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〜全国の演劇ワークショップ体験リポート〜
 



「マイタウン!マイストーリー!」

世田谷パブリックシアター 「地域の物語ワークショップ」ティーンズ班
2004年3月27日(土) 世田谷パブリックシアターにて



毎朝立ち寄るパン屋さん、満員電車、本屋さん、横断歩道、学校、喫茶店、劇場……。
私たちの街には、人やお店、風景など、いろんなシーンが存在します。そして、その中には、さまざまなドラマが潜んでいます。自分たちの暮らしのワンシーンを、子どもたちはどのように表現していくのでしょうか?

今回のレポートは、参加者が自分たちの住む街を探索し、いろいろな場所や風景から物語をイメージしてドラマスケッチを創作する、世田谷パブリックシアター「地域の物語ワークショップ」。
いくつかのコースにわかれて行なわれているシリーズの中から、10代の子どもたちだけが参加する「ティーンズ班」のワークショップを取材してきました。

世田谷パブリックシアター(SePT)は、1997年4月にオープンした世田谷区の公共文化ホール。開館以来、地域の方々に芸術文化を親しんでもらうおうと、国内外の質の高い舞台芸術作品を積極的に取り上げるほか、様々なジャンルのワークショップも数多く企画しています。
地域に根ざした文化振興を着実に継続させている点からも、まさに、国内で最も理想的な公共ホールの1つと言えるでしょう。

「地域の物語ワークショップ」は、その中でも、毎年行われている定番のプログラム。さてさて、今回のティーンズ班のワークショップは、一体どんなものになるのでしょう?

三軒茶屋にある世田谷パブリックシアター地下4階の稽古場が、今回のワークショップ会場。参加者は13歳〜19歳の男女21名。主に中学2年生を中心とした“ティーンズ”たちです。

このワークショップは全10回講座で、今日は9回目。そして、明日はいよいよ発表会!みんな、ちょっとだけ緊張気味のようです。

「おはようございます」と、ワークショップ講師・柏木陽さん(NPO法人演劇百貨店)がやってきて、一同集合。ふと、会場を見渡すと、あちらこちらに工作で創ったオブジェがゴロゴロ??いったい、これは何に使うのでしょう?

さて、これまでに行なわれたワークショップをざっと振り返ってみましょう。
今回のメインテーマは、街の中のいろいろな場所からドラマを発見して、それらを想像力とカラダをフルに使って表現しようというもの。まず、11個のテーマにあった「場所」を探すことから始まりました。
 お気に入りの場所/嫌いな場所/笑っちゃう場所/
怪しい場所/切ない場所/入りにくい場所/
   行ってみたい場所/絶対いる場所/目がかすむ場所/
思い出す場所/緊張する場所

参加者はいくつかのグループに分かれて街を探索。これらのテーマにぴったりの場所を発見したら、写真におさめて、ミニチュアセットにしてゆきます。
なるほど、会場のあちこちにあったオブジェは、ミニチュアセットだったのですね。
なるほど、納得。

これらの場所をモチーフにして、みんなでアイデアを出し合いながら、小さなドラマのワンシーンを作ってゆきます。これまでに、みんなで創作したシーンの数は、なんと55!明日の発表会では、これらの短いシーンをつなげて上演しようというわけです。

今日は、本番を直前に控えたリハーサル。さらに、16:00からは、参加者の父兄を招いての公開リハーサルも予定されています。

早速、柏木さんから、上演用の設計書(台本)がみんなに手渡されました。それを手にした参加者からは、「オオッ…!」」と思わず歓声が―――。

まずは稽古の前にウォーミングアップ。ストレッチで頭や指をほぐしたら、続いては、これまで体験してきたエクササイズの中で一番のお気に入りのものを、参加者のみなさんにリクエストしてもらいます。

一番人気は「こおりおに」。二番人気は「だるまさんがころんだ」。三番人気は「おにごっご」。

あれ?子供の頃、誰もが遊んだ遊びばかり?実は、シアターゲームと呼ばれるワークショップエクササイズには、ゲームを通じて仲間同士のコミュニケーションを深めたり、自由な表現を引き出すような内容のものがたくさんあるんです。

おにごっこでは、「ギャー!」とみんなで大騒ぎ。普段、こんな大声で動き回る機会ってなかなかない。だからみんなの目がすごく活き活きしてる……。

続いては、身体でさまざまな形を作っていくゲームです。全員がランダムに会場内を歩き回り、柏木さんの拍手の合図に全員がストップしたり動き出したり。みんなでスピードと呼吸を合わせながら空気を作っていきます。

「みんなで協力しながら動いてねー。拍手の数の人数に分かれて僕の言うお題の形をつくってね」

「箸」、「茶碗」、「自動改札」など、次々と出されるお題に耳を傾け、グループごとに即興で身体表現してゆきます。さらには、3人1組になって行うものや、形を作る過程をいくつかのアクションに分けて見せてゆくものなど、チームワークと集中力と自由なアイデアが求められるエクササイズが続きます。

「相手が何を描こうとしているのか、瞬時に読み取って表現して!」とアドバイスする柏木さん。けれども、なかなか思い通りにいかず、「う〜、コミュニケーション不足だ〜」と悲鳴を上げるグループも…。みんなで協力して1つのモノを表現するのって、「面白さ」と「難しさ」が同居してるんですね。

ユニークなエクササイズで身体と心が十分あったまったところで、午後からはいよいよ発表会に向けての稽古です。ランチ休憩中にも、あちらこちらでアイデアの打ち合わせや動きの確認などが行なわれます。

