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〜全国の演劇ワークショップ体験リポート〜



“ドラマ”を創る先生って、どんな先生?

日本演劇教育連盟・夏のワークショップ
「ドラマ・ティーチャーになろう! 〜即興劇編〜」

2003年8月3日、4日 日本大学芸術学部江古田校舎にて



この夏はいかがお過ごしでしたか?あいにくの雨が続いて、記録的な冷夏となった今年。あんまり夏らしくはありませんでしたが、それでも子どもたちは、たまに顔を出す太陽を待たずとも、目一杯に夏休みを楽しんでいたようです。

そんな子どもたちの一方で、8月は学校の先生たちにとっては研修のシーズン。自分を磨くチャンスとばかりに、様々な研修に足を運んでいました。今回はそんな先生たちの「演劇研修」として、毎年開催されている、日本演劇教育連盟の夏のイベント「全国演劇教育研究集会」での演劇ワークショップ「ドラマ・ティーチャーになろう!〜即興劇編〜」にお邪魔してきました。



西武池袋線・江古田駅の北口を降りて歩くこと3分、大きな塀に囲まれた工場のようなグレーの建物。ここが今回のワークショップ会場となる、“日芸”こと日本大学芸術学部。ちなみに日芸は、演劇表現を教育分野に取り入れた「演劇教育」の研究を、国内の大学機関として初めて行なったのだとか。
日本演劇教育連盟の「全国演劇教育研究集会(通称・全劇研)」は、これまで会場となっていた世田谷パブリックシアターから、この日芸に場所を移して、数日間にわたって行われました。

今回、取材にお邪魔した「ドラマ・ティーチャーになろう!」は、学校で演劇を指導したり、「授業に取り入れたい」という先生たちに必要な指導ノウハウを、実際の演劇創作を自分自身で体験しながら学ぶというワークショップ。今年も、全国からたくさんの先生が参加しました。

今年のメインテーマは「即興劇」。3日間かけて、台本のない即興でのお芝居づくりに挑戦するというプログラムで、この日は2日目。早速、会場となる教室をのぞいてみました。



8月3日(日) 晴れ (ワークショップ2日目)

PM1:30


講師を務める正嘉昭さん
午前中から始まっていたワークショップは、休憩をはさんで、ここからが昼の部のスタート。講師を務める正嘉昭(ただし・よしあき)さんは、ご自身も現役の中学校教師。教壇に立つかたわらで、日本演劇教育連盟の委員長として、全国の学校でワークショップ活動を精力的に行なっています。

気さくで温厚な人柄で、教える側と教えられる側に立ったきめ細かな指導。まさに、演劇教育界のカリスマ・ティーチャーです。そして、この日はもう1人、日本の演劇教育研究の第一人者である演出家・高山図南雄さんがゲスト講師として参加していました。

まずは高山さんから即興劇についてのこんな話がありました。

「人は誰でも、日常の思いがけないところで何か発見するってことがありますよね。即興劇はまさにそれなんです。でも、突拍子もないものが出てくることもあるので、わりと生真面目な先生は、多少面食らう部分はあるかもしれないね」

そんな話を聞いて苦笑をもらす参加者の皆さん。この中には、演劇部の顧問として子どもたちに演劇を指導している先生もいれば、指導どころか演劇すらも未経験という先生など、キャリアも個性も様々。さてさて、どんなワークになるのやら?

ゲスト講師の高山図南雄さん


PM2:05

まずは「ジバリッシュ(Gibberise)」と呼ばれる“メチャクチャ語”を使っての即興芝居の練習から。ジバリッシュは、いわば言葉を知らない原始人が、声と身振りで相手に意志を伝えるのと同じような感じで、日本語でも英語でもない、でたらめな言葉(音?)で相手とコミュニケーションを図るというエクササイズです。

はじめは「2人が通り過ぎざまにガンをつけて、お互いにケンカする」というお題。最初はでたらめな言葉を話すことすら戸惑っていた先生たちも、次第にコツをつかむと、意味不明な言葉を大声で発しながら、自分の感情が大胆に表れてきます。中には男性教師を打ち負かしてしまう女性教師まで!

「普段は、言葉を重視し、理性を大事にする先生たちも、言葉を取っ払うことで、逆に自分に素直になれるんですよ」と正さん。

「では、こういう即興を実際に授業でやろうとした場合、皆さんはどうします?これをただそのままやるのではなく、そこに子どもたちを引き込むために先生なりのアイディアや工夫が必要だと思うんですよ」

いろんなテーマでジバリッシュを体験した先生たちは、ワークショップリーダーの正さんの言葉一つ一つに耳を傾けます。そして、正さんから1つのヒントが出されました。

「子どもたちに興味を抱かせるには、ゲーム性を持たせることが非常に大事なんです。特にクイズ形式。当てっこの要素を入れることで、やっている子だけでなく、それを見ている子も、そこに参加して楽しむことができるんです」

そして、そんな正さんの提案から、今度は実際の授業と同じように、先生役と生徒役に分かれて、いくつかのエクササイズが行なわれました。

 
授業サンプル@  「好きな食べもの&嫌いな食べもの」
2人1組になり、お互いに自分の好きな食べ物、もしくは嫌いな食べ物を、ジバリッシュで相手に伝える。相手は、それが何の食べ物で、好きなのか嫌いなのかを当ててゆく。

 

授業サンプルA  「入社試験」
1人が面接官、もう1人が受験者となり、とある会社の入社面接試験を行なう。質疑の内容は全てジバリッシュ。終わった後に「どんなやり取りがなされたのか?」「2人の雰囲気はどうだったか?」「合格か、不合格か?」などを見ている子どもたちに当ててもらう。



授業サンプルB  「宇宙オリンピック」
ここは大宇宙のオリンピック競技場。いろんな星から選抜された、さまざまな競技選手がやってきている。1人が司会進行役となり、みごと金メダルに輝いた各競技の選手たちにジバリッシュでインタビューをする。しかし、どんな星のどんな種目なのか、それは選手を演じる1人1人の即興にお任せ。そして、全てのインタビューが終わった後に、見ていた子どもたちに、どんな星のどんな種目だったのか当ててもらう。


どのエクササイズも、クイズの要素を取り入れるだけで、誰もが楽しめる演劇ゲームに大変身。参加者の皆さんも、この時ばかりは自分が教師であることを忘れ、子どもの気持ちになって大はしゃぎ。

その様子を見て、正さんはこう言います。
「まずは先生が率先して遊ぶことって、結構大事なことなんですよ。だって先生がやりたがらないのに、子どもたちにだけやれっていうのも酷い話でしょ?」

大爆笑の連続だったエクササイズの後は、これまでの実践を振り返ってのディスカッションへ。

「小学校低学年の場合にはどうすればいい?」
「即興の面白さを、台本があるお芝居に活かすには?」

参加者の皆さんから次々と飛び出す質問の嵐。次は自分が“教師”として演劇の楽しさとコミュニケーションの面白さを子どもたちに伝えなければいけません。

でも、ワークショップが始まる前よりも、先生たちの目は子どもたちのようにキラキラと輝いています。
自分自身が思い切り楽しんだものだからこそ、子どもたちにもっと深く理解して欲しい。1人1人の先生たちから、そんな想いが伝わってきました。


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2003/09/01

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