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〜全国の演劇ワークショップ体験リポート〜



「プレイバックシアターって、なに?なに?なに?」

プレイバッカーズ・ワンデイワークショップ
2003年11月16日(日) ウィリング横浜にて


人間誰しも、もう一度あの頃に戻ってみたいとか、あの日に帰りたい、なんてことを思うものです。でもそれが無理となれば、せめてその光景の記憶に残るイメージだけでも感じてみたい!そんな気持ちになることって、ありませんか?
今回レポートにお邪魔するのは、そんな願いを演劇にして叶えてくれる「プレイバックシアター」と呼ばれる即興劇のワークショップです。

プレイバックシアターは、1975年にアメリカのジョナサン・フォックス氏により始められた、観客の個人的体験を即興劇として再現するという演劇スタイルです。プレイバックシアターは、一般にいわれている演劇でありますが、その創作内容にはセラピーの要素も持っています。実際、演劇公演としてだけでなく、教育、福祉、社員研修など、様々な分野でいかされているのです。

今回は、日本のプレイバックシアターの旗手として1994年に結成された劇団「プレイバッカーズ」のワンデイワークショップをご紹介します。
                       
AM10:00
今日の参加者は16名。会社員、自営業、公務員、医療・福祉関係など、業種もバラバラ。プレイバック歴18年というベテランの参加者から、今回初めて体験するというまで、実にさまざまな経歴の方が集まりました。

はじめは全員がイスに座わって輪になると、「ちーちゃん」「ジェ〜ムス」など、自分にあだ名をつけての自己紹介から。

「今日は心がゴニョゴニョしているんです。」と自分の心の中の感覚を紹介する人もいれば、昔の卒業アルバムをひっくり返してきて、今日プレイバックしたい自分の過去を下調べしてきたなんて人も。過去にこのワークショップに参加して、プレイバック体験のおもしろさを知っている人からは早速「早くやりたい!」との声が。

AM10:20
まずは、プレイバックをやるためのウォーミングアップとして、ストレッチや、「名前オニ」と称するユニークな鬼ごっこを行なうと、続いては、参加者全員をもっと良く知り合おうということで、「犬を飼っている」「兄弟がいます」などの共通点を探し出すフルーツバスケットや、参加者それぞれの住んでいるところの位置関係を地図にしてみるなど、ゲームを通して参加者同士のコミュニケーションを楽しみます。

    

その後は、服の柄ごとに4人組4チームに分かれると、4人でひとつの動きをするゲームや、誰もが知っているおとぎ話を3分間の打ち合わせの後に上演する即興劇のエクササイズを行ないます。

プレイバックシアターは、全くの打ち合わせなしの即興で演じられます。そのため、こうした即興劇の練習も自然と必要となってくるのです。ここでは「ジャックと豆の木」「はだかの王様」「大きなかぶ」「赤ずきん」など、さまざまな童話がチームごとに上演されました。
終了後は、また各チームごとで輪になり反省会。「あそこはドキドキしたねー」とか「あそこのチームのあれは笑えた!」など、みんなで和気藹々と感想を言い合いました。力を合わせて1つの即興劇をやったことで、参加者同士、すっかり打ち解けてしまったようです。

AM11:35

「では、ストーリーをやりましょうか」
ウォーミングアップがてらのエクササイズで、参加者の心も身体もすっかり温まってきたところで、いよいよ本題のプレイバックシアターへ突入!ここではまず、プレイバックシアターの中でも最もオーソドックスなスタイルである「ストーリー」と呼ばれるものからスタートしました。

プレイバックシアターは、司会進行役を務めるコンダクターと、プレイバックしたい
出来事や物語を語るテラー。そして、テラーの話をお芝居として再現するアクターと、お芝居に即興で音をつけるミュージシャンで構成されます。テラー自身が体験したことを、ほかのメンバーたちが再現するのです。

まずはコンダクターの進行に沿って、テラーがプレイバックしたい場面について語ります。例えば、「最近、私が怒ったこと」を再現したいというトモさん(仮)の場合では、まず、コンダクターが「トモさんが怒ったことは何だったんですか?」「怒らせた相手のその時の様子はどうでしたか?」「その結果、トモさんはどう感じましたか?」など、トモさんが怒った原因や背景などをできるだけ分かりやすく、インタビューしてゆきます。

そこから、ポイントとなる人物(主人公となるテラー自身や、ここでは怒らせた相手の人)をアクターの中からそれぞれ配役し、事実に基づいた話の流れをコンダクターが整理します。

そして、いよいよその情報を手がかりにして、アクターたちが、テラーの話した物語をテラーの配役によって即興で演じ、さらにそこへミュージシャンが即興で音をつけての即興劇に……。劇のクライマックスやラストシーンがテラーの話したどの場面になるかは、アクターの即興芝居によって決まります。まさにその場の阿吽の呼吸によって創られてゆくのです。