それにしても、55というシーンの数には、改めてびっくりしますね。さらには、音楽やSEなども一切使わずに全部人の声で表現し、場所をイメージさせるための動きも、全員の身体をフルに使ってアンサンブルで創っていくというその創作スタイルも本格的!若者たちの想像力や表現センスには、思わず脱帽です。

上演される作品は10代の彼らが感じる日常のスケッチ。その全てに、鋭いユーモアや
ナイーブな感情、熱いエネルギーがほとばしります。
ここで、55シーンの中からいくつかの作品をご紹介しますね。


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ある1シーン<駅の改札>

   改札口にそっと切符を入れる。
   なにやら、神妙な面持ち。ふっと漏れる心の言葉は、
   「子ども料金で、バレないかなぁ……」

ある1シーン<信号前交差点>

   1人の女の子が赤信号で、立ち止まる。
   後ろから追いついた
後ろから追いついた男の子と友人の女の子2人。
男の子は、彼女が好きらしい。
   友達に促されて"告白"しに行こうとすると、信号が青に変わってしまった……。
   ちょっとしたタイミングを逃したしまうのだった。

ある1シーン<電気屋さん>

   お試し用のマッサージ機に群らがっているオバさまたち。
   「買わないのであればご遠慮ください」という店員さんに、
   「なによ、その態度〜!」と、オバさまたちの逆襲……

ある1シーン<自転車置き場>

  男の子が、自転車置き場で、自転車を派手に倒してしまった!
  ドミノのように円を描きながら、倒れていく自転車たち。
  ふと出た言葉が、「あ……オレ、今日歩きだったんだ」

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独創的でユニークなアイデアが満載のシーンが演じられるたびに、会場も大爆笑。生活の中のちょっとした風景やささやかな人間ドラマがやけにリアルで、取材を忘れて笑ってしまいました。

ちなみに、自転車も自動改札も信号機も、全部が身体だけで表現されます。パントマイムのように、具体的な表現でなくたって、面白い表現ならば何でもあり。先入観なく自由に表現する彼らの作品は、オトナの想像をどんどん超えてゆくのです。

彼らが繰り出すアイデアの嵐に圧倒されながら、時には優しい目で1人1人の参加者たちをじっと見詰める柏木さん。若者たちの表現力の可能性を実感しているのでしょうか。いやがおうにも、発表会への期待が膨らんできます。

あっという間に時間は過ぎて、時計の針は公開リハーサルの時間を指します。会場には、ちらほらと、参加者の友人たちや保護者の方々も集まり始めてきました。さすがに参加者たちの表情にもこわばった緊張が走ります。

「心配はみんな心配。でも、公開リハーサルのあとに明日の本番につなげられるから。今日は、わざわざ来ていただいた人たちに何を伝えたいのかだけ、しっかり持っていこう!」という柏木さんの言葉に真剣に耳を傾ける面々。テンションの高まりが、見ているこちらにもビンビンと伝わってきます。

そしていよいよ公開リハーサル開始!
自分たちが自分自身で見つけて創作して、自分の街の物語。55のシーンを、スピーディなテンポで次々とつないでいきます。緊張から、練習どおりにいかないところもあったり、思わぬハプニングもあったりしながらも、緊密なチームワークで表現されるドラマの数々……。こんなとき、見学者から笑い声が聞こえると、何よりもの勇気になります。

上演後、見学者の皆さんから拍手があがり、ようやくホッとした表情の若者たち。けれども、本当の本番は明日。リハーサル後は、見学者の皆さんからの感想なども参考して、工夫を加える話し合いが続きます。

←「彫刻家のいえに宅急便屋さんがやってきた1シーン」

「明日の朝にも時間はある。最後まで工夫を重ねて、いいものを創ろう!」
柏木さんの言葉に、みんなの心がぐっと1つに。

みんなの街を、みんなの力で、精一杯表現する―――。協力して創り上げるその充実感と、仲間への思い、言葉では表現仕切れない感情が、彼らの中に湧きあがっている、そう感じました。


演劇ワークショップは、カタチに残らないものを創ります。
でも、この時間の中で感じた強い思いや感情、経験、そして仲間は、かけがえない素晴らしい宝になるだろうと、彼らを見て強く思うのでした。

ワークショップ後の柏木さんにお聞きしました―――――

「これまでもいくつものワークショップをやっていますけど、僕たちに出来ることは何かなぁって考えると、機会を作ってあげること。そして協力して一緒に作っていくことだと思うんですよ。

テーマについて合意して意見を交換して、教えるのではなくここに集まったメンバーで、この場で作っていく。これが大切だと思うんです。そして、子どもだけでなく年齢に関係なくワークショップを広げて行きたいですね。例えば、おじいさん、おばあさんに若者が恋愛相談に行くなんてワークショップなんて面白くないですか?大切なのは触れ合いを持つことです」


NPO法人演劇百貨店代表
柏木陽さん

P.S.
参加者のいきいきとした表情と緊張感に刺激を受けて、急遽、次の日(3月28日)の本番を観にゆくことにしました。昨日の公開リハーサルに比べると、「これが“本番力”というものか?」というほど、さらに大変身!スピードもテンポもグッとアップして、一つ一つの表現にも、メッセージがよりはっきりと伝わるようになっていました。
終演後は、客席からの拍手が鳴り止まないほど!ティーンズ班全員の表情には、達成感と自信が満ち溢れていましたよ。柏木さんも、ホント、いい表情でした。
大成功、おめでとう!


「地域の物語ワークショップ」
世田谷パブリックシアター 
154-0004 東京都世田谷区太子堂4-1-1
TEL03-5432-1526 FAX03-5432-1559
NPO法人演劇百貨店
155-0031 東京都世田谷区北沢2-10-15-309
TEL・FAX03-3380-4390

2004/05/12

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