真のプロフェッショナルを育てたい〜演劇倶楽部『座』
このコラムでは、第一線で活躍する劇団に直接取材し、劇団の現状やそれぞれが抱えている問題点、演劇業界の活性化などのテーマを共に考え、演劇の魅力をより多くの方々へ知っていただくための方法を考察してゆきます。
第55回目の今回は、「演劇倶楽部『座』」です。
●劇団 演劇倶楽部『座』
「日本の俳優たちよ、日本を学ぼう!」を合言葉に、主宰・壤晴彦により、1992年に創立された全く新しいタイプの劇団。
付属研究所では、“真のプロフェッショナル”を目指す俳優育成カリキュラムの他、自国の伝統を体現するための養成期間をもうけて、日本語を正しく語ること(歌舞伎・落語・浄瑠璃)や、日本伝統の身体表現(日本舞踊・狂言)などのスキルを育成。1998年からは、『詠み芝居』という独自のスタイルの公演活動を続けている。
日本の言葉が乱れ、人々の心までもがひからびつつある現代、みずみずしく豊かな日本語の響きによって、日本の心象風景を鮮やかに描く詠み芝居は、大きな感動を広げている。
●演劇倶楽部『座』主宰であり、『座』の活動はもちろん、蜷川幸雄演出作品をはじめとする様々な公演に参加し、演技指導者としても評価が高い壤晴彦さんにお話を伺いました。
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以前は、海外公演に参加することが多く、ヨーロッパの演劇人と接する機会が多かったんです。
そのときに彼らと話していて、彼らが日本の演劇に非常に敬意を持っているのを感じたんですね。
彼らは、「日本は演劇の宝島だ」というんです。
「ヨーロッパはオペラ、バレエという舞台手法を編み出したところでとまっている。日本には能や歌舞伎、文楽といった、まったく独自の演劇手法があるのに、どうして日本で勉強せず、わざわざこちらにやってくるのか?」と。
向こう(海外)がオペラやバレエでとまっているというのなら、日本は歌舞伎でとまっているのではないかという感じもするのだけど、でも、志をもった若者が自国の文化を省みず、外に勉強しに出ていることは確かだと痛感しましたね。
そんな中で、1992年に演劇倶楽部『座』の前身となる演劇研究室『座』を立ち上げました。これは「劇団」というより、「勉強会を行う集団」ですね。
そこで、7年間、無料で日本語や日本の伝統文化についてを学びました。7年目にパフォーマンスの依頼を受け、「雨月物語」を上演したんです。
ただし、集団維持のためには、無料というわけにも行かず、有料化しました。その時に改名して生まれたのが、演劇倶楽部『座』です。
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| Q・ |
日本の伝統文化や日本語を学ぶことの大切さとは? |
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伝統文化や芸能を勉強しているのは、伝統芸能を行うためで
はなく、あくまでモダニズム追求のためです。
「真のモダニズムは伝統の中からしか生まれない」という言
葉がありますが、そのとおりだと思っています。
また、日本の俳優は言語レベルが低すぎる。テレビドラマの
台本が、小学校3年生レベルの言語で作られている現状が
あります。人気があれば、技術がなくても仕事がくる仕組
みになってしまっています。
しかし私は、演劇人というのは「言語の番人」だと思ってい
るんです。
だから言語についても基礎から訓練させるようにしています。
『座』では毎年研究生を入れて、日本舞踊、狂言、能、
歌舞伎などの訓練をしていまして、劇団員ももちろん参加
しています。
最初は誰もが戸惑うようですが、回を重ねるごとに、顔つき
が変わってゆくんですよ。古くから存在している深い文化に、
マッチした顔つきになってくる。そうなると、こういう訓練
の必要性をますます感じますね。
今の若い人は「温故知新」の精神が欠けているかもしれません。
だから『座』では、訓練のほかにも、様々な文化に接してくる
ように指導しています。伝統文化の完成された高度な手法を見
て、「びっくりすること」が一番の修行になると考ているからです。
驚愕し、敬意に似た「畏れ」を感じること……。それが、
修行の第一歩なんじゃないでしょうか。 |
| Q・ |
独自に生み出された「詠み芝居」とは、どのような表現? |
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小説などの物語を舞台の芝居として表現するのですが、
