが現状です。日本の演劇業界が、他のエンターテイメント業界、アート業界に比べ、マイナーであり続けているのには、必ず、明確な問題があるはず――――。

このコラムでは、現在活躍している劇団に取材し、劇団の現状やそれぞれが抱えている問題点、演劇全体が広く社会に認識されるにはどうしたらいいのかなどのテーマを共に考え、演劇の魅力をより多くの方々へ知っていただくための方法を考察してゆきます。

第45回目の今回は、「東京コメディストアジェイ」です。

●東京コメディストアジェイ

東京コメディストアが、1994年に日本在住の外国人コメディアン、即興パフォーマーを集めて創設された。そして2004年秋、創設メンバーのひとりであるマイケル・ネイ シュタットと今井純(イン・ザ・モーメント代表、東京コメディストア総合プロデューサー)が、「スターを輩出する」「即興のエンターテインメントを日本に浸透させる」この2つの目的を達成するためにつくった「場所」、それが「東京コメディストアジェイ」である。

渋谷・原宿の伝説的ライブ・ハウス「クロコダイル」 でのショーを中心に、カフェなどでの外部公演『そとであそぼう。』、イベントやパーティーなどへの出張パフォーマンスなど、活動の場を拡げている。

●今井純(いまい・じゅん)

即興芝居(インプロ)の世界的な指導者キース・ジョンストン、メソッド演技の本家『アクターズ・スタジオ』の名誉芸術監督フランク・カサロ、ハリウッド映画キャスティング・ディレクターの奈良橋陽子などから演技および演技指導を学ぶ。

キース・ジョンストン、リン・ピアス、デニス・ケイヒル、マーク・ラムなど、海外の即興芝居および即興コンテンポラリーダンス(コンタクト・インプロ)指導者の来日ワークショップでは通訳を務める。現在、プロの俳優・タレント対象の【即興力アップ↑】レッスンを展開中。

●今井純さんにお話を伺いました

毎月第1金曜日と第3木曜日の2回、定期的にインプロパフォーマンスのライブを行っている「東京コメディストアジェイ」。観客としては、いつでも気軽に観に行けるという嬉しいスタイルではありますが、カンパニーとしては精神的にも経済的にも体力が求められる、かなり過酷な活動です。

日本にもいくつかのインプロパフォーマンスグループは存在しますが、こういった活動を行っているのは東京コメディストアジェイ以外にはありません。活動を始めた目的と、インプロの真髄について、代表の総合プロデューサーの今井純さんにお話を伺いました。

Q・東京コメディストアジェイを始めたきっかけは何ですか?


もともと東京コメディストアという集団を、日本在住の外国人パフォーマーたちで作って活動をしていたんです。そのメンバーたちとは個人的に交流があったんですが、僕は「in the moment」というグループを作って活動していたので、合同で活動をすることは考えたことがありませんでした。

2年前に、東京コメディストアのマイケルから「一緒にやらない?」とオファーされたので、じゃあ、本格的にやろうかということになったんです。

目的としては、ホームページにもあるように「スターを輩出したい」「即興のエンターテイメントを日本に浸透させたい」というものです。

Q・なぜスターを輩出したいのですか?


僕は、ずっとアメリカで演技や演技指導について学んでいました。インプロもそこで出会ったんです。いろいろなメソッドを学んでゆく中で、インプロは本当に日本の俳優に必要な訓練だと感じました。そして、僕自身もパフォーマーとしてインプロを取り入れるようになっていったんです。ただ、日本に今広まっているインプロは、インプロの表面的なことを取り入れているだけだと感じるんです。

インプロというのは、精神面が大きなカギになります。人間誰しも、「他人からどう思われているだろう」という恐怖や、「よく思われたい」という願望があるでしょ。そういう気持ちが、実は自分自身を小さく縮みこませてしまって、人から影響されることや自分自身が変化することから遠ざけてしまってるんです。傷ついたり否定されることを極端に怖がってしまうばっかりにね。

でも、インプロはそういう恐怖を全て乗り越えて「自由」になることから始めなければいけません。このことを言葉だけで表現するのは本当に難しいんだけど、ありのままの自分をさらけ出して、失敗も人の評価も気にせずに自由になることが大切なんです。そうすることで、自分に自信を持つことも出来るし、人を受け入れて人の意見に乗っかってゆくこともできるようになります。人間としての器が大きくなってゆくんですよ。

