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〜全国の演劇ワークショップ体験リポート〜



「パントマイムでビューティ&ウェルネス!?」

日本マイム研究所・土曜レディスマイム教室
 
2003年10月11日(土)日本マイム研究所にて 

今回、取材させていただいたのは、なんと女性限定のマイム・ワークショップ。
映画館のレディス・デーや、電車の女性専用車両というのは聞いたとことがありますが、女性専用のマイム・ワークショップがあるなんて初耳です。しかも、このワークショップでは、マイムを表現技術を磨くだけでなく、美容や健康にも効果があるとか。さてさて、どんなプログラムなのでしょうか?



田園都市線・駒沢大学駅を公園口から降りて徒歩3分、閑静な住宅街の中に、今回のワークショップを主催する「日本マイム研究所」があります。ここは、日本で初めて設立されたマイム専門の養成機関。まさに日本のパントマイムのパイオニアとも言える学校で、これまでにも中村有志さんや、コント赤信号の渡辺正行さん、小宮孝泰さんをはじめ、今、日本で活躍する多くのタレントやマイミストを輩出しています。


研究所の代表で講師を務める佐々木博康さんは、マイムの本場フランスで“現代マイムの祖”と呼ばれるエチアンヌ・ドゥクルーに師事するなど、世界でもトップクラスのマイミスト。一方で、45年にも及ぶ指導歴の中で、1500人以上もの教え子を育ててきています。

“研究所”という響きから、「ちょっとカタくてムズカシそう……」とイメージされる方もいらっしゃるかもしれません。

ところが!こちらの研究所はガーデニングに囲まれたアットホームな空間。木製のドアを開けて中に入ると、アンティークな日用雑貨や、クラウンの人形が飾られ、壁には海外のマイムアーティストの写真や、色褪せたチャップリンの映画ポスターが所狭しと貼られています。窓を開ければ外は昔ながらの日本家屋と緑豊かな庭が広がっていて、懐かしさと人の温もりを感じられる素敵な空間です。



PM2:00

今日の参加者は9名。

舞台やダンス、声楽などの経験者もいれば、まったく経験のない主婦の方まで、年齢もキャリアもバラバラの女性ばかり。

「よろしくお願いします」

正座で手をつき頭を下げる"純日本風"の挨拶でワークショップがはじまります。
まずは早速、準備体操から……

「アン、ディ、トワ、……」

佐々木さんがフランス語でカウントを取ると、首・胸・腰など、身体をパーツごとにストレッチ。そして、身体の分解運動や重心運動など、マイムに必要な身体訓練を、まるでダンスの振り付けのようないくつかの動きのバリエーションでトレーニングしてゆきます。


トレーニングの内容は、佐々木さんが海外で学んだものに加え、バレエなどからもエッセンスを取り入れた研究所オリジナルのプログラム。

マイムのトレーニングと聞くと、静かなイメージを持つかもしれませんが、呼吸を重視したマイム理論を持つ佐々木さんのレッスンはあくまでアクティブ。時に「ハッ!」と勢いよく息を吐き出し、切れよく身体を動かす様子は、まるで空手か合気道の稽古のよう。エネルギッシュな動きの連続に、参加者の皆さんの額にも汗がにじみます。


PM2:30

ひととおり の基礎訓練が終わったところで、ここからは“壁”“ロープ”などお馴染みのマイムの動きをレッスン。

「ちょっと待って。ここに手があると、肘が壁にめりこんじゃうね」

佐々木さんは身体のパーツごとに、どこをどう動かしてゆけばよいか、どこを気にすればいいかを細かく教えてゆきます。最初は振り付けのように見えた動きも、佐々木さんの指導によって、そこに“何か”があるように見えてくるから不思議です。


そのほか、「ドアを開けて、閉める」「荷車を引く」「大きな棒で鍋をかき回す」「重い石を肩に担いで歩く」など、様々なバリエーションの動きで、見えないものを身体で感じ、表現する練習を繰り返してゆきます。


