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〜全国の演劇ワークショップ体験リポート〜
 




「一つ一つ丁寧に“ドラマ”をつむごう!」

キンダースペースワークショップ2005 Vol.27「メロドラマの向こう側」
講師/原田一樹(演出家)
2005年5月17日(火) キンダースペースアトリエ




今回は、劇団キンダースペースのワーックショップにお邪魔させていただきました。
こちらのワークショップは、俳優が演劇表現する上での根本的なテーマである「ドラマ」の仕組みを探ることが最大の目的。登場人物の深い人間関係など、ドラマを作り出す要素を浮き彫りにして表現するというもので、毎年3回ずつ行なわれ、今年でなんと9年目!
これほど長く継続されているワークショップは、日本では珍しいのではないでしょうか。早い段階から演劇ワークショップの必要性を感じて活動する姿勢に、演劇文化を根元から盛り上げてゆこうという強い意志が感じられます。

メイン講師は、同劇団主宰の演出家・原田一樹さん。劇団の演劇ワークショップ以外にも、子どもから大人まで、たくさんの方に向けたワークショップを全国で展開しています。

今回のテーマは、「メロドラマ」。5つの戯曲から男女のドラマティックなシーンを抜き出し、脚本を読み込んでいくことで濃厚なドラマを発見。さらに、最後には“作品”として発表します。取材させていただいたのは、全8回のプログラムの7日目。会場となるキンダースペースアトリエでは、30代女性を中心とする6名の参加者の皆さんが、クライマックスとなる明日の発表会に向け、真剣な表情で練習を繰り返しています。
ここで、これまでの流れを振り返ってみましょう。

1日目は、原田さんのオープニングトーク。「演劇とはどういう芸術なのか?」「演劇はいつ生まれたのか?」「演劇はなぜ面白いか?」という話題から始まって、今回使う戯曲とテーマについての説明と解説がメイン。

2日目は、ストレッチや発声などの基礎訓練。そして、今回の戯曲が配られ、主人公の心境やストーリーのバックボーンなど、原田さんを中心にした読み込み&ディスカッションが行なわれました。

3日目からは、実際の演技を通じて、相手役とのコミュニケーションや登場人物の心の動きを感じてゆき、徐々にシーンをカタチにしてゆきます。ディスカッションを繰り返しながら、一つ一つ丁寧に創り上げてゆく作業です。

こうした流れを受けて、いよいよ発表会前日。それまで手にしていた台本を外し、本番を意識した本格的な稽古が行なわれます。
19:00

「さて、はじめましょうか」
アシスタントの瀬田さんの掛け声とともに、まずはストレッチ開始。
たっぷり30分、念入りに身体をほぐしながら、心もリラックスさせてゆきます。

続いて、発声練習。アシスタントの斉藤さんの声にあわせ、腹式呼吸の練習から始めます。

「7秒すって、3秒止めて、14秒かけてはいてー」

呼吸からハミング、発声、空間を動き回りながらの発声、実際に舞台に立ってセリフを話すような声へと、声を徐々に温めてゆきます。

こちらもしっかり30分。とにもかくにも、基礎をキチンとおさえたウォーミングアップです。

1時間にわたってみっちりとウォーミングアップした後は、20分の休憩……。ところが、発表会を次の日に控えているので、参加者の皆さんは誰もが台本を片手に、自主練習を続けています。

ほんの少しの時間も惜しんで相手役と何度も読み合わせをしたり、ディスカッションをしたり、原田さんにアドバイスを求めたり。

クリエイティブなエネルギーに満ちた時間と空間に、観ているこちらもいつの間にかワクワクしてしまいます。



20:30

いよいよ原田さんも演出席に座り、本番に向けた創作作業へ―――。

今回、発表会で上演されるシーンは全部で5つ。いずれも、男女の関係をそれぞれのシチュエーションで描いた内容です。練習時間は1作品につきわずか20分。少しでも練習の時間を大切にしようと、集中力をもって臨みます。

その中のシーンを一つ紹介しましょう。

【父親と娘】 娘が帰ってくると、父が誰かと電話している……。電話を切ってからの父の不審な言動が気になる娘。娘は、それを父に問い詰める。と、娘が恋人と逢っていたことを、知人から電話で知らされていたという。「お茶を飲んでいただけ」と説明する娘と、恋人との関係を過剰なまでに疑う父。父と娘のすれ違いのドラマ。


