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〜全国の演劇ワークショップ体験リポート〜
 



「ゆっくりゆっくりつながろう、心とからだをつなげよう」

アーティストinコミュニティ・プログラム 障害のある方との演劇ワークショップ/
主催:クリエイティブ・アート実行委員会 講師:花崎摂  
2004年7月4日(日) 新宿区公共施設内


今回取材させていただいたのは、障害のある方とない方とが一緒に行う演劇ワークショップ。

健常な人と障害を持っている人は、生活の場やスタイルが違ってしまうことから、日常的なコミュニケーションを取っていくことが、なかなかスムーズに行かないこともあります。そんなお互いが、演劇を通じてどのようにコミュニケートしながら表現を創り上げていくのでしょうか?

ワークショップを主催するのは、様々なアーティストと社会とを結びつける活動を続けるクリエイティブ・アート実行委員会。その中の「アーティストinコミュニティ・プログラム」では、特に高齢者や障害を持つ方々や子どもたちを対象に、学校や施設でのワークショップに積極的に取り組んでいます。ワークのジャンルも様々で、演劇のほかにも、ダンスや音楽や和太鼓、また声を使ったワークショップがあります。

今回、一般の参加者は、学校の先生や福祉施設の職員の方、大学生などの方々。そのほかに、知的障害を持った青年層の方々が主に参加してくれました。

今日は3回に渡って行なわれたワークショップの最終日。参加者の皆さんも、講師の花崎さんも、ワークショップのラストを充実したかたちで締めくくりたいという願いとともに会場にやってきました。

まずは、一般の方々だけが参加する午前中組。
ワークショップのテーマは、「ワークショックのためのワークショップ」です。
午後に参加する障害者の皆さんと、どうすればスムーズに楽しくワークショップが行なえるか、花崎さんを中心に午後のプログラムを実際に行ない、お互いが考えたりアドバイスを加えながら、アイデアや工夫を盛り込んでゆきます。

10:00
花崎さんの穏やかな人柄にならってか、参加者の皆さんのムードもとっても和やか。
さっそく、野口体操を取り入れたリラックス運動でカラダとココロをほぐしていきます。背中合わせのほぐし合いは、相手とのコミュニケーションや信頼関係が身体を通して心地よく伝えられていくようで、みなさん気持ちよさそう。
10:30

いよいよ午後へ向けたプログラムを体験していきます。

◆わらべうたシリーズ

 ・ なーべなーべ底抜け♪
 ・ あんたがたどこさ♪
 ・ お寺の和尚さんが、かぼちゃの種をまきました♪

これらのわらべ歌遊びをちょっとアレンジをして、身体でいろいろな表現ができるようにしたエクササイズです。

例えば3番目のわらべ歌。
「お寺の和尚さんが、かえるの種をまきました。卵がかえって、おたまじゃくし〜、手足が出てきて、ゲロゲ〜〜ロ!」と言った具合に、その人がその瞬間に元歌を自由にアレンジ。突発的に生まれた替え歌に合わせて、周りのメンバーも動きをつけてゆきます。

突然替え歌を作る方も大変でが、それにあわせてみんなが必死になってまねしてくれるのが、とっても楽しいワークです。

◆なぞなぞシェイプ

これはなぞなぞの本をつかったプログラム。
チームに分かれて、本の中から気に入ったなぞなぞを選びます。そのなぞなぞを、身体を使った自由な表現で出題して答えを当ててもらうというものです。

◆ストーリーシアター

ある絵本を題材に、物語をいくつかのセンテンスに分けて、順番に読んでいきます。全員のリレー朗読の中から、ストーリーの筋や登場人物の感情をつむぎ、演じていくグループワークです。

「今日は最終日なので、演劇的な要素を加えて、作品らしいものにしたいですね」

午後のメインをどんなプログラムにするべきか、全員で話し合います。これまでの2回ともに参加している方が少なかったり、それぞれの障害の違いもあったりで、全員が満足できるラストのプログラムをどのように組んでいったらよいか、みんな頭を悩ませています。

「なぞなぞシェイプに性格や感情を持ったキャラクターを登場させてみては?」
「ストーリーシアターを使って、即興劇にしてみるのもありかも」

複雑にさせるのは良くないけれど、最後なのでいろいろ盛り込みたい。でも、参加回数の少ない方々がどこまで付いてこられるかが全く予測できない……。なかなかメインプログラムのメドが立たず、皆さんに不安な空気が漂います。
しかし、花崎さんは続けます。

「障害の方とのワークショップの時には、本当に予測が付かないんです。いくら準備良く計画したって、その通りに行くことは殆どないです。だから、うまく進めようとするのでなく、ある時間内で、どうやって楽しめるかということだけを大事にして、本番は進めたほうがいいでしょうね。逆に決めてしまはない方がいいくらいです」

そして、午後のメインはなぞなぞシェイプを行い、その様子を見ながら、段階を進めていくことになりました。
さあ、どうなるのか??参加者の方も、私も、そして花崎さんも、ドキドキです。

13:30

私が会場に入ったときには、すでに障害者の参加者の皆さんが、花崎さんを囲んで踊りのレッスンをしていました。参加者は10才の女の子から26歳の男性の6名で、知的障害を抱えている方々。
一緒になって明るくノリノリの方もいれば、シャイで壁にくっついて離れない方もと、性格はみんなバラバラです。

