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〜全国の演劇ワークショップ体験リポート〜
 



「“ことばのないコミュニケ-ション”を遊ぼう!」
人形劇&身体表現ワークショップ/庄崎 隆志 (オフィス風の器代表)

2005年7月27日(水) 中央区公共施設



今回は、創設以来、座長・役者として25年間在籍した「デフ・パペットシアター・ひとみ」を今年退団し、新たに「オフィス風の器」を創設して独立した庄埼隆志さんのワークショップを取材してきました。

聴覚障害を持つ庄埼さんは、“ことば”に頼らず、身体表現や人形などの視覚表現を生かした舞台を数多く創作し、これまで海外公演を含む750ヶ所2000ステージというキャリアを積み重ねて、国内外から高い評価を獲得。今年3月の「デフ・パペットシアター・ひとみ」退団後は、一人芝居の創作やワークショップインストラクターなど、ジャンルにとらわれない自由な活動を展開しています。

今回のワークショップを主催するのは、クリエイティブ・アート実行委員会事務局ミューズカンパニー。93年より毎年『サマー・アート・スクール』と題して、「障害のある人とない人が共に創造する新しいアートのかたちを楽しもう!」をテーマに、様々なワークショッププログラムを実施しています。
聾俳優である庄埼さんと、ことばを超えた人形と身体の楽しい表現アート。さ−て、どんな内容になるのでしょう?

取材をさせていただいたのは、2日間行なわれたプログラムの後半。ワークショップ参加者は、教育機関や福祉機関に勤務する方々など9名、その中には、耳の不自由な小学生の男の子も含まれています。

14:00

「ガサガサッ」

ん?何かなと思い、庄埼さんのほうに目をやると、なにやら紙で作ったものに手に差し込んで動かしています。よく見て見ると、なるほど、ニワトリの人形のようです。

大人ばかりの参加者の中でちょっと緊張気味の男の子を、庄崎さん操るニワトリがお出迎え。彼の顔が笑顔になると、まわりからも「ふふふ」と笑い声が聞こえてきます。

そんなあたたかな雰囲気の中でワークショップは始まりました。

14:10

まずはウォーミングアップ。

人形劇を操るためには、何よりも“手”の表現が大切です。庄埼さんの巧みな動きを真似るようにして、手首、腕、肩と、順番にほぐしていきます。

表情豊かでユーモアたっぷりの庄埼さんは、ウォーミングアップの時も笑顔を絶やしません。その表情に、参加者の方々の顔も知らない間に笑顔に…。身体だけでなく、心や気分もウォームアップしてくるみたい。
14:20

今日使用する“仮面”の製作に入ります。
手話通訳の方を交えながら、仮面の作り方と、仮面での表現方法の説明を聞きます。

仮面には、男女の別があります。
四角いカタチをした仮面が男性で、楕円が女性。この2種類の型を選んだら、新聞紙に貼り付け、型どおりに切り抜いていきます。さらに、男性の面には男らしさを、女性の面には女性らしさを、自分の好きなように装飾して、オリジナルの仮面を作ってゆくのです。

ことばをしゃべらない仮面を持って、手をはじめ、身体全体で表現していきます。

まずは庄崎さんがお手本を見せてくれました―――。

仮面の目の部分に開いた2つの穴から両手を出して、右と左の目の表現をします。手の向きで視線を表したり、指でまつげの感じを出したり。
もちろん手だけではなく、身体全体を使って自由に表現してOK。庄崎さんのお手本は、どこまでも自由で愉快です。遊び心満載のダイナミックで繊細な演技に思わず拍手!

さあ、今度は皆さんがチャレンジです。

仮面の創作時間は、静かな時間が流れていきます。一方の庄埼さんも、参加者の方々と一緒になって黙々と仮面創作に集中。紙を切る音や、ビリビリと破る音だけが会場に流れます。そんな空気の中で、1人1人の集中力が力強く伝わります。


参加者の方々が作っている仮面を、こっそり覗き見しました。すると、男性の仮面には髭を付けてみたり、女の子の仮面には髪の毛をカールさせてみたり。張っては眺め、さらに紙を重ねてみたり、短くしてみたり、それぞれがいろんなこだわりを盛り込みながらオリジナルの仮面を作り上げてゆきます。完成した仮面は、1つとして似たものがありません。それぞれがとってもユニークで、楽しい仮面ができました。思わずふきだしてしまいそうなコミカルな顔も!