ただ、日本では個が自立できていないので、ありのままの自分をさらけ出すことに大きな抵抗があるんです。どうしても周りの目が気になってしまうし、型にはめ込もうという教育がずっとなされていますから。インプロで言っている「自由」というものが良いものだという事は、頭では分かっているんですが実際に体得することが本当に難しいんですよ。

そういう状況の中で、「自由」になれていない人がHow toだけ学んでそれを広めたところで、本当のインプロが広まってゆくはずはありません。「こうすることがいい事だ」「こうやればインプロになるんだ」という方法論が大切なのではなくて、本当に大切なのはインプロを通して得た「自由」の先にある人間としての変化なんです。でも、どうしても方法論で止まってしまっているんです。結果が出てないんです。

海外では、インプロを通してたくさんのスターや有能なクリエイターが生まれています。日本でも優秀な俳優やクリエイターが育つはずなんです。ただ、インプロの本当の力を誰も知らない中で声を大にして言っていても説得力がないでしょ。だから、まずは東京コメディストアでクオリティーの高いインプロのエンターテイメントを成立させて、そこからスターが生まれることで、本当のインプロの素晴らしさが日本に広まっていくと思うんですよね。

Q.日本人にインプロが難しいのは何故なんでしょうか?


これは、文化的なものもありますが、一番大きいのは教育の問題じゃないでしょうか。「ああしなさい、こうしなさい」「あれは駄目、これは駄目」っていう指導の仕方でしょ。学校や親自身は型にはめていると思っていなくても、結果的には型にはめる方向の指導になってしまっていて、どうしても他人の目を気にするような人間を育ててしまってるんだと思います。

他人を気にするあまり、判断を他に委ねて依存してしまう。依存が強いから自分に自信が持てなくなってしまう。自信が持てないから、自分を守るために自由な発言を恐れるし、外から影響されたり自分が変化することから知らず知らず逃げてしまう。そうして、肩身の狭い不自由な人間になっていく。そして、そういう人が指導者や親となって子どもたちに接するから、同じ人間を輩出してしまう。悪循環ですよね。

僕は、東京コメディストアジェイを立ち上げる前には、多くの若者に指導をしていましたが、自分に自信を持っている人に出会ったことがありませんでした。

表面上は強がって一生懸命に飾っているんですが、インプロを始めるとそういう飾りはどんどんとはがれてしまうので、嘘が全部ばれてしまうんです。で、そうやってばれ始めたときに出てくる表現は、ただただボー然として物語に絡んでこないか、破壊的で暴力的な行動に出るかのどちらかなんです。

そういう子どもたちの話を詳しく聞いてゆくと、最終的に出てくる言葉が「愛されたい」「認められたい」「生きてゆく自信がない」そんな悲しい言葉ばかりでした。そして、多くの芝居の現場を見てみると、そういう思いが強い人ほど俳優をめざし、大仰でうそ臭い、取り繕った表現でせっかくの芝居を台無しにしている気がするんです。そして、日本の芝居の質は下がり、観劇人口もおのずと減っていく。これもまた悪循環です。

この循環の輪を断ち切らない限りは、今の状況は永遠に続いてしまいます。そうは言っても、日本の教育を変えるなんてことは、一朝一夕では出来ませんよね。せめて、教育者を指導してゆく場を設けることから、なんとか動き出せればいいと思うんですけど、これもまた大変な作業ではありますね。固まってしまった教育者を自由にするのは大変ですから。

Q・今後の展望を教えてください。


冒頭でも言いましたが、スターを輩出することですね。海外では、インプロを会得するのに5〜10年かかると言われています。僕自身、日本で指導をしてきてコンスタントに舞台に上がれるプレイヤーを育てるのに9年かかりました。

最近では、テレビなどの映像方面からも話は来るのですが、正直インプロをどうやってメディアに取り込んでゆくか、テレビ側が模索している段階で、はっきりとした形はまだ見えていないんです。

