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〜全国の演劇ワークショップ体験リポート〜
 



「言葉の形、間の形を知る」

俳優の仕事ーしゃべり言葉をしゃべる/山内健司(青年団 俳優)
2004年11月24日(水)・25日(木) こまばアゴラ劇場


今回は、劇団桃唄309のウィンドミルオフィスにより企画された、演劇を様ざまなアプローチで体験・学習できる「アトリエvol.1」を訪れ、そのうちのひとつのプログラム、俳優が舞台上で話す言葉に焦点が当てられたワークショップを取材してきました。

ウィンドミルオフィスは、本来劇団桃唄309の制作母体となっていますが、公演活動だけでなく、ワークショップを始めとした教育事業や文化振興など、幅広く活動されています。この連続ワークショップは今回が第一弾ですが、巻上公一さんの「ボイス&ムーブメント」をはじめ、ダンス、照明や音響の裏方スタッフのためのワークショップまで、舞台芸術のさまざまな分野に関するワークショップが行なわれました。
ここで紹介するのは、俳優のためのワークショップ。講師は、青年団で俳優をされている山内健司さんです。山内さんは、青年団の作品のほとんどに出演されている他、海外の演出家との演劇創作にも参加。2000年より、桜美林大学で非常勤講師に就任され、あくまで俳優のスタンスから演劇への取り組みを考え、伝えることを実践されています。

「しゃべり言葉をしゃべる」というタイトルのこのワークショップ。テープに吹き込んだ会話を題材にして、普段何気なく交わされる会話や口から発せられる言葉を、徹底的に解析していくプログラムです。

2日目となる25日に、会場となるこまばアゴラ劇場内の稽古場に伺いました。

13:30
山内さんは今日のワークショップの準備をされていましたが、すこしだけ時間を頂いて、どのようにワークショップを進行していくのか教えていただきました。プログラムは、いたってシンプルな流れ。
 
           @会話を録音する
           A音の形を知る(会話を忠実に文章におこす)
           B再度その形になった理由などを解析してみる

「例えば、今、こーやってぼくがしゃべってますよねえ」
と、山内さんが、たった今されている会話を使って、音の形について説明してくれました。

『こーやって』の“こ”を伸ばす音。『しゃべってますよねえ』の“ねえ”をしり上がりに発音する音。文節ごとの間など、会話の中にある言葉の形を事細かに見ていきます。それらの形は、感情変化や目的から生まれてくる表現。それが何なのかを、細部にわたって考えていく事を、根気よく行なっていくのです。

「自分の言葉や他の人の言葉に興味を持って、そのセンサーが少しでも敏感になってもらえると、いいですよね」と、山内さん。従来演劇ワークショップは、演出家が企画することが多いのですが、山内さんはあくまで俳優の視点にこだわって、このしゃべり言葉のワークショップをたちあげたそうです。
開始の14:00の5分前になると、俳優の皆さんが、続々と稽古場に集まってきました。

 「今日は稽古場を出て、外の状況で録音してみたいと思います。」

4人一組、4つグループに分けられ、そのうち2人が会話をする係り、他の2人はそれを録音して会話している状況をチェックする係り。

そして、会話のお題は、「劇場の印象」。ここの稽古場は、アゴラ劇場の最上階にあります。早速稽古場を出て、劇場の何所で会話をするか、ロケハンの開始。

主に場所としては、『屋上』『受付』『ロビー』『会場内』『楽屋』『喫煙所』『調光室』など。
この期間は、ちょうど劇団桃唄309の公演「K病院の引越し」が上演されていたので、劇場内をはじめ楽屋もロビーも、チラシが大量に置かれていたり、衣装や小道具、化粧品やらが雑然と置かれていたり、公演中の劇場の雰囲気がムンムンと漂います。

14:30 
ひととおりロケハンを終え稽古場へ。
「しゃべる人は自分たちがしゃべる場所を決めて、早速録音してきてください。」しゃべりたい場所にこだわり、そこの印象について会話をします。さて、グループごとに再び移動です。
屋上、楽屋、急なきり穴の階段など、決めた場所で会話の録音開始。録音係りは、どのような状況で会話をしたかもしっかりチェックします。というのも、後ほどこのシーンを再現してもらうからです。目線、姿勢、空間の広さなど、できるだけ細かに見ていきます。

14:45
録音を終えたグループから、今度は会話を原稿用紙に起こしていく作業、まずは言葉を書き出していくのです。忠実に書き出すのは勿論の事、小さな“ッ”のような音も、言葉にしにくい音も、全て詳細に書き出していくため、皆さん、テレコに近寄り必死に耳を傾けます。

一通り言葉を書き出したら、今度は音のチェックです。音の形、間の形を導きだす作業で、ここが一番難しくまた面白い作業。音や間の形から、このときの感情の動き、状況の変化を分析していくのです。