PM2:50


佐々木さんが、部屋の端から何やら大きなパネルを運び出して来ます。ここからはパネルの塀を使ったパントマイムの練習。部屋の真ん中にパネルを2枚立てると、その向こうで階段やエスカレーターを使っているように人が降りたり、上がってきたり…。テレビでもお馴染みのパントマイム芸に参加者の皆さんが挑戦します。

最初は途中でガタリと身体が揺れてしまったり、降りるはずのエスカレーターが降りてゆかなかったり(?)と珍現象も続出。でも、練習を繰り返すうちに徐々にうまくなっていって、見ている人たちも「おや!?」という表情が。身体だけでマジックのような錯覚を作り出せる面白さと、それで周囲の人たちを楽しませる喜び。これぞマイムの大きな醍醐味のひとつと言えるのかもしれませんね。


PM3:05

続いて、“季節を感じて歩く”というレッスンへ。佐々木さんから出される「春の歩き」や「秋の歩き」というテーマに沿って、歩きで表現します。

「春なら足の裏に若草を、秋なら枯れ草を踏む感触を自分なりに捉えてみて。紅葉が綺麗だなあ、とかそんな喜びがこの辺(胸のあたりを指して)から見えてくるといいんだけどなあ」
と佐々木さん。

マイムはクラウンのようなコミカルな表現だけではありません。時として、内面に踏み込んだ感受性豊かな表現も要求されるのです。だからこそ、このような感受性を研ぎ澄ますトレーニングも必要不可決。春の匂いを嗅ぎ、秋風の冷たさを感じる。アトリエの中を、見えない四季をイメージしながら歩く参加者の皆さんの表情からは、豊かな詩情すら漂ってくるようでした。


PM3:10

続いて、音楽に合わせて盆踊りと太極拳のレッスン。
意外な気もしますが、動きの美しさを追及するマイムにとっては、踊りもまた重要なエクササイズのひとつ。盆踊りは日本古来の日常的で美しい所作が含まれており、太極拳は、佐々木さんがその動きの優雅さと美しさに魅せられて以来、研究所のレッスンに取り入れられています。


PM3:20

ここまで休憩なく続けられてきたレッスンもひと休み。部屋の真ん中には、座布団とコーヒーが用意されます。のんびりくつろぐのかと思ったら……。実は、ここからがワークショップの後半戦、創作と発表の時間です。


「今日のお題は……。“私の恋人”でいこうか」

と、佐々木さんから出されたお題をテーマにして、それぞれが短い作品を作り、1人ずつ発表してゆきます。この日の「私の恋人」は、月や雲、風などの自然現象や、椅子やテレビなど、人間以外の何かに恋してしまった自分を描いてみるというもの。

「でも、ここではあまり堅苦しい感じで創作をしてもらいたくないんですよ。だからゆったりとした雰囲気で、お茶でも飲みながらね」

佐々木さんはこのワークショップを、“お茶会”のような、ゆったりとくつろげるものでありたいと考えているそうです。それは、気軽にマイムに親しんでもらいたいという思いの表れなのでしょう。

参加者の皆さんは、温かいコーヒーを飲みながらリラックスして、お題についてのアイデアを練っています。中には、メモを取りながらアイデアをまとめる人も。即興の遊びとはいえ、誰もが真剣です。

「僕は別にマイムが一番好きってわけじゃないんだよ。僕は野球が一番好きなの」

参加者の皆さんが頭をひねる間、佐々木さんはアイディアのヒントにと、とりとめもなく様々な話をしてくれます。ベーゴマや釘刺しなどの遊びに明け暮れていた子ども時代の話から、道端で寂しそうにしてたので思わず家に連れてきてしまったという猫の話やペットの話、マイムと俳句の共通点など、佐々木さんの話題は実に多岐にわたります。参加者の中には考えるのも忘れて、話に聞き入ってしまう人もちらほら。

