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〜全国の演劇ワークショップ体験リポート〜
 




夏休みの思い出スケッチは、お芝居で描いちゃおう!」

夏休み二泊三日のお寺合宿子どもワークショップ/講師:トリのマーク(通称)
主催:NPO法人芸術文化ワークス 助成:こどもゆめ基金   
2004年8月23〜25日 青砥やくじん延命寺

最近は本拠地である東京から離れ、範囲を広げてユニークな活動を続ける(通称トリのマーク)の子ども向け演劇ワークショップを取材してきました。

トリのマークは、1991年より活動開始。演劇ともパフォーマンスとも美術とも形容できない、自由で個性的な作品を創り続けています。

公演はフツーの劇場以外にも、美術館、ギャラリー、倉庫、アパートの一室、お寺など、場所の力や空間の力を活かした形で行なわれ、また、近年では地元の方々と協力して公演場所探しから本番までのプロセスまで共に行なうことで、地域の文化振興活動も行っています。

ワークショップを主催するNPO法人芸術文化ワークスは、これまで地域とアートを結びつけるための様々な文化振興事業を企画してきた団体。今回は、延命寺劇場プロジェクトの一環として、トリのマークによる延命寺でのお寺合宿ワークショップが企画されました。

参加者は小学校4年生から中学3年生の9名。会場となる延命寺に2泊3日で泊り込んで作品を創ります。取材させていただいたのは、最終日に行なわれた8月25日の発表会。ワークショップの集大成です。

9:30 
延命寺は、JR常磐線・亀有駅から、川沿いを歩いて徒歩約10分のところにあります。

お寺の2階の本堂からは、子どもたちの声と、今回演出を担当する俳優の柳澤さんの声が…。さっそく、ミニ発表会のリハーサルをしているようです。

お寺といっても、日光街道と環七が交差する交通量の多いこの場所。静けさの中にも、車の行きかう音や街の気配がすーっと耳にはいってきます。シーンと緊張した空間というより、日常的な雑音も聞こえる、自然な空気が流れています。
    

本堂にお邪魔すると…ん?演劇をしている雰囲気とはちょっと違いますね。お寺の境内の中で、子どもたちが楽しそうに遊んでいた昔の光景、そのもの。

かくれんぼしたり、クイズ遊びをしていたり。でも、子どもたちの笑顔や突拍子もない言葉遊びや動きには、いつの間にか理屈ぬきで引き込まれてしまいます。なるほど、これはすでにお芝居なのですね。

「もう少し大きな声で」と、柳澤さんがジャスチャーでアピール。子どもたちの自然な表現が、発表会を観に来てくれる観客の皆さんにも伝わるように、演出としてバランスを取っています。
さて、このような作品を創作したこれまでの2日間は、どんなワークショップをしてきたのでしょうか?

10:00 

「そろそろ、休憩しましょう。おやつでーす」

子どもたちのおやつ休憩の間に、今回のワークショップの全体を構成されているトリのマーク主宰・山中さんと、演出を担当されている女優の柳澤さんに、ここまでの流れをお聞きしました――――。

1日目は、自己紹介を交えたいろいろなゲームからスタート。最初はやっぱりみんなが緊張した様子だったそう。ゲームを楽しむうちに、少しずつ自分達のペースをつかんでいったようでしたが、自分の興味あることを、とにかく自由に好きに表現してみようという内容に、スムーズに入ることができない子もいたとか。

「“自由に、何を使ってもいいんだよ。好きなことして、表現していいんだよ”といっても、一部の子ども達はその意味が分からなかったようです。自由にってどういうこと?という感じで、戸惑いがありました。」と、柳澤さん。

でも、面白いことを見つけるのは誰よりもお得意の子どもたち。ワークが進むにつれて、「もっと、もっと」という気持ちが高まり、緊張は徐々にほぐれて、どんどん自由な表現を見つけていったそうです。

2日目は、お寺で音さがしや場所探しを行ないました。

  

子どもたちが気に入って集めてきた音や場所とは?お寺で使う太鼓やガラガラのような楽器、また木の手すりを叩く音、木の階段や砂利道……。いつもは何気ない音や場所でも、探してみるとその面白さや魅力に、子どもたちも宝探しをするような気持ちになったようですね。


トリの展覧会です。子どもたちが描いたたち
続いては、2〜3のグループに分かれ、山中さんや柳澤さんが考えたお題を表現して、グループごとになにを表現しているのかを当てるゲーム。

お題は、「サイコロ」などの具体的なものから、「ほ」とか「つ」など、ひとつの文字や、「ドロドロ」や「ヒューヒュー」という擬音語。さらには、「キリンにあいさつされた」「サルとかくれんぼ」「寝ていたゾウを起こしてしまった」など、ちょっとシュールなシチュエーションに発展しました。

