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〜全国の演劇ワークショップ体験リポート〜
 




「ねばって……ねばって……最高の作品を!」

NEC×ACTION!〜子どもとつくる舞台シリーズ
「踊る!すがも地蔵通り!!」作品づくりのワークショップ/伊藤多恵(振付演出家)
2005年3月29日(月) にしすがも創造舎(旧朝日中学校)」



今回は、小学校2年生から5年生までの17人の子どもたちが、自分の町を題材にしたダンスを創作するという作品作りのワークショップを取材してきました。

この企画は、NECとNPO「芸術家と子どもたち」がパートナーシップを結び、2003年度よりシリーズとして継続して取り組んでいるもので、小学生の子どもたちがプロのアーティストと一緒にゼロからダンス作品づくりにチャレンジし、最後は地域の方々を招いての公演を行うというもの。

主催として企画の中心に立つNPO「芸術家と子どもたち」では、これまでもアーティストを小学校に派遣し、学校の先生と協力しながらワークショップ型授業の企画・実施する“ASIAS”(Artist's Studio In A School)をはじめ、芸術家と子どもたちの出会いの場作りを精力的に行っています。

講師を務める伊藤多恵さんは、自身のコンテンポラリーダンスの創作以外にも、演劇、オペラ、子ども向けの舞台作品などの演出や振付なども手がけ、幅広い分野で活躍しています。

今回のワークショップでは伊藤さんの発想と子どもたちのアイデアが結びついて、どんなダンスが出来上がっていくのでしょう?取材前からとっても楽しみです。


10:00 
場所はにしすがも創造舎。廃校になった中学校の建物をそのまま利用し、ダンスや演劇の稽古場として活用されています。舞台芸術家の作品創作をハード面で支える、都内指折りの貴重な場所です。

今日のワークショップは、3月12日から9回に渡って行なわれたプログラムの最終回ということもあり、次の日の本番に向けた練習がメイン。

これまではどのようにワークショップが行なわれていたのでしょうか。

作品は身体をフルに使ったダンス表現がメイン。

テーマは、この会場の近くにある、子どもたちにとってもなじみの深い「巣鴨地蔵通り」や「庚申塚松栄会」の商店街。賑やかな風景、行きかう人々、お店の物売りの声など、そこに存在する空気、人の動き、音などの全ての要素が作品の材料になります。

ある日のワークショップでは、その材料探しに全員で町に出かけて徹底取材を行いました。初めは遠足気分で楽しいお散歩
も、次第に本格的な取材へ。細かく見たり聞いたりして、お店の特徴や人のしゃべり声、売り文句、おばあちゃんの歩き方などをよく覚えたり、メモをとっておいたりして、それを思い出して身体を動かし
遊びながら作品に仕上げていったとか。

ワークショップの会場となる体育館には、すでに明日の公演のための立派な舞台装置が立て込まれています。四方に立てられたのぼりには、お店屋さんの名前があります。

「おはようございます」

伊藤さんと子どもたちが円になって、いよいよ稽古の開始です。本番直前ということで、さすがに緊張ムード……。まずは、商店街のお店の風景をダンスにした前半のシーンの流れをチェックします。

「お茶屋さんのあとは、どこへ行きますか?」
「おばあさんの歩き方は、どうやるんだっけ?」

複雑な動きの流れを細かくつめていく作業に、子どもたちも最初から真剣な表情。「どこからやろうか?」の問いに、全員一斉に「最初からやりたい!」の声。やる気満々です。


10:30
オープニングの入場シーンからのリハーサルが始まります。
お店屋さんの名前やイラストが入った旗を手にして、子どもたちが意気揚々と入場……と行きたいところですが、なかなかうまくいきません。

「旗が遊んでないよ〜〜」

伊藤さんの声かけに一生懸命応えようと、旗を動かす子どもたち。でも、大きな旗が扱いづらいのか、どうもいい動きが出てきません。

「旗はね、振ろうとせずに、こうやってこうやって踊って欲しいな。まずは自分でどうやったらいいかイメージしてみて」

伊藤さんが実際にやって見せながら導くと、子どもたちの顔に輝きが戻ってきました。子どもたちは、いいものを見て、その中で表現の可能性を知ってゆくんですね。


前半部分では「巣鴨のダンス」(!?)や団子作りを身体で表現したりなど、商店街の雰囲気が遊び心一杯に描かれています。さすがお年寄りの町・巣鴨だけあって、みんなおばあちゃんの歩き方にこだわっています。「おせんべえ屋さん」「お茶屋さん」「うなぎ屋さん」などの店が次から次へと移り変わって、まるで観ている側もお散歩気分。稽古とはいえ、なかなかの出来栄えですね。


11:00
「今度はこの続きです。イスを使ってやります」

子どもたち1人1人に場所の指示をして、今度は巣鴨のゆるやかでホッとする空間作りに挑戦。イスを持って、センターにそっーっとそーっと集まります。決して音を立ててはいけません。

「向かいの人と目を合わせてイスを置くよ」

ゆっくりのリズムはみんなの空気を1つにしていきます。でも、どうしてもムズムズと動きたくなってしまうようで、ゆっくり動くこと、止まること、みんなで息を合わせることがなかなかできません。

