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〜全国の演劇ワークショップ体験リポート〜 |
田園都市線・駒沢大学駅を公園口から降りて徒歩3分、閑静な住宅街の中に、今回のワークショップを主催する「日本マイム研究所」があります。ここは、日本で初めて設立されたマイム専門の養成機関。まさに日本のパントマイムのパイオニアとも言える学校で、これまでにも中村有志さんや、コント赤信号の渡辺正行さん、小宮孝泰さんをはじめ、今、日本で活躍する多くのタレントやマイミストを輩出しています。 研究所の代表で講師を務める佐々木博康さんは、マイムの本場フランスで“現代マイムの祖”と呼ばれるエチアンヌ・ドゥクルーに師事するなど、世界でもトップクラスのマイミスト。一方で、45年にも及ぶ指導歴の中で、1500人以上もの教え子を育ててきています。
「よろしくお願いします」 正座で手をつき頭を下げる"純日本風"の挨拶でワークショップがはじまります。 まずは早速、準備体操から…… 「アン、ディ、トワ、……」 佐々木さんがフランス語でカウントを取ると、首・胸・腰など、身体をパーツごとにストレッチ。そして、身体の分解運動や重心運動など、マイムに必要な身体訓練を、まるでダンスの振り付けのようないくつかの動きのバリエーションでトレーニングしてゆきます。
トレーニングの内容は、佐々木さんが海外で学んだものに加え、バレエなどからもエッセンスを取り入れた研究所オリジナルのプログラム。 マイムのトレーニングと聞くと、静かなイメージを持つかもしれませんが、呼吸を重視したマイム理論を持つ佐々木さんのレッスンはあくまでアクティブ。時に「ハッ!」と勢いよく息を吐き出し、切れよく身体を動かす様子は、まるで空手か合気道の稽古のよう。エネルギッシュな動きの連続に、参加者の皆さんの額にも汗がにじみます。
そのほか、「ドアを開けて、閉める」「荷車を引く」「大きな棒で鍋をかき回す」「重い石を肩に担いで歩く」など、様々なバリエーションの動きで、見えないものを身体で感じ、表現する練習を繰り返してゆきます。 PM2:50
佐々木さんが、部屋の端から何やら大きなパネルを運び出して来ます。ここからはパネルの塀を使ったパントマイムの練習。部屋の真ん中にパネルを2枚立てると、その向こうで階段やエスカレーターを使っているように人が降りたり、上がってきたり…。テレビでもお馴染みのパントマイム芸に参加者の皆さんが挑戦します。 最初は途中でガタリと身体が揺れてしまったり、降りるはずのエスカレーターが降りてゆかなかったり(?)と珍現象も続出。でも、練習を繰り返すうちに徐々にうまくなっていって、見ている人たちも「おや!?」という表情が。身体だけでマジックのような錯覚を作り出せる面白さと、それで周囲の人たちを楽しませる喜び。これぞマイムの大きな醍醐味のひとつと言えるのかもしれませんね。
マイムはクラウンのようなコミカルな表現だけではありません。時として、内面に踏み込んだ感受性豊かな表現も要求されるのです。だからこそ、このような感受性を研ぎ澄ますトレーニングも必要不可決。春の匂いを嗅ぎ、秋風の冷たさを感じる。アトリエの中を、見えない四季をイメージしながら歩く参加者の皆さんの表情からは、豊かな詩情すら漂ってくるようでした。
PM3:20 ここまで休憩なく続けられてきたレッスンもひと休み。部屋の真ん中には、座布団とコーヒーが用意されます。のんびりくつろぐのかと思ったら……。実は、ここからがワークショップの後半戦、創作と発表の時間です。
「今日のお題は……。“私の恋人”でいこうか」 と、佐々木さんから出されたお題をテーマにして、それぞれが短い作品を作り、1人ずつ発表してゆきます。この日の「私の恋人」は、月や雲、風などの自然現象や、椅子やテレビなど、人間以外の何かに恋してしまった自分を描いてみるというもの。 「でも、ここではあまり堅苦しい感じで創作をしてもらいたくないんですよ。だからゆったりとした雰囲気で、お茶でも飲みながらね」
PM4:00
「じゃあ、私から」と、1人の女性が、照れくさそうに手を上げました。こうして、1人1人が礼儀正しくお辞儀をしては、自分の作品を発表してゆきます。 自動販売機に恋してしまったり、雲に恋焦がれたり、どの作品も奇想天外ながらも、女性ならではの細やかでやさしい雰囲気の作品が出来上がってゆきます。そのひとつひとつに佐々木さんは、時に黙り込んだり、時に大きな身振りでアイディアを提案したり。決して大げさに褒めすぎることもなければ、四角四面に直させることもなく、率直にアドバイスを投げかけてゆきます。
PM4:45 全員が一巡したところで、今日のワークショップはお開き。予定よりも大幅に伸びてしまいましたが、それもまたお愛嬌。この研究所では、予定時間を越えてもレッスンが続くこともしばしばで、また、終わったあともアトリエでそのまま参加者同士で話し込むことも珍しくないとか。まるでサロンのような場所なのです。この日の終了後も参加者の皆さんは今日の感想を話し合ったり、情報交換をしたりと、サロンの余韻を楽しんでいました。 「レッスンを受けるようになってから、日常の動作にも気をくばるようになりましたね。台所に立っているときも、どういう姿勢で重心の位置がどこにあるのかなんて意識するようになったり(笑)。普段の動作なんかも、自然と綺麗な身のこなしになってきているような気がしますね。何よりこの1年でかなり体が締まりましたし」 友だちの誘いでこの教室に来るようになって1年になるという主婦の方は、ワークショップの魅力についてそんなふうに教えてくれました。
あなたも土曜のひと時、マイムのレッスンで心と身体を美しく磨いてみてはいかがですか?
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