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表現することの楽しさと大切さ 〜劇団青い鳥〜

日本で活動している劇団は数限りなくあります。しかし、そのほとんどが一般に知られていないのが現状です。日本の演劇業界が、他のエンターテイメント業界、アート業界に比べ、マイナーであり続けているのには、必ず、明確な問題があるはず――――。

このコラムでは、現在活躍している劇団に取材し、劇団の現状やそれぞれが抱えている問題点、演劇全体が広く社会に認識されるにはどうしたらいいのかなどのテーマを共に考え、演劇の魅力をより多くの方々へ知っていただくための方法を考察してゆきます。

第47回目の今回は、「劇団青い鳥」です。

●劇団青い鳥

1974年、独自の創作劇を目指して役者(女性)6名で設立。以降、オリジナル作品を中心に、年1〜2本、東京、大阪、名古屋、札幌、福岡等で上演。

1975年「美しい雲のある幕の前」で旗揚げ公演して以降、1993年「最終版 ゆでたまご」までの創作方法は、特定の作家、演出家をおかず、役者全員が参加しながら創る独特のスタイルで、これは「青い鳥方式」とも呼ばれ、多くの注目を集める。

1993年の「最終版 ゆでたまご」以降の作品は劇団全体での集団創作という形に限らず、公演ごとに創作スタイルを変えながら、個人で脚本、演出をてがけることが多くなった。

女性である自分たち自身の中にあることを作品のテーマに取り入れたことから多くの女性たちの共感を得る。日常の誰しもが耳にする会話から宇宙的な空間の広がりが舞台上で繰り広げられるダイナミズムが、青い鳥の世界である。

●芹川藍(せりかわ・あい)さんにお話を伺いました

旗揚げして32年。全てに正直にやりたいことをやる、というポリシーの元、大きなメンバーの入れ替えもなく第一線で活動を続ける「劇団青い鳥」。1992年からはアクティブセラピー「自己発見表現講座」に始まり、今年10月からはシニア向けの演劇ワークショップ「A・SO・BO塾」のスタートなど、多岐にわたる活動を行っています。

今回は、「A・SO・BO塾」の講師で、創立メンバーの芹川藍さんに、劇団の活動と今後の展望についてお伺いしました。

Q・ 1970年代当時、女性だけで、しかも脚本家や演出家をおかない劇団は非常に珍しかったと思うのですが、発足のきっかけは何ですか?


特に、女性だけで劇団を作ろうとしたわけではないんです。今でもポリシーは変わらないのですが、「正直でありたい。自由でありたい。やりたいことをやりたい」ということで集まりました。当時は男性も数人いたんですよ。でも、女性の創った作品に出演することや、女性に演出されることに抵抗のある人が多い時代だったので、自然と男性がいなくなり、女性だけで活動するようになったんです。

しかも、集まったのが皆役者だったので、じゃ、それぞれでやりたいことを持ち寄って、皆で協力して創って行こうということになったんです。それが、「青い鳥方式」と言われるものになりました。

それが、20年近く続けていると、徐々に各人の才能の適性が見えてきて、個人での作業ができるようになってゆきました。作品の完成度も高くなるにつれ、個人が専任してやる方が良くなってきたのもあって、集団創作ではなく個人が脚本や演出を手がけるようになってたんです。

Q・ 芹川さんは、早い段階から演劇ワークショップを行っていらっしゃいますが、スタートのきっかけは何ですか?


20年ほど前だったんですが、道行く人を見ていて「皆、何故こんなに演じているんだろう?」「皆、何のお芝居をしているんだろう?」って思ったことがあったんです。

デパートのエレベーターガールに、井戸端会議をしている奥さん達、営業に回っているサラリーマン。皆、型にはまったような笑顔でニコニコしてるけど、心と表現が一致していないなぁ、何故“自分らしく”じゃいけないのかなぁ、ってすごく疑問に思ったんですね。

日本には文化の土壌が本当はしっかりとあって、いたるところでお祭りがあったり、歌や絵やお芝居、その他の芸術もたくさんあったんです。色にも、本当に素敵なたくさんの名前があって、“緑”一つとっても何十種類もの名前があるでしょ。これほど情緒豊かな国は日本だけなんですよ。

でも、戦後に幸せの価値観が変わってしまって、文化・芸術といった、なくても生きてゆけるようなものに目を向けなくなってしまったんですよね。どんどんと便利なものに価値が移ってしまって、全てが簡略化されてゆきました。その中で、コミュニケーションも便利な道具を使って簡素化されてしまって、“表現のない”コミュニケーションになってしまっているんだと思うんです。