朗読芝居とは違います。普通のストレートプレイのよう
に役者が演じるのですが、セリフ以外の原文を語る俳優も
舞台にのります。
つまり、小説の地文を語る人間も舞台上にいる形です。
以前、朗読劇のリサイタルに出演したとき、地文の持つ
エネルギーを強く感じたんです。地文は作家のエネルギー
が一番出るところだと思うんですよ。でもそういう小説を
いざ戯曲化するとそのエネルギーがなくなってしまう。
だから、パワーを持つ地文を生かせて、しかも、朗読劇で
はない芝居をやりたいと考えました。それが「詠み芝居」です。
この形式は新しいといわれていますが、実は浄瑠璃と同じ
なんですね。浄瑠璃は義太夫さんが地文を伝えるわけですから。
「詠み芝居」では、このような形で、小説を戯曲化する
ことなく舞台上に乗せています。
やっぱり偉大な作家の優れた日本語は、原型のまま残すべき
なんですよ。作品の持つパワーをそのまま伝えられるので、
地文に存在する作家のエネルギーでお客様の心を動かせるんです。
地文でお客様が涙を流してくれる。これは「詠み芝居」
独特のものです。
はじめ、この「詠み芝居」は、ある程度年齢のいった
お客様にしか受けないだろうなと思っていたのですが、
ふたを開けてみればまったくそんなこともなく、幅広い
年齢のお客様にご好評をいただきました。特に、若い世代の
お客様に、作品を共感してもらえたことがうれしかったですね。
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座』についていうと、まず質の向上をはかっていきたいです。
特に作品の質です。
質を上げるためには、これはもう訓練をするにつきますね。
今、俳優を目指す多くの方は、華やかさだとか面白さばかり
にとらわれがちですが、実際は違いますよね。しんどい
ところをしっかり頑張らなくてはいけません。
最後に花を咲かせるために、土を耕し、種をまき、水をやり…。
そういう地道なことを、しっかりやっていきたいです。
そうやって訓練していって、技術者集団になりたいですね。
ゆくゆくは、少人数で作った中身の濃い作品を、パッケージ
として展開したい。少数精鋭で質の高い作品を、いいものが
わかるお客様のところへ、身軽に持って行きたいと思っています。
また、劇団としての公演数を増やしていきたいです。
現在は年に2回、公演を行っていますが、俳優は舞台に
乗ってこそだと思っていますので、毎日訓練をしている
俳優の仕事場を増やしていきたい。
技術があり、「食べられる」環境を作れば、おのずと人も
集まります。そうして劇団を大きくしていきたいと考えています。
劇団に限らず、日本の若い演劇人に関して言えば、自分を
向上させることにもっと貪欲になってほしいです。
ほうっておくと技術というものは落ちていくものなので、
安住しないでほしいですね。
現在の演劇、放送の業界では「キャスティングされる→
役をこなせない」の繰り返しになっていますよね。
特に、制作サイドが俳優の人気に頼ろうとするケースだと、
これがとても顕著です。この悪循環を断ち切っていきたい
ですし、そうしなければいけないと思っています。
******************** 過密スケジュールを縫ってインタビューに応じてくださった壤さん。
『座』の主宰として、研究生やワークショップ参加者に温故知新の精神を教えながら、誰よりも自分自身が日本文化の歴史に対して真摯に向き合おうとしている姿勢がとても印象的でした。
ちなみに、『座』のワークショップは毎年募集が殺到して、すぐに定員オーバーになってしまうのだとか。中には、「来年こそは!」と参加枠を待っている方もいらっしゃるそうです。
きっと、壤さんの文化・芸術に対する誠実な考え方や生き方が、様々な分野の方の心を揺さぶるのでしょう。
6月末から始まる公演も楽しみです。
(取材・構成 A)
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★演劇倶楽部『座』新作詠み芝居「鳥の物語」
2007年6月30日(土)〜7月8日(日)ベニサン・ピット
日時指定・全席自由 前売当日共6,000円
チケット好評発売中
※7/2(月)は「鳥の物語」タイアップ特別企画公演!!
壤晴彦・秘本朗読シリーズ 第一弾「袖と袖」
3,000円(ワンドリンク付・200名限定)
★お問い合わせ、ご購入は演劇倶楽部『座』HPをご覧ください
http://za01.com/
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