「男の人は、必ず腕時計を作ってくださいね」
どうやら、この後の仮面劇に必要な小道具のようです。

「あと5分です」
そう言うと、庄崎さんはマジックボードに向かいました。

   おとこのことおんなのこの出会い
   待ち合わせ

これが今日の仮面劇のタイトル。いよいよ出来上がった仮面を持って劇の発表です。


14:50

全員イスを持って一列にならびます。

「ちょっとやってみますから、見てて下さい」

これから参加者みんなで演じる『待ち合わせ』のストーリーの流れを、庄崎さんが一人芝居で見せてくれました―――。
1. 男が女を待っている、が、なかなか来なくて待ちくたびれている
2. 男はだんだんイライラして怒ってくる
3. やっと女はやってきて謝るが、男は許さない!
4. いろんな手を使って許してもらおうとする女。でも男は許してくれない
5. 女、男の態度に逆ギレ。男は女に蹴飛ばされてしまう
6. 男、一人落ち込む……
7. そこへ犬がやってきて、男へオシッコを引っ掛けて行ってしまう
8. さらに凹む男。哀しい。すると、女が戻ってくる
9. 女、男をなぐさめる。男、女を許す。仲直りでめでたしめでたし

シンプルな構成ながらも、身体を自由に使うことで、男女の仮面が生身の人間を超えるほどの豊な表情を持ち始め、温かくも可笑しな作品になりました。
それにしても庄崎さんの表現力の素晴らしさには誰もがため息をもらすほど!簡単な面なのに、これほどまでにいきいきとした命の息吹を吹き込むことができるのですね。

それでは、即興でチャレンジです。男女のペアを組み替えながら、延べ6組が演じます。




通訳の方も飛び入り参加。庄崎さんとの
息もぴったり!
打ち合わせなしの即興劇のはずなのに、それぞれのチームの表現は、どれもがアイディア満載でびっくり。

怒りのあまり鼻息が荒くなってしまう男の様子を、鼻の穴から指を勢いよく出して表現したり、イライラした男が自分の髭(新聞紙でつけたもの)をちぎって食べてしまったり、いろいろな表現が出てきました。

それは、庄崎さんがワークショップ中にいつも率先して見せてくれる「遊び心」や「自由な表現」を、全員が理解しているからこそ、これだけの表現があっという間に出てくるんですね。

今回のワークショップには手話通訳の方がついていましたが、庄崎さんは、ことばで説明するのではなく、身体や表情などを使って、自分で実際にやって見せることで参加者の方々とコミュニケーションしながら、皆さんの発想を引き出していたように思います。
そして、参加者の皆さんも庄崎さんの想いを感じて理解しているからこそ、安心して自由に表現できるのです。ワークショップリーダーと参加者の信頼関係はホントに重要なのです。


そうそう、即興劇を演じるうちに、男も女も互いに優しくてついつい仲良くなり、犬が登場する前に2人が仲直りするストーリーになってしまったペアが数組ありました。
「いいですよ。ちゃんと二人の男女のコミュニケーションがしっかりできて、その上での結末だったので、全然ダメじゃないです」と、庄崎さん。

もとの構成よりも平和でほのぼのしたストーリー。観ているこちらも優しい気持ちになって……こういう予定外も面白いですよね。


15:40
全員の発表が終わり、参加者同士がお互いの見事な即興劇に拍手!

すると、ここで庄崎さんが、「K君は見ていないので、午前中にやった“ロミオとジュリエット”をやります」と、一人だけ午後から参加した小学生のK君のために、午前中の大人向けワークショップで創作した作品を演じてくれることになりました。道具は、紙で作られたロミオとジュリエットの人形。紙ピストルと紙コップ。そして大きな一枚に貼り合わせた新聞紙。


何もない空間。音のない、静かな世界。
庄崎さんはここに、役の息遣い、感情、空気の色、温度などの舞台の世界を、どこまでも自由な身体と溢れるような感情をフルに使って表現します。この場に居合わせる誰もが、庄崎さんが繰り広げる世界に引き寄せられるようにして魅入ってしまいます。

「おわりです」

パチパチパチ!小さな舞台に拍手喝采。
本当にステキなパフォーマンス。そしてほんの5分残った時間を使って「サービスです」と、『チェロマイム〜海の世界』という手の表現を駆使したパフォーマンスを見せてくれました。何もない世界には、無限の表現の可能性があるということを、目の前で教えてくれる庄崎さん。その表現はとてもエキサイティングで、どんなことばよりも説得力を持って心に刻まれます。

“ことば”の少ない今回のワークショップには、無駄のない確かなコミュニケーションのもと、自由で豊かな表現力が作る楽しい世界を体感しながら、自分自身でも体験できるとっても素敵なワークショップでした!


■ ワークショップ終了後の庄埼さんにお話を伺いました。

Q 全国でたくさんのワークショップをされていますが、いつも参加者の方々に、どんなことを伝えたいと考えていらっしゃいますか?

A  ご要望にあわせてさまざまですが、とにかく「楽しい」ってことを伝えたいです。

最近は、「ひきこもりがちな中学生も増えているので、そんな子どもたちのためにお願いします!」なんてSOSをされることもありますが、僕はみんなを救うスーパーマンにはなれないけど、たくさんの楽しいことを伝えられる。子どもも大人も問わず、みんなで楽しいことをして、そんなストレスをなくしてもらいたいんです。

ただ、どうやって楽しませようか?というのが僕のストレスですけど(笑)。

※オフィス風の器 ホームページ  http://www.geocities.jp/kaze_no_utuwa/



2005/08

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