でも、少しは動き出しているかな?少しでも早く、インプロを日本に浸透させて、日本にぐるぐるとめぐっている悪循環を断ち切ってゆきたいですね。

いつもなら、インタビューは1時間〜1時間半で終わるのですが、今回は話がはずんで2時間半にも及びました。インプロの話から、海外の状況、日本の社会問題まで、ここに全てご紹介できないのが残念なくらい。今井さんが、とてもまっすぐに「自由」に話してくださるので、私も一緒に考えたり悩んだり、普段ではなかなか体験できないような会話が繰り広げられました。

一緒にひとつの結論に達したときには、スカッとして大笑い。自分ではひたすら話題になっているものに対して考えていただけだったのですが、「これがインプロなんですよ!」という今井さんの言葉にはっとしました。

人と腹のそこから何かに取り組み、目的に向かって突き進む。自分の意見を押し通すのではなく、協力しながらゴールに向かう。そのゴールは1つである必要はなくて、さまざまに変化していってもOK。こうやって、自分を出し、人を受け入れ、何かを得ることがインプロであり、コミュニケーションなんだと感じました。

心の問題が取りざたされる昨今、真のコミュニケーションを図っている人はどれほどいるのでしょうか。そして、そのことにどれほどの人が気づいているのでしょうか。東京コメディストアジェイの活動から、何かを感じてくださる方がより多くなることを、心から期待します。


☆★☆★ 東京コメディストアジェイ 公演情報 ★☆★☆

●J−LIVE  毎月第1金曜日 渋谷クロコダイル

「即興で繋がる」ジェイライブ:J-LIVE。お客さんを祝う。お客さんに贈る。お客さんと即興する。ダンサーとのコラボレーションやキャラクターによるショートコーナー。楽しく暖かく盛り上がるパーティーライブパフォーマンス!!

●S-1グランプリ 毎月第3木曜日 渋谷クロコダイル

「即興で戦う」エスワン:S-1。王者の称号を手にするべく、プレイヤー1人1人が、「共演者」「シーンのスタイル」を指定し、ベストシーンを目指す。審査員+お客さんの評価で決まる得点にプレイヤーが涙する。嫉妬する。感極まる。2006年12月(全10ラウンド)まで行われる即興王者決定戦。激しく熱く盛り上がるバトルライブパフォーマンス!!

●著書「自由になるのは大変なのだ」
  インプロ・マニュアル〜即興演技のすべて〜
   著者:今井純  出版:論創社  2100円(税込み)

数多くのハリウッド・スターを生み出し、一流企業や教育現場が採用する自己表現やコミュニケーションのための人材育成トレーニング法を、日本でのインプロの第一人者である今井純が初心者にも理解しやすく具体的に解説しています。

●プロ対象 インプロワークショップ

講師:今井純

即興であなたの殻を破る!“【即興力アップ】第1ステージ”

【即興力アップ】では、与えられた役柄やセリフを何度も練習し、自分のモノにしていくのとは、まったく異なるスキルを高めていきます。生き生きとしたコミュニケーション、瞬発力、発想力、予期せぬ出来事への対応力・・・。何よりも大きいのは、『何の準備がなくても、どんな状況でも、どんな相手とでも、適切な表現ができる』という自信を獲得すること。結果を恐れず、人の目を恐れず、自分を信頼し、大胆で自由な演技表現を楽しむマインドを養います。感情表現、キャラクター表現、相手役との絶妙な絡み、発想・・・。自分のガードをはずし、まだまだ閉ざされている能力や魅力を発揮することは、表現者としての最重要課題。海外では『即興は人を有機的に変化させる』と言われています。

自分の能力や魅力を最大限に発揮するため、メンタル面からチューン・アップしていきます。即興芝居によって、今までしがみついていた自分を手放し、自由で生き生きとした演技者となる方がたくさんいらっしゃいます。表現者としてのスキル・アップ、キャリア・アップを真剣に考えている方、一度、即興にチャレンジしてみませんか?
一緒に、さらにステップ・アップしていきましょう。
ご参加、心よりお持ちしています。


詳しくは、ホームページをご覧下さい。
 >>> http://www.tokyocomedy.com/japanese/index.html

(構成/文・O)2006/7/24