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〜全国の演劇ワークショップ体験リポート〜


「楽しく!ポップに!即興演技でスキルアップ!!」

ワークショップ
「拙者ムニエルと即興の世界

2003年7月22日(火) 池袋コミュニティ・カレッジにて


例えば、タレントのように視聴者を笑わせたり、映画俳優のように観客を素敵な世界に引き込んだり。人は誰しも「人を楽しませたい!喜ばせたい!」とエンターティナーへの憧れを持っています。
でも、それを実際にチャレンジしてみると難しい……!

今回は、そんな「楽しませる」演技を、ゲーム感覚で体験できる「拙者ムニエル」のワークショップにお邪魔してきました。

「拙者ムニエル」は、1994年に早大生を中心に結成された劇団。独特のポップで軽やかなステージで、若者層を中心に圧倒的な人気を誇り、2001年には下北沢・本多劇場に進出。「笑いのある演劇」を生み出す急先鋒として、今や、吉本興業をはじめ、各方面から注目を集める小劇場界のホープです。

今回のワークショップでは、拙者ムニエルの芝居作りの核ともなる「即興」による芝居づくりをベースに、“人を楽しませる役者”としてのスキルを磨いてゆこうというもの。


この日は全6回のワークショップの第4回目。会場となる池袋コミュニティ・カレッジの一室では、ワークショップのスタート前からすでに気心の知れた参加者の皆さんの笑い声が響いていました。


PM6:35

講師を務める拙者ムニエルの演出家・村上大樹さんが会場にやってきて、ワークショップがスタート。

この日は劇団のメンバー、伊藤修子さん、成田さほ子さんも加わると、まずは参加者全員で出席者の確認も兼ねて自己紹介へ。「ジル」「ナイスガイ」「ぐっち」など、ワークショップの初回で付けられたアダ名が飛び交うと、周りからは早くも笑い声がもれ始めます。


PM6:40 

自己紹介が終わると、村上さんは自分のカバンの中から、どこかで見たことのあるカラフルなサイコロを取り出しました。

「じゃあ、まずは“サイコロトーク”からいきましょうか!」

そうなんです。最初のエクササイズは、フジテレビの人気番組そのままに、サイコロに書かれたテーマについて語る“サイコロトーク”から。

番組同様、司会者役1人、ゲスト役3人を設定すると、あとは全員がスタジオの観客。このお客さんを、出演者の4人は何の打ち合わせもなく、即興のト−クで盛り上げて、楽しませなければなりません。

エクササイズが始まると、実際の番組のオープニング曲がラジカセから流れ、AD役の人の合図で、全員が割れんばかりの拍手を起こすなど、まるで番組まるごとを全員で演じているかのよう。そんな中、4人は「びっくりした話」「ワタシのまわりの変な人」など、サイコロが指定するテーマを、お互いで協力しながら楽しいトークに発展させてゆくのです。

とはいっても、無理やりウソの話しをでっち上げたり、つじつまの合わない会話でちぐはぐになってしまったりと、なかなか上手くいくものではありません。しかし、そこへ「もっと盛り上げて!」「客席をなめるな!」などといったプラカードが、AD役の参加者から容赦なく上げられてゆくのです。

「いやあ、実際は難しいでしょう。本当の番組では事前にどんな話をするかは打ち合わせしてあるわけだし、僕も実際やったら、そう上手くはできないですよ(笑)。でも、ああいう場でいかに周りと連携して、即興でしゃべるかっていうのは、意外と演技そのものにも通じるんです。だって演技って、役者同士の瞬間的な意思疎通、コミュニケーションが必要なわけですから」

なるほど。番組のパロディにして、しっかりと演じる上での土台も押さえた、なかなかユニークなウォーミングアップです。


PM7:15

さて導入としてのサイコロトークが終わると、いよいよ本題のエチュード(=即興演技)へ。参加者がそれぞれ2人組に分かれると、村上さんは1枚の紙を各組に配りました。


●卒業を目前にした高校生男子の初めての告白。相手は同じクラ
 スの女子校生。男は女に3年間の思いを告げる。
 戸惑う女。そして女は担任の教師との不倫関係を告白する。
 不倫をやめさせようとする男。悩む女。

●海岸に遊びに来た女2人。大声をあげて日頃のウサ晴らし。
 女は、もう一人の女が実は男であると気付いてしまう。
 詰め寄る女。男は、女への思いから女として振る舞っていたこと
 を告げる。 男の悲しい姿。あまりに意外な展開に混乱する女。


紙には村上さんが考えたいくつかの設定が書かれています。
これを各組で好きなものを1つ選び、打ち合わせなしの即興で演じてゆくのが次のエクササイズ。
さらに、演じはじめて2分30秒経つと、自動的メロドラマのようなBGMが流れてくるというルールがあり、即興ながら、いかにドラマチックに盛り上げられるかがポイントなのです。