「あ!音がしたよ〜〜、もう一回」

伊藤さんは、いい空気ができるまで、根気強く何度も何度も行います。なかなか上手くいかずにイライラしてしまう子どもがいても、いい表現になるまで伊藤さんは首をタテにはふりません。その妥協のない姿勢には、子どもたちにいい作品を創って欲しい、その面白さを発見して欲しい、という熱意があふれています。

何度も繰り返すうちに、子どもたちはアタマではなくカラダで動きの面白さに気づいてくるようです。何よりも、自分たちで取材して創っている作品。それが彼らのイメージを1つにしていったのでしょう。子どもたちはようやくその魅力を理解して動きだし、舞台上の空気も見違えるように良くなってきました。

「うん、いいよいいよー!それそれ!」

伊藤さんからのOKに、ホッと嬉しそうな子どもたちの表情が印象的です。


11:35
イスを使った後半は、とても演劇的なシーン。
「イスに座って、取材したとき思ったことや感じたことをイメージしてみて。言葉でもいいよ。“お団子おいしいよなー”とか“巣鴨っていいなあ”とか。何かセリフを頭に思い浮かべながらぼーっとしてみよう」

イメージは深呼吸しながら行います。それぞれの子どもたちが、舞台上でたった一人の時間を過ごすような感じで、何をするわけでもなく、ひたすらイメージの世界へ。

「みんな何もしていないと思うだろうけど、すごく良いよ!」

子どもたちのリラックスした表情はリアリティがあり、独特の空気をかもし出し、とてもユニークで奥深い表情。じっと見つめている伊藤さんも手ごたえを感じている様子です。

集中すること2時間以上。
ようやくお楽しみのお弁当タイム。
みんなお腹はぺこぺこです―――。


12:50
午後の稽古は、先程の続きから。
イスに座ってイメージするというアクションを、今度は先ほどとは違うポジションで行います。子どもたちは好きな場所へ移動し、それを元に伊藤さんがさらに細かいポジションを指示。移動はもちろんそっと、ゆっくりと……。

人が動くことで、空間の時間がゆっくりとながれ、町の風景をいろいろな角度で観ているような気持ちにさせてくれます。


13:30
「では、今日創ったイスのシーンを通してやってみよう」

このシーンでの注意点は……
音を立てないようにゆっくり移動すること
みんなで息をあわせること

これは、みんなが取材してきた「巣鴨」の空間を創るため、絶対に守らなくてはいけないルールです。

いざ、リハーサル。
途中までは緊張感を持ってうまくいっています……。が、ラストの大詰めで、1人の子どもが、本当は歩いてはいけない場所をズイズイっと突っ切ってしまいました!

「はーい、今のダメですよー。OKになるまで何回でもやるからねー」と伊藤さん。

今度は、イスを離すタイミングを間違えてしまった……!

「あ、今の違うよね、もう一回。これじゃ、あと150回くらいやるかな?」と伊藤さん。

伊藤さんの容赦ないダメだしに、子どもたちの顔にもピリピリとした緊張感が漂います。

何度も何度も繰り返されるきっかけのセリフ。

子どもたちは何度も繰り返されるシーンの中で、お互いに集中力を何度も高めあいながら、しがみつくように演技します。失敗する度に、真剣さが生まれ、チームワークが高まってゆく様はドラマティックです。伊藤さんも、祈るように強い視線を送り続けます。大人が真剣にならなければ、子どもたちも真剣にならないんです。

そして、ようやくノーミスでリハーサルを終えると、「やった―!」の大歓声。

とことんこだわって、粘ってやる―――。
伊藤さんの厳しさと真剣さに満ちた情熱的なリードに、子どもたちも、モノづくりの大変さと楽しさを感じとっているはずです。

14:00

いよいよラストシーンの稽古。最後は、全員が舞台上の隅々をそれぞれのおばあさん歩きで歩いて、雑踏のイメージを創ります。町の中でいきいきと存在する “自分”を、手を振ってアピールする、というような、とても素敵なシーンです。

「これでラストだから、頑張ろう!」

お互いの名前を呼び合ったりするちょっと複雑なシーンなので、ここでも細かな段取りが必要になりますが、伊藤さんは子どもたちを励ましながら、細かなところにもこだわって、より自然で輝くような表現を引き出していきます。子どもたちも集中力を切らさないように、最後までくらいついています。

そして、無事にエンディングまで完成……。
明日は日中に最後の稽古を行って、夜はいよいよ本番です。

それにしても長時間の濃厚な稽古、子どもたちはみんなよくがんばりました!ここまで厳しい稽古できたのは、子どもたちの胸の中にいい作品を創りたいと思える気持ちがあったからこそです。

伊藤さんもまた、そんな彼らをどこまでも信頼しているからこそ、創作に対する真剣さをぶつけることが出来たのかもしれません。

【追記】
本番は地域の方たちもたくさんいらしてくださって、大盛況だったとか。ん〜ぜひ観たかったー!

■NPO法人「芸術家と子どもたち」ホームページ  http://asias.at.infoseek.co.jp/
■NEC社会貢献活動ページ http://www.nec.co.jp/community/ja/edu/artedu.html


2005/04

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