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稽古場費っておいくら?

世界のトップスターが出演して、ものすごいCGが使われている映画だって、1800円で簡単に観れちゃう。けれども演劇は、無名の劇団の公演でも2000円以上、有名人が出てるだけで1万円を超える料金だってあるんです。んー、こりゃ、高い!

……でも。一度きりのお芝居は、その瞬間のためだけに、いろんな人が動いて、いろんなところにお金がかかっていたりするんです。そんな演劇のお値段の構造をいろんな切り口から“解剖”するのがこのコーナー!今日のテーマは、「稽古場費」です。


●高い?安い?「稽古場費」のお値段

大きな劇団で、自分たちの稽古場を持っている劇団は多いのですが、日本のほとんどの劇団が、自前の稽古場を持っていません。なので、公演が近づいてくると、まず初めに頭を悩ませるのが稽古場の確保です。

新しい作品を発表する場合、多くの劇団が約2ヶ月を稽古に費やします。その期間、落ち着いて稽古に打ち込める場所を、ずっと確保しつづけなければなりません。これは、とても重大な仕事です。

稽古場を確保する時、まず考えなければいけないのが広さとその条件です。どれくらいの広さの稽古場を必要とするかは、公演の内容によって変わってきます。

例えば、少人数のストレートプレイの場合には、多少狭くても、役者が十分に動けるスペースがあれば大丈夫でしょう。しかし、ダンスが必要なミュージカルなどは、鏡や音響設備が必要になってくるでしょうし、殺陣やアクションがある場合は、広さの他に天井の高さも重要になってきます。大人数のアンサンブルが必要なお芝居の場合には、全員が動ける巨大なスペースを確保する必要があります。

これらの、公演の内容や形態にあった稽古場をピックアップし、確保するわけです。では、実際にどういった稽古場があるのでしょうか。

稽古場のお値段も、これまたさまざまです。民間で運営している貸スタジオと演劇団体の利用を許可している公共の施設との値段のバラつきは、かなり大きいのではないでしょうか。

一番リーズナブルなのは、やはり公共の集会所や会議室を、演劇団体に開放しているところです。勿論、それぞれの市区町村ごとに値段設定は変わりますが、ほとんどの施設が、「午前」「午後」「夜間」の3つの使用区間ごとに値段を設定していて、各区間1000円前後のところが多く、中には無料開放をしているところもあります。

しかし、劇団員全員がその施設を管理している市区町村に在住、在勤、在学していなければならなかったり、劇団への貸し出しを禁止している施設もあります。また、長期間連続で使うことができないので、大掛かりな舞台装置を立てたりすることは不可能。毎日、場所を転々としなければならないというわずらわしさもあります。

一方、民間の施設には、自前の稽古場を持つ劇団が、自分たちの稽古がない日に貸し出すというところと、貸スタジオ専門のところがあります。

劇団が貸し出しているスタジオのお値段は、平日、夜間を問わず、一律で1時間あたり1500〜3000円というところが多いようです。普段、持ち主の劇団が稽古に使用している空間なだけに、大道具を作るスペースがあったり、音響がそろっていたり、管理人さんの理解があったりと、使い勝手がかなり良いようです。

しかし、持ち主の劇団が公演前の稽古に入ると、当然スケジュールは持ち主側が優先的に入れてゆくことになるので、日程がかぶってしまうと丸々使えなくなる、というデメリットもあります。

その点、専門の貸スタジオは、空いてさえいれば誰でも気軽に利用でき、設備も充実しているので使いやすいでしょう。しかし、値段はかなりお高くなります。午前、午後、夜間、深夜、と値段設定が変わっている場合が多く、1時間あたり4000〜12000円あたりが相場のようです。もし1日中借りたり、長期間で使用する場合の割引制度などもあります。

ではここで、架空劇団「タイムズ」が、2ヶ月間(8週間)、週5回、1日8時間稽古をした場合の、稽古場のお値段を計算してみましょう。稽古日数は、8週間×5日(週5回)=40日間で計算します。

公共施設の場合
 1,000円×午後・夜間の2区間(13:00〜21:00)=2,000円/1日
 2,000円×40日間=80,000円
  Total : 80,000円

劇団のスタジオの場合
 平均利用料金を、1時間2,000円として計算
 8時間×2000円=16,000円/1日
 16,000円×40日間=640,000円
  Total : 640,000円

専門貸スタジオの場合
 平均利用料金を、1時間8,000円として計算
 8時間×8,000円=64,000円(1日)
 64,000円×40日間=2,560,000円

※ちなみに、民間施設の多くは長期・定期割引があります。


施設によって、かなりのバラつきがありますが、それでも意外と大きなお金が動いていることがわかりますよね。

劇団の制作スタッフは、何とか経費を抑えつつも、芝居つくりに悪影響を与えないように、必死になって稽古場を探します。最初の1ヶ月は集会所などを使って、本番前の本格的な稽古になってきた時に、専門スタジオを借りて、本番同様の稽古を行えるようにする、などなど、いろいろな工夫をして節約を図ります。

それでも、上記のような金額は、ほぼ確実に動くわけです。

では、劇団「タイムズ」が公演に向けての稽古で、他劇団のスタジオを借りたとして、前回(10/13号)の劇場費99万7500円にこの金額を加算してみると……。

 劇場費   99万7500円(木〜日曜の4日間、6ステージ、定員257人)
 稽古場費  64万円
 ――――――――――――――
      163万7500円

この劇場費をチケット収入でまかなおうとした時、6ステージ全て満席で、
163万7500円÷(257人×6ステ)≒
チケット1枚につき、およそ1,061円の収入が必要になってくるのです。
 
どうです?まだまだ安いと思われますか?でも、これはほんの入り口。稽古が始まり、本番に向けてのエンジンがかかってくると、もっともっと出費も増えてゆくのです。しかし、それは次回のお話…。どうぞお楽しみに!

(文・M)2003/11/10