コミュニケーションって、言葉は実はたったの7パーセントで、残りは表情や動作、空気といった“表現”なんです。でも、今はたったの7パーセントだけで十分、という風潮があるんじゃないでしょうか。

これでは本当のコミュニケーションはとれなし、心には何も届かないですよ。おかげで、心がどんどんと乾いてしまって、伝えたいことが伝わらないという空気が蔓延しているように思うんです。そして、その空気が人間をおかしくしていってしまうんじゃないかと思うんです。

伝えたいことが伝わらない、伝えたいことを表現できない。そんな負の気持ちをずっと抱えて溜め込んでいては、何かのきっかけで爆発してしまいます。そして、人を殺したり、家を燃やしたり、自殺したり…。

私自身、精神的にすごく辛い時期があったんです。とても生き難く感じていました。ただ、当時は心の問題に対して日本はまだ未発達で、精神科といえば「カッコーの巣の上で」の世界というイメージしかない時代だったんです。どうしようかと悩んでいた時に、カウンセラー養成所を知り、2年間通って資格を取得しました。

そういう経緯もあって、「自己発見表現講座」に始まり、全国各地でワークショップを開催して、「演技しなくていいよ。自分らしくていいよ。表現を楽しもうよ」というメッセージを伝えてゆくようになったんです。

Q・ 今回、「A・SO・BO塾」で対象をシニアにしぼったのは何故ですか?


これは、5年前に新潟で始めました。シニア世代って、戦後の復興、高度経済成長、バブル経済などを支えてきた世代で、本当に仕事仕事の人生を送っていらっしゃったと思うんです。女性は弱者とみなされていたような時代では、なかなか思うように表現できないでいたりもしたと思うんですね。

世間一般的にも、シニア世代って言うと想像力や発想力がもうないんじゃないか、なんて思われがちだし、ご本人たちも諦めてしまっている部分が多いと思うんです。

でもね、一歩踏み出してみると全然違って、すごく豊かでやわらかい心を持っているんです。そして、表現していいんだ、表現って楽しいんだってことが分かると、本当にきらきらして若い人には思いつかないような素敵な表現が次々と出てくるんですよ。

料理をする、農作業をする、そういう事だって一つの表現なんです。ただ日常をやり過ごすのではなく、全てが自分の表現として楽しむことができれば、やっていることは同じでも、そこに楽しさや輝きを見出すことができるんですよ。

いつも言うんですけど、「大人って言うのは悟った人のことじゃない、身体の大きな人なんだ」って。無邪気でいいし、自分らしくていいんです。

だから、諦めずにこれから死ぬまでの人生を少しでもキラキラ、イキイキと過ごして欲しいと思うんです。そして、大人が元気で輝いていれば、子どもたちもその姿を見て「自分もそうなりたい!」と頑張れたり、表現できたりすると思うんです。きっと、明るい空気の循環ができるんじゃないかしら。

Q・ 今後の展望を教えてください。


森や林を伐採してしまったら、元に戻るのに何百年、何千年とかかるでしょ。文化や芸術の土壌を一度捨ててしまった日本に、再び文化を蘇えらせるのには、相当な時間がかかるだろうと思うんです。

でも最近ね、演劇業界、芸術分野に限らず各ジャンルに10パーセントは、戦後から無駄だと切り捨てられてきたものがいかに大切だったか、心やコミュニケーションがどれほど大切なものなのかっていうことに気づいている人がいるんだって、分かってきたんです。だから、私たちのような地道な活動も、何十年後かには大きく育っているんじゃないかと希望を持っています。

なので、いままでやってきたように、私たちなりの活動を続けてゆければいいな、と思います。そして、人間の持つ最も美しい、良い状態の気持ちになれる作品を、ありとあらゆる方法でやってゆきたいと思っています。


「表現が大切!」という芹川さん。お会いした瞬間から、その表現力の豊かさに吸い込まれてゆきました。ただ「言葉を伝える」のではなく、言葉の奥底にある想いが全身に伝わってくるのです。

芹川さんがおっしゃるように、一度刈り取ってしまった文化を蘇えらせることは、一朝一夕にできるものではありません。でも、こうして表現し続けることができる限り、未来は本当に明るいと感じました。

劇団ホームページ>>>http://www.aoitori.org/
(構成/文・O)2006/9/25