グループで相談したり工夫したりしながら、思ってみなかったような自由で面白い表現が次々と生まれて、とっても盛り上がったようです。

10:30 
おやつ休憩が終わってからも、発表時間ギリギリまでリハーサルを続けます。先にやった通し稽古よりもっともっと緊張した雰囲気が9人のパフォーマーたちを1つにしているようです。

「3秒たってから入った方がいいですか?」
リーダー的存在の中学生が、細かいタイミングまで柳澤さんに相談しています。
「はい、いいと思います。先程よりもずっといいです。」
目つきがぐんぐんと真剣になってきているみんなに、柳澤さんも応えます。

ただの遊びのようでただの遊びではない。発表される楽しい思い出は、遊び心たっぷりに子どもたちが自由に活き活きと描いた、りっぱなお芝居。
さあ、まもなく開演です!

袖でスタンバイっ!

11:00 本番

小さな子どもから大人まで、およそ20〜30名のお客さんが、会場となる本堂に入ってきました。お寺の大きな仏壇を前に座っていると、うっすらと流れるかわいらしいBGMがこころを和やかにさせてくれます。


9人のパフォーマーの子どもたちが登場。
みんな素敵な衣装を着ています。この衣装は、白いTシャツに好きな生地を選んで、好きな形に裁断して、お母さん方に縫ってもらったもの。この手づくり感が、観ている人にもやさしい気持ちにさせてくれます。

初めは、この合宿ワークショップでやったさまざまな表現を、ひとつひとつ説明しながら、実際に再現してくれました。クイズ形式のゲームや、即興で出されたお題、舞台上で相談している様子を見るのは、ちょっとしたドキュメンタリーな劇中劇のようで面白い。

「こうしてできたいろいろなシーンを、1つにつなげました。どうぞご覧ください。…………ヒュ〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!」みんな大きく腕を回し、風のように去っていきました。作品が始まるのです。

「サルたちのかくれんぼ」というお題で出た、かわいいサルたちの遊びシーンや、「ヒューヒュー」のお題で出た動きの表現が、ところどころシーンをつなぐブリッチになって、子どもたちの楽しかったワークショップやお寺での生活が、とてもよく伝わってきました。

走る時は思いっきり走り、ジャンプする時には思いっきり高く!かくれんぼも本当に隠れちゃう。

そんな生き生きとした自然な彼らの表情は、きらきらして、ものすごく魅力的です。

数々のシーンは、大人の感覚で“巧くまとめられたもの”ではありません。全てが、子どもたちの感覚をそのまま活かしたものです。それだけに、自然な呼吸と自然なリズムで構成されているのが感じられます。子どもたちが大勢の人前で、自由な気持ちで楽しそうに表現している姿に、柳澤さんと山中さんの表情も嬉しそう。

ときに演劇ワークショップは、楽しむことよりも上手にやる方向に流れてしまうことがあります。上手く見せたいという気持ちが逆効果になって、ワークショップ本来の「創る、表現する面白さ」を、失わせてしまうのです。

けれどもこのワークショップでは、最後まで子どもたちの空気やリズムを大切にしながら、表現作品を創ることの楽しさを伝えてくれます。んー、素敵なワークショップですね。

作品を精一杯演じた後に、ずらりと整列した子どもたち。「はあはあ」と息が切れてます。やったぞ!という充実した表情と、もっともっとやりたい!という表情が伺えて、観客からも思わず微笑があふれます。

この後、子どもたちは、トリのマークのお二方と反省会をして、無事合宿は終了しました。夏休みももう終わり。9月になって、いつもの学校に通う生活に戻ります。

彼らはこの思い出を、どうやって学校の友達に伝えるのでしょうか?実際やってみせるのかな?

ちょっと、見てみたい気分です。


■ワークショップ終了後に、講師のお2人にお聞きしました。

Q.いろいろな場所でワークショップをやられて感じることは?

山中正哉さん(トリのマーク・主宰/演出家/脚本家/俳優 ) 

「公演ですとどうしても舞台上と客席とで、お互いがふれあえることができません。でもワークショップでは、いろいろな方々と出会えるので、それが今はとっても楽しいです。」

柳澤明子さん(トリのマーク・俳優/製作/舞台美術/衣装等)

「はじめはとっても緊張されていた皆さんが、ワークショップをするうちに、まるで新しい扉が開くかのように、これまでになくいきいきとしてくる姿をみて、素敵だなーって、思いますね。」


左:山中さん右:柳澤さん
   NPO法人芸術文化ワークス
   HP アーツカレンダー
(トリのマーク) 
HP http://www.bananawani.org/tori/

     

2004/9/ 10

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