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美術費っておいくら? 前編

世界のトップスターが出演して、たくさんのCGが使われている豪華な映画だって、1800円で観られちゃう。けれども演劇は、無名の劇団の公演でも2000円以上、有名人が出てるだけで1万円を超える料金だってあるんです。んー、こりゃ、高い!

……でも。一度きりのお芝居は、その瞬間のためだけに、いろんな人が動いて、いろんなところにお金がかかっていたりするんです。そんな演劇のお値段の構造をさまざまな切り口から“解剖”するのがこのコーナー。

今日のテーマは、「美術費」です。


●高い?安い?「美術費」のお値段

劇場、稽古場を確保し、いよいよ稽古が始まります。稽古も立ち稽古の段階になると演出方法や照明、音響プランが出来上がってきます。もちろん、舞台美術のプランも……。

舞台美術には2つあり、1つは舞台全体を彩る「大道具」と、役者が移動させることができる「小道具」とに分けられます。この境界線はややあいまいながら、それぞれ独自の知識と技術を必要とするもので、お互いを尊重しあいながら1つの舞台を作り上げてゆきます。

今回は、劇場空間を時にはワンルームの部屋に変えてしまったり、はたまた会社の風景や、ファンタジックな空間に変えてしまう「大道具」について考えてみましょう。

大道具をつくる時にまず考えなけるのは、この芝居にどのような物が必要か?ということ。これは、作品の設定、劇場の広さによっても変わってきます。

例えば、大きな劇場で上演する時代劇の場合、お茶屋のセットや宿屋のセットなど大掛かりなものが必要になります。幻想的な芝居であれば、そのイメージを助長させるような背景をプランニングします。また、立ち回りなどのアクションがある場合は、安全性にも配慮しなければなりません。

イギリスでロングランをしていた「レ・ミゼラブル」などでは、大きな回転舞台が組まれていました。これは、俳優の動きをサポートしながらも、舞台背景をスピーディに転換させるための素晴らしいアイデアです。

巨大なセットを組むにしても、小さな部屋を再現するにしても、そこに盛り込まれるアイデアには限りがありません。

ところで大道具を作るにはどのくらいのお金がかかるのでしょうか?
劇場の大きさや演出によってもまちまちなので一概にはくくれませんが、大道具に使われる主な材料から考察してみましょう。

大道具をつくるとき、もっとも頻繁に使われているのが、ベニヤ板、タル木、ヌキ板、角材、小割といわれる木材の数々です。これらは、大きさや長さによって料金も変わってきます。

基本的に安全性を考え、人が乗っても壊れないぐらい頑丈なものをつくる場合、3×6尺(1尺は30.3センチ)、厚さ1.5センチのベニヤ板が必要です。コンパネと呼ばれるこの板の値段は、1枚3000円くらいと考えておけばいいでしょう。

4.5×3.6センチ角、長さ4メートルのタル木を使うならば1本500〜600円、9×1.3センチ、長さ365センチのヌキ板なら1枚400円〜、もっと頑丈にするなら、10.5×10.5センチの角材が必要になります。この値段は、4メートルで一本3500円〜です。

もちろん、木材が丸出しのままではちょっと問題があります。やっぱり色を塗らなければいけませんよね。それに、木材を組み立てるためのバインド線とよばれる針金、ビニールテープ、布製ガムテープ、両面テープ、釘なども必要です。壁を彩る際には、壁紙を使うこともあるでしょう。また、床に敷き詰めるパンチカーペットが必要になることもあります。

ちなみに、これらの単価の目安は以下の通りです。

水性ペイント 1.6リットル 2,800円〜(3×6尺の板 約2.5枚分が目安)
布製ガムテープ 600円〜
両面テープ 600円〜
ビニールテープ 100円〜
バインド線 1800円〜
パンチカーペット(ニードル社) 25m巻11000円〜

ただし、木材やそのほかの道具も、上手に使えば次の舞台にも使えますし、いろんな店を巡ってできるだけ安いものを探すという手もあります。

さらに、叩き売りで売られているような布(日暮里では50m巻の布が1000円というものも!)などを工夫すれば、素敵な舞台美術が出来上がりますよ。

次回は、これらの道具を使って、具体的な美術を作るためのプランを練ってみましょう。


※参考書
●「THE STAFF 舞台監督の仕事」 晩成書房 伊藤弘成著
●お芝居用グッズ専門通販「がちぶくろ」
 http://www.watanabe-ind.co.jp/homepage/osaka/stage/


(文・M)2003/12/8