「ここでは、普段あまり考えないようなことを考えたり、日常では出会わないような空想や発想を見つけるいいきっかけにになってくれればと思うんです。そうすることで心のゆとりは増してくるし、きっとストレス解消にもいいんじゃないかな」

佐々木さんは時には文学作品や時事問題をお題に出してくることも珍しくないとか。日常の様々な出来事をもっと柔軟な発想で考える機会になれば。とりとめもなくも雑談を続ける佐々木さんの話からもそんな思いが伝わってきます。


PM4:00

そして、それぞれの発表へ。

「じゃあ、私から」と、1人の女性が、照れくさそうに手を上げました。こうして、1人1人が礼儀正しくお辞儀をしては、自分の作品を発表してゆきます。

自動販売機に恋してしまったり、雲に恋焦がれたり、どの作品も奇想天外ながらも、女性ならではの細やかでやさしい雰囲気の作品が出来上がってゆきます。そのひとつひとつに佐々木さんは、時に黙り込んだり、時に大きな身振りでアイディアを提案したり。決して大げさに褒めすぎることもなければ、四角四面に直させることもなく、率直にアドバイスを投げかけてゆきます。


PM4:45

全員が一巡したところで、今日のワークショップはお開き。予定よりも大幅に伸びてしまいましたが、それもまたお愛嬌。この研究所では、予定時間を越えてもレッスンが続くこともしばしばで、また、終わったあともアトリエでそのまま参加者同士で話し込むことも珍しくないとか。まるでサロンのような場所なのです。この日の終了後も参加者の皆さんは今日の感想を話し合ったり、情報交換をしたりと、サロンの余韻を楽しんでいました。

「レッスンを受けるようになってから、日常の動作にも気をくばるようになりましたね。台所に立っているときも、どういう姿勢で重心の位置がどこにあるのかなんて意識するようになったり(笑)。普段の動作なんかも、自然と綺麗な身のこなしになってきているような気がしますね。何よりこの1年でかなり体が締まりましたし」

友だちの誘いでこの教室に来るようになって1年になるという主婦の方は、ワークショップの魅力についてそんなふうに教えてくれました。


●講師の佐々木博康さんにインタビュー 
Q:レディスマイム教室を始めるきっかけは?

もともとは、女性も男性も関係なく、マイムなどの舞台表現にあまり馴染みのない一般の人たちに気軽に参加してもらえるような教室をと思っていたんですよ。でも、やってみたら女性の参加者が圧倒的に多かったから、いっそのこと「レディス教室」にしてしまおうかと。そうネーミングするだけでも一般のOLや主婦の方なんかはずっと参加しやすくなるんじゃないかな。

Q:マイムのどういうところが、美容・健康にいいんでしょう?

まず、姿勢がよくなりますね。そして、日常の動きや所作が綺麗になる。そして、これが一番大事なんですが、何より精神的に豊かになります。このワークショップでは、マイムを通していろんな作品づくりをしてもらいますが、そこで否が応でも自分の想像力を働かせていろんなことを考えてイメージすることになります。こういうことって現代の日常生活では、なかなか行なわれなくなっていますからね。

そうした創造的な心に触れて、内面を豊かにすることは、心を美しくすることにも繋がりますし、外見だけでなく内面も磨いてゆくというところが、エアロビなどとは大きく違うところです。


あなたも土曜のひと時、マイムのレッスンで心と身体を美しく磨いてみてはいかがですか?




日本マイム研究所では、女性向けだけでなく、舞台俳優・演出家・ダンサー・振付師・コメディアン等、あらゆるニーズに対応するマイムの専門クラスを開講しています。

 各講座の詳しい内容についてはこちらからどうぞ!

日本マイム研究所
 東京都世田谷区駒沢1−7−15
 TEL&FAX 03−3421−3603



2003/11/04

ワークショップ・レポートでは、今後も全国のさまざまなワークショップを取り上げてゆきます。ご意見ご感想、また「うちのワークショップも取り上げて!」「こんなワークショップを知りたい!」などのご要望がございましたら、こちらまで、どしどしお寄せくださ い。お待ちしています。