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<最終回>人件費・雑費っておいくら?

世界のトップスターが出演して、たくさんのCGが使われている豪華な映画だって、1,800円で観られちゃう。けれども演劇は、無名の劇団の公演でも2,000円以上、有名人が出てるだけで1万円を超える料金だってあるんです。んー、こりゃ、高い!

……でも。一度きりのお芝居は、その瞬間のためだけに、いろんな人が動いて、いろんなところにお金がかかっていたりするんです。そんな演劇のお値段の構造をさまざまな切り口から“解剖”するのがこのコーナー。
最終回の今回は、「人件費・雑費」がテーマです。


●高い?安い?「人件費・雑費」のお値段

稽古もいよいよ架橋を迎えると、俳優やスタッフなど、舞台に関わる全ての人々の動きも慌ただしくなります。

舞台公演には、いったいどれくらいの人々がかかわっているのでしょう?基本は、脚本家、演出家、俳優、制作を中心とした劇団員。そして、照明、音響、舞台監督などの専門スタッフ。また、公演当日に受付などを手伝うお手伝いスタッフなど…。劇団の規模によってもさまざまですが、小劇場で上演される舞台でも、最低10名程度の人数が関わり、中には、30名〜50名という劇団もざらにあります。

企業の場合、社員が30名もいれば十分立派な組織です。中小企業の中でも、どちらかといえば多い人数です。こうなると、人件費に頭を抱える社長の顔が浮かびそうですが、舞台公演の場合の人件費はどうなっているのでしょうか?

舞台公演の場合、稽古は多いところで2ヵ月半、少なくても1ヵ月ぐらい行なわれます。
その間、演出家と役者はほぼ毎日稽古を行い、制作者は広告宣伝や公演準備、美術担当者は小道具・大道具の作成、照明・音響スタッフは、度重なる打ち合わせやプランニング、音集めなど、誰もが忙しい日々を過ごしていきます。

本来、これだけの期間、大人数が働いて入れば、相当な人件費が発生します。けれども、公演の主な収入源はチケット売り上げです。つまり、チケットが売れて黒字にならなければ人件費は出ません。

劇団によっては、国からの助成金やスポンサーからの資金援助を獲たり、全国の公共ホールで公演を行うことで収入を得て、劇団員に人件費を払っているところもありますが、これはごくわずかなケースなのです。

しかし、自分たちの思いを伝えたい、作品を見て欲しいと活動を続けている劇団員たちは、無償でもいいと頑張りますが、外部スタッフの場合はそうは行きません。舞台監督や美術・衣装スタッフや俳優が兼任していたりする場合も多くありますが、一方、照明・音響などの専門技術スタッフには相応のギャンティをお支払いしなくてはならないのです。

その費用は、拘束日数+プランニング+オペレーションを算出して支払います。また、仕込みに人手が必要な場合には、その分だけ追加料金が発生することも珍しくありません。

●照明
拘束日数(仕込み日〜楽日)1日あたりのギャランティは最低30,000円

●音響
拘束日数(仕込み日〜楽日)1日あたりのギャランティは最低20,000円

これを高いという方もいるかもしれませんが、それは、大間違い。この最低ラインの中には、打ち合わせ・稽古見学の拘束費、また、これに伴い公演期間中も含めた交通費、機材や備品代、プランニングとオペレーションをすべて含めたもので、決して高いとは言えないのです。

ちなみに日本照明家協会が定める仕込みの人件費は、実は1日1人あたり1万5000円。しかし、これは少し高いと思われるので、仕込みに人員を増やす場合、最低でも5,000円〜10,000円を支払うのが相場でしょう。

では、最低ラインをもとに仕込み日と木曜〜日曜までの5日間公演の照明・音響のギャランティを計算してみると―――

●照明
拘束日数5日間(仕込み日+公演日):1日30,000円×5日間=150,000円

●音響
拘束日数5日間(仕込み日+公演日):1日20,000円×5日間=100,000円

となるのです。

ここで忘れてはいけないのが、スタッフのお弁当代!
照明・音響の外部スタッフには、ギリギリ最低ラインの金額で受けていただくことが多く、また、受付のお手伝いスタッフはボランティアですので、せめてもの気持ちとしてお弁当を用意します。

お弁当代の相場としては、一食500円。朝から取り掛かる仕込み日は、昼、夜の2食分用意し、公演日に関しては、ステージ数のお弁当が必要になります。つまり、照明、音響に関しては、仕込み日2食分+6ステージ分の計8食×2名と言う計算になります。

お手伝いさんの場合、基本的に、受付に2人、もぎり又は、パンフレットの配布係りに1名と会場整理に2名の5名いれば十分ですので、6ステージ分の6食×5名という計算になるわけです。

それでは、このお弁当代を計算してみると―――

●お弁当代
外部スタッフ(照明・音響):  8食分×2名×500円=8,000円
       お手伝いさん:  6食分×5名×500円=15,000円

これらをまとめてみると―――

照明・音響人件費 250,000円
お弁当の雑費 23,000円

合計 273,000円

では、これらの費用を、今までにかかった費用に合計してみると…

劇場費 1,047,375円 (木〜日曜の4日間、6ステージ、定員257人)
稽古場費 672,000円
大道具費 103,163円
小道具費 30,135円
衣装費 22,491円
広告宣伝費 451,782円
広告宣伝費2 121,640円
人件費・雑費 273,000円

2,721,586円

この合計金額をチケット収入でまかなうには、6ステージ完売したとしても……
    2,721,586円÷(257人×6)=約1,765円
チケット1枚につき、およそ1,765円の収入が必要になってくるのです。

6ステージ完売したとしても、このお値段。しかも、1ヶ月〜2ヶ月間制作に携わった劇団員には交通費すら出ていない状態です。それでも懸命に演劇に携わるには理由があります。

もっと、人の心に潤いを与えたい、観てくれるお客様に少しでも楽しんでもらいたい。そして、演劇という文化芸術の素晴らしさ、楽しさを少しでも多くの人にしってもらいたい。

そんな思いで、日々汗を流しています。そして、高いと言われないように、値段に見合った完成度を目指し続けているのです。


※参考
●舞台照明ブログ http://lighting.seesaa.net/
●日本照明家協会 http://www.ldeaj.or.jp/
●制作ノート http://www.interq.or.jp/sun/gif/


(文・M)2004/6/14