山内「この間は何でしょうかね?」
楽屋そばのきり穴で会話をしたチームが、山内さんの質問から、ある1つの間について分析します。
   ※会話の一部を抜粋

   A「楽屋って、落ちつきますよね」
   B「そうですね」
   A「なんか、がんばってるっつーのが、なんか、人がいないのに、なんか、
     伝わってきますよね」
   間
   B「なんかおれ、出番中1人だけ、こう。楽屋に帰ってくる時とか、好きなん
     ですよねー」
   A「ああああああ」

そうそう、この間は何であいたんだろ?理由がわかんないですよー」
「でも、全体的にリラックスしてたんだよなあ」
「なにを言おうか考えてたのかなあ」
「あ、そうだ、自分のこと考えてたんですよ。楽屋についてどう思うかなーって」

山内「なるほどね、それで次に自分の感想が出てきたんですね、それでいいですよ」

まずはその音や間の形を知り、その理由について考える事で、そのときの気持ちの変化などがはっきりしてくるのです。
作業が進む中、山内さんがボードに次のような事を書きました。

 音の形    高低    間の形  意識が切れている
         強弱           長短
         早遅     間の種類
         大小           
         長短

「チームでの作業にだんだん偏りが出てきています。いい状態ではありません。バランスよく
もっと全体を見て、何故その形になったのかを考えてください。間についても、その
間の種類を考える事が必要です」と、チームの作業状態をチェックしていきます。ボードに書かれた形すべてにアンテナを張り、そうなった意図を発見していく事が重要なのです。
分析を終えると、今度は改めてその意図を汲んで会話をしてみます。
ただし、これはモノ真似ではありません。そのときにどんな状態だったのか?どういう気持ちでいたのかを振り返り、形に意味をつけることで、そのときの会話の様子に近づけていくという事。上辺や記憶だけで真似るのでは、意味がありません。

15:40
4つのチームによる「劇場の印象」の会話の発表です。
そのときの場所の雰囲気や、2人の感情の細かな動きを捉えて表現されていて、どれも大変興味深い作品に。
自然な間や微妙な言葉の雰囲気が、なかなか難しかったとの感想が多くありました。シンプルな作業ではあるけれども、言葉や間の理由を考え、その細かな意図をつむいで表現する会話には、集中力と想像力とを要するのです。
「実は、もう1つやりたいことがあるんです」と、山内さんがエチュードを録音する次の段階のプログラムを提案。
テーマは『ナンパ』。女性は壁にもたれ、男が片手をその脇において話しかける、2、3分の即興芝居です。

先程と同じように4人一組で、演技と録音の二手に分かれて作業開始。

即興というルールに加え、テーマがテーマだけあり、俳優の皆さんもテンションが上がりますが、「セリフに詰まるのも含めて、その緊張感もOKですから(笑)」と山内さんも楽しそうに眺めています。
録音を終えると、早速作業に。言葉を書き出し、音のチェックで形を見つけ、意味を見出していきます。

16:45
分析したことを元にして、先程のエチュードをもう一度……。

山内「これを台本として扱おうとしてしまうと思うんですが、これはエチュードなので、どうやって言葉をつなげようか、皆さん考えながら言葉を発していると思うんですよ。ここでは、この言葉を通して、その人自身の意識の流れを表現することが対象になりますから、役についてはある意味忘れてください。」

役者は、その仕事上、どうしても自分とは違う“役”という人格に関して意識が行き過ぎてしまうことが、多々あります。

しかし、ここではあえてその意識を忘れて、言葉をつなげていくことだけ大切だと導く山内さんの言葉は、山内さん自身が役者であるからこそ、気付けるチェックポイントです。
最後に4つ男女のナンパ風景を発表して、ワークショップは終了です。

今回は『セリフっぽく聞こえる芝居とはどういうことか?』ということついて、独特のアプローチで徹底的に分析し、言葉を送り出そうとする自分自身の意識の流れが大切なことを、楽しみながら実感させてくれる貴重なワークショップでした。

『しゃべり言葉をしゃべる』。

舞台上でしゃべる言葉は、どうしても、しゃべり言葉でなくなることが良くあります。それは役者にとっての大きな課題。今回のプログラムは、役者を仕事にしている人にとって、また、コミュニケーションについて興味のある方にとっても、人と人との会話に関する興味を高めてくれる、非常に有意義な内容だったように思います。


■ワークショップ終了後、山内さんにお話を伺いました。

劇場を拠点にしたワークショップには非常に興味があります。劇場に人が集うことは、すばらしい事だし、大切な事ですね。芝居を観にくるだけでなく、こういうことにも活かせるはずです。

活気のある劇場を作り出そうとする、今回のようなワークショップを企画する劇場や劇団の考え方は、重要だと思います。

ウィンドミルオフィス/劇団桃唄309公式ホームページ http://www.momouta.org/
青年団ホームページ 
http://www.seinendan.org/


2005/01

ワークショップ・レポートでは、今後も全国のさまざまなワークショップを取り上げてゆきます。ご意見ご感想、また「うちのワークショップも取り上げて!」「こんなワークショップを知りたい!」などのご要望がございましたら、こちらまで、どしどしお寄せくださ い。お待ちしています。