「ヨーイ、ハイ」

各組のエチュードがスタート。
演じているうちに設定が変わってしまったり、自分の演技ばかりを押し付けて、相手とコミュニケーションが取れなくなってしまったり……。筋書きがあるとは言え、即興で作るのはなかなかに難しい作業のようです。それでも、2分30秒経つと自動的に感傷的な音楽が流れ出し、場内はとたんに笑いの渦に。

「普通の芝居でもエチュードでも、相手のやっていることをその場でいかに把握して、自分の意図をどれだけしっかりと相手に伝えられるか。そこが大事なんです」

村上さんは各組のエチュードが終わるたびに、「もっとこうした方が面白い」「こうやるともっとドラマチックになる」と具体的にわかりやすく指摘してゆきます。
PM8:17 

2人組のエチュードに続いて、今度は3人1組でのエチュードへ。今度は設定も各チームのフリーに。
しかし、ここでひとつだけルールがあります。それは“いいシーン”をつくるということ。

ちなみに、“いいシーン”とは、見ている人が「ああ〜、いいなあ」と心惹かれるものなら何でもOK。
とはいっても、それって一体どんなシチュエーションがあるんでしょう?各チームは内容を打ち合わせるべく、15分間の作戦タイムへと突入しました。


PM8:35

作戦タイムが終了、各チームごとの上演へ。
15分という短い時間では、細部までを打ち合わせることは不可能。そこで各チームとも大枠を決めたら、後は“出たとこ勝負”の即興演技。果たしてどんなものになるやら?各チームともドキドキです。


「路上で自らの主義主張を叫ぶ若者たちが、いがみ合いの果てに和解する」話から、「青年がお婆さんに恋の悩みを打ち明ける」話、さらには「突然、産気づいた女性を通りすがりの男が戸惑いながらも介抱する」話などなど。

各チームが実にバラエティに富んだ“いいシーン”を演じてゆくと、その唐突さと強引さ(?)に、村上さんも周りで見ている参加者も思わず爆笑。

「いくら段取りがあったとしても、それをただコトバで説明してしまうのでは、演技にはならない。その設定をいかに“演じる”ことで伝えるか。そこが役者さんの重要な仕事なんですよね」
と村上さん。

ついつい思考先行、アイデア先行になりがちな即興での芝居を、いかに生き生きとした“いい芝居”へと昇華させてゆくか。村上さんは各チームを見ながら、きめ細かくアドバイスを加えてゆきます。

「村上さんは、自分が全く気付いていなかった部分を、とてもわかりやすく指摘してくれるので、とても刺激的ですね」と、参加者の1人。

また、村上さんは、このワークショップについて、こう語ります。

「与えられた設定・ストーリーを、観ている人にいかに面白くみせられるか、伝えられるか。それが役者さんのお仕事だとすれば、即興での演技は、役者としての“瞬発力”を磨くのにちょうどいいんです。観客を楽しませるためのアイデアやテクニックや度胸、ここではそのための引き出しをたくさん発見してもらえればと思っているんです」


PM9:28

3時間に及んだワークショップがついに終了。

このワークショップでは、回を重ねて最終的に何かひとつの作品をつくってゆくのではなく、今後もこうしたエクササイズを重ね、ひたすら演技のトレーニングを進めてゆきます。まさに演じるための“道場”のよう。

終了後、村上さんはワークショップの魅力について、こんなふうに語ってくれました。

「ワークショップっていうのは、結局こうやっていろんな人が集まることが最大の魅力だと思うんですよ。今まで知らなかった人と出会えば、刺激になるし、いろんな意味で影響も受ける。それが結局、スキルアップにつながってゆくわけですよ。僕自身、いろんな人に会えて、結構楽しんじゃってますしね」

現代の場合、すれちがう人の数は多くても、実際にコミュニケートし、その人の人柄を深く知ることのできる機会は、とても少ないのが現実。そんな中、人と人とが集い、交流する場を提供することがワークショップの重要な役割の1つというのは大いにうなずけます。

次回は一体どんなエチュードが展開され、参加者のどんなキャラクターや個性が見えてくるのか?参加者だけでなく、村上さんも次回のワークショップに向けて興味津々のようです。



<ワークショップ情報>
ENBUゼミナールサマースクール ワークショップ「じっくり演劇やってみよう」
講師:村上大樹 日程:8/5(火)、8/6(水)、8/8(金)、8/12(火)、8/13(水)、8/15(金)10:30〜14:30

<公演情報>
拙者ムニエル夏休みSPECIALワクワクイベント「裏拙者マニアat上野野音」
8月30日(土)15:00 上野水上音楽堂




2003/08/01

ワークショップ・レポートでは、今後も全国のさまざまなワークショップを取り上げてゆきます。ご意見ご感想、また「うちのワークショップも取り上げて!」「こんなワークショップを知りたい!」などのご要望がございましたら、こちらまで、どしどしお寄せくださ い。お待ちしています。