「それでは、初めての方もいますので、自己紹介をしましょうか」みんなで楽しく自己紹介できるように、名前を言いながらポーズをとって、みんなでそのポーズをまねしあう自己紹介。

スムーズに輪の中に入れない方がいても、丁寧に、自然に、そしてゆっくりと輪に導きます。

14:00

午前中も行なった、わらべ歌の遊び。
なーべなーべそーこ抜け♪では、全員で手をつないで輪になって、それを知恵の輪みたいにひねったりよじったり……。お寺のおしょうさん♪では、かぼちゃの種ならぬ、バナナの種やらイチゴやら、それをみんなで食べあったりして、身体を動かしながら遊び心たっぷりの内容に、全員のムードも熱を帯びてきました。

ただ、これまでずっと参加していた高校生の女の子は、どうも物足りない模様。前回行なったプログラムに早く進みたいようで、花崎さんにしきりに、「そろそろ始めません?」とリクエスト。

「もう少し、やってもいいですか?」という花崎さんに、「ダメです」とピシャリ。
よほど前回のワークが楽しかったのでしょう。

実は彼女、初回には全然ワークショップに参加しようとせず、自分の世界に入ってしまうばかりで、花崎さんをはじめ、そのほかの参加者の皆さんもすごく心配していたそうなんです。

でも、2回目からは徐々にやる気を見せてくれて、3回目の今日の彼女の態度には、皆さん内心びっくりしていたそうです。

14:30

後半に入り、まずはなぞなぞシェイプです。

「なぞなぞをお芝居のようにして、からだを使ってやりたいんですが、いいですか?」
「はい、いいです!」

花崎さんが、みんなにきちんと了解を取りながら、あくまで彼らのペースを、見て進めていきます。さあ、3組に分かれて、なぞなぞのお芝居合戦です。

先程からこれをやりたがっていた女の子は、チームには入りたくないということで、みんなのなぞなぞを選んで、黒板に書く担当になりました。

花崎さんは、みんなの輪から多少離れていても、無理にいれず、違う方向から参加できる形を彼女に導きます。

3組の練習開始。障害の差もあれば、性格や個性もバラバラ。
けれどもそれを思いっきり、そのまま表現する彼らの自由な発想に、一般の参加者の方々も驚きを隠せない様子で、 いろんな歓声が聞こえてきます。

輪に入ってこなかった女の子も、みんなになぞなぞの説明をするうちに、少しずつ身体を動かしながら、なぞなぞ創りに参加する雰囲気になってきました。

「ねえ、ちょっとお手伝いしてもらってもいい?」
さりげなく、花崎さんがチームの中に呼びいれます。

15:00

彼らの流れに任せていくうちに、なぞなぞシェイプのワークがぐんぐんと発展。
いよいよ発表になりましたが、単なるなぞなぞ遊びというよりも、出てきたものは、ほとんど芝居のような形になっていました。


たとえば、色鉛筆という答えを導くためのなぞなぞ―――。

魔法の杖を使ったストーリーになり、そこには蝶や花、魔法使いなどキャラクターも自然と生まれ、午前中にイメージしていた演劇的な要素をどんどん取り入れた作品に発展していったのです。

「魔法の色鉛筆を使ってみない?魔法を使おうよ!」という一人の提案で、全員で壮大な魔法ごっこ。「シンデレラは全員馬車に乗って!」魔法使いの掛け声に、全員で馬車に乗っての大移動!“ごっこ”がどんどんとエスカレートして、みんなも乗ってきました。


「雨よふれ〜」

「魔法は生きてるんだぞっ!」

無口な20才の彼女からの、突然の力強い一言に、みんな笑いながら大感激!なるほど、魔法は生きている。だから、今日は特別シンデレラになれるのです。

後半は、午前中の不安が嘘なくらいに大盛り上がりで無事終了。みんなの表情が、本当にきらきらとしていて、印象的でした。そして終了後、午前中の一般の参加者だけ残り、感想を出し合いました。

  「待つ事の大切さを知りました」
  「彼らの想像力が素晴らしい」
  「ダメ、と注意するべきか否かの線引きは難しい」
  「異性を意識する行動の対処は、どうしたらよかったのか?」

たった2時間でしたが、午前中にイメージしていたものとは違う展開になり、感想を言い合う皆さんも、彼らのいろいろな表情や感情・表現力、自分との違い、予想していたものとの違いなど、たくさんの発見をしたようです。

今回のワークショップでは、午前と午後の中で、そして障害を持つ方との関わりの中で、理屈ではなく、身体や心で通じ合いながら一緒に楽しむことの難しさと感動を実感することができたのではないでしょうか。

そして、午後参加してくださった若い彼らも、初めての体験にきっとドキドキしたり、不安になったり、興奮したり、笑ったりして、そんな自分の心の中の変化に、きっと喜びを感じてくれたはずです。

障害のある方とない方とが、コミュニケーションをとりながら同じ場所で同じ楽しみを共有する機会はまだまだ少ないですが、演劇はその大切なきっかけになるはずだ、改めて実感させられる素敵なワークショップでした。

■ワークショップ後、講師を務めた花崎さんにお話をお聞きしました。

演劇は、場所を変えて、もっといろいろな形で存在できると思うんです。
それは言葉に限らず、身体を使ったり、またその存在そのものの空気が語ったり、どんな形でも、表現されているものに演劇としてのすばらしさを見つけ、日常の中に、もっともっと身近になっていいと思います。

   ミューズ・カンパニー
   クリエイティブ・アート実行委員会
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2004/8/20

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