この複雑なシーンの演技に、2人の参加者がチャレンジします。

しかし、年齢もさして離れていない男女の参加者が、演技で親子の感情を表現するのはなかなか難しい……。 どうしても娘と彼氏が逢っていたという父の怒りの表現が、同年代の男の嫉妬のように見えてしまいます。


「もっとお互いの、このシーン以前の関係をきちんと踏まえて、あとは感じられることを大事に会話をしてみよう」

父娘の間でやり取りされる感情と、恋人の間に流れる感情は、確かに全く別のもの。これまで親子として暮らしてきた長い年月や、その中で築き上げられてきたお互いの関係、それぞれを思いやる気持ちなどをつむいでゆくと、ちょっとしたやり取りすらも、細かな感情の変化に富んでいるはずです。セリフだけでその役の感情を追っていては、親子がこれまで辿ってきた道や、言葉の裏にある深い感情にまで気づいて演じることはできません。

演出家からのヒントを得て、再び演じる2人。少しずつ、少しずつ、父と娘の関係がつむぎ出されてゆきます…………。
この作品のほかにも、バーで出会った男女がお互いの悩みや葛藤をぶつけ合いながら惹かれあってゆくシーンや、芸者とその夫の複雑な心のすれ違いなど、どれもなかなか濃厚なシチュエーション。

台本に書かれているセリフ、ト書きなどからうかがいとることのできるバックボーンをどれだけイメージできるか?それを踏まえて表現することで、芝居に深みとリアリティが生まれ、より濃密なドラマが表現できます。

でも、「言うは易し、行なうは難し」で、そのように演じようとしても、なかなか難しいものです。集中力と想像力をフル稼働させ、何度もイメージトレーニングをしながら、じっくりとつむぎ出してゆかなければいけません。

「間も大切にしてね」
「あせらなくていいから、じっくり演じてください」
「今感じたことと、さっきやってたことの違いを感じて」

原田さんはその一つ一つに理解を促し、イメージを刺激し、細かい感情のひだや、会話の裏に流れる深いドラマを導き出そうと、5つの男女のドラマを丁寧に、かつ的確に導いてゆきます。

何度も繰り返されてゆくうちに、最初には見えなかった感情やリアリティなどが、参加者の方々の演技の中に少しずつ芽生えてゆきます。ここまでくると、演じることが面白くなってゆくんですね。演技に夢中になっている参加者の1人1人の目が、どんどんと輝いてゆきます…………。

22:00

ワークショップ終了時間を過ぎても、発表会を明日に迎えた参加者の皆さんの熱は冷めることなく、練習はまだまだ続いています。演劇創りの基礎を大切にして、その面白さの“根元”を、時間をかけてじっくりと理解し実践できる8日間。

演劇が「人間」と「人間関係」の魅力を表現する芸術であるという、いわば演劇哲学を、腹を据えて伝えてゆこうとする劇団キンダースペース。こうした強い信念があるからこそ、9年という長い時間にわたって継続することができるのですね。

心の深いところで感じる人間の面白さと可愛らしさ、ドラマの中にちりばめられた緻密さと不可解さ……。演劇って、「人間」の魅力を楽しみながら、「人間」が好きになる芸術なんだなってことを改めて感じさせてくれるワークショップでした。


■ワークショップ終了後、メイン講師の原田さんにお話を伺いました。

Q.最近、多数行なわれるようになったワークショップ。そこにはどんな可能性を感じていますか?

A.いろいろなワークショップがあっていいと思うんです。基本的なところで、演劇の楽しさを改めて感じることができるし、演劇とはなにか?を問いかけることもできる。ただ、間口が広がる中で、どういう方向に導き出すかという方法論を、ワークショップリーダーは必ず持っていなければいけないですね。その責任は重要です。

Q.原田さんがこれから行なってみたいワークショップはありますか?

A.ワークショップリーダーの人材を育てるワークショップをやりたいね。演劇で食べていけないということも打開したけど、新しい感性や方法論を持った力のある人材を育て、お互いに刺激を受けながら、新しいものを生み出して行きたいですね。

               (劇団キンダースペース代表 原田一樹さん)

※劇団キンダースペースホームページ http://www.kinder-space.com/index.html


2005/06

ワークショップ・レポートでは、今後も全国のさまざまなワークショップを取り上げてゆきます。ご意見ご感想、また「うちのワークショップも取り上げて!」「こんなワークショップを知りたい!」などのご要望がございましたら、こちらまで、どしどしお寄せくださ い。お待ちしています。