この日のワークショップでも、実に様々なストーリーが展開されました。その中のいくつかをご紹介しましょう。

●Aさんの場合
最近、私は自分の夫以外に好きな人ができ、そしてフラれました。彼はあるセミナーで知り合った年下の男性。セミナー後に、何度か食事を重ねるうち、段々とその人に対する気持ちが盛り上がってきた私は、3回目のデート(食事)でその想いをそこはかとなくアピール。すると相手の様子が急転し、「僕はそんなつもりないですから!」と、すぐさま不機嫌にそそくさと帰ってしまいました。あまりの断られ方にショックを受けた私は、泣きながら家に帰ると、夫が泣いている私を見て何も言わずに抱きしめてくれたんです。この時、夫に一生ついてゆこうと思いました。今でも心に残る大切なシーンです。

●Bさんの場合
15年前の私、大学時代の思い出を再現してください。大学に入る前、私は未来に対し、とても不安を持っていたんですが、大学でとてもいい仲間たちと出会い、彼らといれば頑張れるような気持ちにさせてくれました。今でも思い出すのは、ダンスサークルに入っていた仲間たちの学園祭でのステージを、傍らで熱狂的に応援していたこと。その当時の興奮をまた体感したいです。また現在になって、当時のビデオを観ながら、仲間たちと酒を酌み交わしている光景なんていうのも見て見たいですね。



今回プレイバックされたものの中には、こうした過去の体験を振り返るものばかりではなく、「自分の未来を見てみたい」と、自分の思い描く将来や夢を再現するものや、テラーの中でまだ漠然としている“心のもやもや”を、ファシリテーターとのやり取りの中で、あるシーンとして具体的にしていったものもありました。

再現されたストーリーを見たテラーの方が、嬉しそうな表情でちょっと照れくさそうに、演じたアクターの人たちに、「ありがとうございました」と声を掛ける姿がとても印象的でした。そして、中には自分自身の心の深くに触れる出来事が再現される様を見て、思わず涙ぐむ方もいらっしゃいました。

このプレイバックシアター、例えて言うなら、その人のためだけの「プライベートシアター」ともいえるでしょう。そっと胸の中にしまっていた個人的な問題や光景を、第三者が力を合わせて再現してくれるドラマ。演じてもらう方は、言葉にならないほどの感動が生まれるでしょう。

また演じるアクターの方も、テラーの心の琴線に触れるとてもプライベートな世界に入り込み、それを自らの欲求を満たすためだけの表現ではなく、その人のために演じる―――相手の心を癒す表現の楽しさ、素晴らしさがあるのです。
これまでプレイバックシアターのワークショップに多く参加し、半ばやみつきになってしまったという参加者のひとりは、プレイバックシアターを、プレゼントのやりとりのようなものなのだと教えてくれました。

それはつまり、テラーの方の心に訴えかける、とても贅沢なパフォーマンスのプレゼント。

優しさや共感や癒しなど心の豊かさあふれる、人と人とのコミュニケーションを、演劇という表現を通じてたっぷりと味わうことができる。そこがプレイバックシアターの魅力なのかもしれません。

PM3:15

昼食を挟んでいくつかのストーリーをやり終えた後は、このストーリー以外のやり方でのプレイバックシアターが行なわれました。
●「タブロー」

「ストーリー」をノーカット版とするなら、これはそのダイジェスト版。テラーの話そのものを演じるのではなく、物語をポイントのシーンだけを、アクターがスライドのようにストップモーションで表現してゆきます。
     
       ●「動く彫刻」

ある人の「楽しいっ!」「つらいー」といった気持ちそのものを、アクターたちが身体を使って“動くオブジェ”として表現します。この日はワークショップの最後に、ワークを受けた今の気持ちを出し合い、アクターが動く彫刻として表現してゆきました。
PM4:25

一日がかりで行なったワークショップも、そろそろ終盤に。また、はじめのように全員で輪になると、最後に今日の感想を全員一言にして表すというゲームでお開きに。全員の言葉からは、ワークショップ後の充実感と満ち足りた喜びにあふれていました。

そして、毎週第3日曜日に開催していたこのプレイバッカーズのワンデイワークショップは、残念ながら今年いっぱいで終了してしまうとのこと。プレイバッカーズが日本に先駆けこのワークショップを始めたのは1994年。当初は、プレイバックシアターなんて誰も知らないという状態でのスタートでした。

それから10年。
今では、このプレイバックを扱うワークショップや専門の劇団も増えてきており、またプレイバックシアターに親しむ人たちの裾野も広がってきました。そんな状況の変化も受けて、プレイバッカーズは、これからはニーズの高まっている公演活動に力を注いで行かれるとのこと。ただし、このプレイバックシアターを広めた10年の活動意義は大きかったと思います。今後のプレイバッカーズの新しい活動に注目したいです。

あなただったら、どんな過去を再現してみたいですか?


※プレイバッカーズでは、自主公演ほか、各種セミナーでのワークショップやプレイバックシアターに関するスキルを学べる合宿タイプなど幅広く活動しています。

詳細はプレイバッカーズのHPにてどうぞ!

プレイバッカーズ 〒233-0011 横浜市港南区東永谷1-15-30-305
TEL&FAX  046-873-2521
E-mail: munakata@playback-az.com

代表宗像佳代さん



2003/12/

ワークショップ・レポートでは、今後も全国のさまざまなワークショップを取り上げてゆきます。ご意見ご感想、また「うちのワークショップも取り上げて!」「こんなワークショップを知りたい!」などのご要望がございましたら、こちらまで、どしどしお寄せくださ い。お待ちしています。