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〜全国の演劇ワークショップ体験リポート〜
 



クリエイターと参加者が出会い、そして混ざり合う……

ポツドールワークショップ]
 「“恥”のわかる役者になろう!」

2003年4月22日(金) 池袋コミュニティカレッジ




多くの通勤客でごった返す東京・池袋。ひときわ賑やかな駅ビルの8階にのぼってゆくと、そこには「池袋コミュニティカレッジ」というカルチャーセンターがあります。今回は、気鋭の劇団「ポツドール」がこの場所で開催しているワークショップにお邪魔しました。




1996年に結成された「ポツドール」は、“リアルな演劇”を探求する集団として、今、その動向が最も注目されている若手劇団の一つ。フィクション的な要素を最大限までそぎ落としたドキュメンタリータッチの作品は、人間を丸ごとそのまま舞台にのっけてしまったようなリアルさで多くのコアな演劇ファンを獲得しています。

そんな「ポツドール」の舞台を作り上げるまでのプロセスを体験し、実際に作品を創ってしまおうというのが、今回のワークショップのテーマです。ちなみにこの日は全6回の2回目。レッスンスタジオでは、10数名の参加者の皆さんが緊張の面持ちで、ワークショップが始まるのをじっと待っていました。

午後7時、「ポツドール」の主宰であり、作・演出を手がける三浦大輔さんがやってきて、いよいよワークショップがスタート。

このワークショップは講義や授業ではなく、お互いで生み出しクリエイトする場所にしたいと、マイクを片手にとつとつと話しはじめる三浦さん。“先生”や“講師”というオーラを消すことが、参加者と一緒に創るという雰囲気作りのようにも見えてきます。

今回のワークショップでは、クリエイターと参加者が出会い、作品づくりを通して互いが近づいてゆくまでのプロセスでもあります。両者のスタンスが、これから紆余曲折を経ながら互いの距離を徐々に狭めてゆくのです。


ポツドールの作品の紹介や実演など、オリエンテーション的な意味合いの強かった前回に続き、この日もまずは、自分たちの稽古風景を収めたVTRを観るところから始まります。その後で、三浦さんが今回のワークショップについて次のように話し出しました。

「僕たちはこれまで、自分たちの恥ずかしい部分をさらけ出して作品をつくってきました。恥ずかしさをさらけ出すことは、人間のありのままの姿を描き出す上で、とても大事なことなんです。だから、今回のワークショップは皆さんにも“恥ずかしい体験”というのを是非とも味わっていただきたい」

今回のワークショプの題名にも「“恥”のわかる役者になろう!」と銘打たれているように、これが最大のテーマになっているようです。しかし、恥ずかしい体験とは一体どんなものなんでしょう?それはなによりも自分自身で体験してもらうのが一番と、早速実践へ。

「皆さんに、これから僕が言う設定をそれぞれ行ってもらいます。でも、その設定の中であくまで普段の自分でいてください。別に面白いことをする必要はないので、見ているこちらを意識せずに、向かい合った相手と真摯にコミュニケートすることだけに集中してみて」

と、参加者を数名ずつピックアップして、設定を説明し始めます。その設定というのが、かなりのユニーク。


例えば……
演劇好きの2人には 「演劇論を熱く語り合ってください」
他にも、女性4人のグループには 「下ネタの話をしてください」
親友同士の2人に 「お互いを認め合うような会話をしてください」
男性4人のグループに 「全員で喧嘩してください」


どれもこれも日常で確かに起こりうるものの、人前ではあまり行うことのないような設定ばかり。これを取りつくろわず、無理に演じようとせず、日常と同じようにやってみるというのですから……。参加者の皆さんも、やっぱり照れくさそうな表情を浮かべています。


「……………下ネタ、……言います?」
「…………………………兄弟とか……」


恥ずかしそうにボソボソとしゃべり出す人もいれば、そのまま黙りこくってしまう人も。無理に盛り上がってしまうグループもあれば、逆にうまくいかずにイライラしてしまうグループなども。しかし、そんな悪戦苦闘の姿からは、その人それぞれの個性が垣間見えるようで、見ている周囲からは笑い声がちらほら。

演技をせずに、ありのままでいること――――、
それは、とても面白いことなのです。

三浦さんはそんな参加者の皆さんを、微笑みながら見つめて、時折、大きくうなずきながらメモをとります。
実は三浦さんは、このワークショップを通じて、参加者の個性を生かして、オリジナルの脚本を作ろうと考えているのです。今日のこの作業も脚本執筆のための下準備。参加者の人柄をリサーチすることこそが、本当の目的だったのかもしれません。



設定のエチュードがひと通り終わると、三浦さんは最後に“役”と“自分”と2つのキーワードを黒板に書いて、ポツドール独特の演技方法について解説してくれました。

「上手い役者さんっていうのは、こうやって“役”ともうひとつ客観的な“自分”というのを持っているものなんです。でも、僕らはこの2つの距離を極端に狭めていって、もう“役”にそのまま“自分”が乗っかっちゃった状態にしたいんです」

ポツドールの舞台では、演技上のウソは極力排除されます。作品によっては、役者が自分のプライベートを全て背負った状態で舞台に上がることもあるくらい、どこまでもリアルな人間性にこだわっているのです。そんな、ポツドールメンバーの強い信念が生み出す独自のセオリーを、参加者全員が真剣な眼差しで聞き入ります。
参加者がクリエイターのこだわりを理解することで、両者の距離は確実に狭まり、ワークショップの密度がどんどんと高まってゆくのが、手に取るように伺えます。

午後8時30分、この日のワークショップが終了。次回からは、三浦さんが作成した脚本をもとに、本格的に稽古に入ってゆきます。


その後、参加者の皆さんとポツドールのメンバーは、打ち上げのために居酒屋へ。賑やかな店内では、全員が入り混じっての談笑が続きました。今日のワークショップが始まる前は、お互いの名前すら分からなかった参加者の皆さんもすっかり打ち解けた様子で、いろんな話題に盛り上がりました。

「これまでやってきた芝居の作り方とは違って新鮮」
「自分のありのままをさらすのって怖い。だから、これからどうなっていくのかちょっと怖いかも」

参加者の皆さんは、未知なる感覚への好奇心と不安の中でドキドキしている様子。でも、ドキドキしているのは三浦さんも同じようです。

「今回のワークショップは僕にとっても結構リスキーなものなんです。だって、脚本を書かなきゃいけないし、これからの展開次第では参加者から絶対不満も出てくるかもしれない(笑)。でも、そういう危うい事態ってのは、僕らにとってはいつものことだし、モノを作る上では避けては通れない。だから、今回はそんな“危うさ”もみんなに味わってもらいたいんですよ」

これから作られる脚本も、稽古のプロセスの中で、全員がどんどんと壊してくれても構わない―――。
そんな三浦さんが作り上げるワークショップ。回を重ねるごとに、さらに熱く、深く、面白くなってゆくのは間違いなさそうだ。
講師を務めたポツドールのメンバー。左から米村亮太郎さん、三浦大輔さん、安藤玉恵さん



2003/5/01

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