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〜全国の演劇ワークショップ体験リポート〜
 



触れ合って、感じあって〜赤ちゃんとお母さんのワークショップ
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大沢 愛(NPO法人アートインライフ)

2005年10月12日(水) 新宿区公共施設


今回のワークショップレポートは、0歳児から参加できる「親子で楽しむおはなしあそび」を取材させていただきました。


こちらは、新宿区が行っている地域家庭教育推進事業「親子であそぼう!」の一環として、NPO法人新宿子ども劇場が企画しています。全6回のプログラムの中には、くわえぱぺっと劇場の人形劇上演や、“子育てを楽しむための秘訣”と題した母親対象のプログラムも含まれていて、わらべ歌や絵本の読み聞かせなど、演劇表現の前段階となる表現遊びを通じて親子のコミュニケーションを深めていく内容です。

講師の大沢愛さんは、現在、NPO法人アートインライフのメンバーとして、全国各地でドラマによる表現教育を実践されています。コンセプトは、“アート(芸術)を特別な人のためではなく、生活の中で、人生のあらゆるシーンで、すべての人の生きる力に”。専門性の高い表現教育を目指して、舞台表現者や教育者などの様々な専門家と連携しながら、表現教育の研究・実践を行っています。

6回のワークショップは、それぞれ午前中に0〜3歳児と保護者を対象としたクラス、午後には3歳から未就学児と保護者を対象としたクラスが行われ、今回お邪魔したのは4回目の午前クラスです。

乳幼児の表現ワークショップは、取材する私もはじめての体験。かわいいベビーたちは、どんな表情を見せてくれるのかな?楽しみです!
11:00

会場の中央には、キルティングのような柔らかいマットが敷かれています。このスペースに座りながら、ゆったりとしたやさしい雰囲気で行なわれます。

4回目ということで、子どもたちもお母さんもすっかりこの空間に慣れているみたい。
今日の参加者は、1歳半〜3歳の子どもたち8人とお母さん7人の15名。時間になると、講師の大沢さんもキルティングの上に座りました―――。
「このあいだのお芝居、どうだった?」とやさしく語りかける大沢さん。
先週は、くわえ・ぱえっと劇場による人形劇「ともだちはブブとトト」の鑑賞会でした。子どもたちにとっては、きっとこれがはじめてのお芝居。「面白かった!」と子どもたちが答える中、大沢さんからお母さんたちに向けて、このワークショップの意義を改めて伝えました。

「前回、子育てを母親自身が楽しむ秘訣は、肯定感と客観性にあるのでは?という話をしました。で、そのための具体的な要素として、ぜひユーモアのセンスを持っていたいものだと思います。“わらべうた”には、人間が生きていくために必要なこと、生活の知恵、躾といったものをユーモアたっぷりに伝える要素が詰まっています。」

このワークショップではいろいろなわらべ歌が題材として取り扱われますが、そこには、母と子が楽しく触れ合いながら学べるような昔からの知恵とユーモアがいっぱいに詰まっています。

まずはきれいな色のやわらかい布がお母さんに配られて、「かくれんぼの歌」。

♪カーク、カーク、カクレンボ・・・

お母さんは、体のどこかに布を隠し、子どもたちは、お母さんに触れながらその布を探します。
「あれ?どこかな?どこから出てくるかな?」胸、おなか、足、いろんなところから布が出てくると、子どもは嬉しそうにお母さんにタッチ。

他にも、「おやすみなさ〜い」の声とともに布を子どもの顔の前に広げてカーテンにすると、不意をついて「ばあ〜」と布をめくります。「いないいないばあ」によく似た遊びですね。

子どもはとにかくお母さんが大好き。そんなお母さんと、遊びの中で思いっきり触れ合えることほど、うれしいことはありません。緊張気味だった子も、お母さんと身体を触れ合えることでリラックスしてきたようです。そのうれしそうな笑顔に、見ているこっちもとろけそう……。

次にちょっとした“ごっこ遊び”の内容がはいったもの。

手で作ったいろんな動物を、鳴きまねをしながら、指から腕へ、さらには身体を伝って、最後はこちょこちょっとくすぐるもの。

そういえば、昔こんなわらべ歌を母に歌ってもらったことを思い出しました。

♪いっぽんば〜し、こ〜ちょこちょ。たたいてつ〜ねって。
  階段登って…………こっちょこちょこちょ!!!

知らず知らずのうちに、自分もお母さんと遊んでいたんですね。

大沢さんが紹介してくれたあそびは、動物の種類を変えることでバリエーションが豊かになるのはもちろん、なにより、いろんな動物の鳴きまねがとっても面白いんです。

例えばこんな感じ―――。

♪ねずみ、ねずみ、どーこいきゃ、わがすへ チューチュクチュ(ここをいろんな鳴声に変える)、
  ねずみ、ねずみ、どーこいきゃ、わがすへ とびこんだぁ!(くすぐる)

子どもたちの好きな動物でいろいろな動物にチャレンジしていきます。

「あすかちゃんは何が好き?」
「きりんさん」
「きりんさんは……どうやって鳴くのかな(笑)。では、鳴かずになが〜いおくびを伸ばして、遠くを見ることにしようか」

うしは“モー”、ねこは“にゃあ〜”、電車は“ガタンゴトン!”、亀は甲羅にもぐりこむ様子を。
子どもたちは、多くの動物の真似をすることで、自然といろいろな表現にチャレンジできます。家では見られないおしゃべりや動きに、お母さんたちもびっくりした様子です。

11:35

「ちょっと、ごろ〜んしよう」

子どもたちをマットの上に寝かせ、再びお母さんの身体と触れ合わせる遊び。子どもを「雑巾」に見立てて、歌に合わせながら、いろいろな手のしぐさで触れてゆきます。

雑巾を“チクチク”縫うように子どもの体を“ツンツン”と突付いたり“、ご〜しご〜し”とさすったり、“ぎゅーぎゅー”と絞ったり。

他にも、わらべ歌にあわせながら、『もみすり』(子どもとお母さんとが向かい合わせに足を伸ばして座り、両手をつないでギッタンバッコン)や『ジャンプ』(ぴょんぴょん跳ね回る)、『おんぶ』(親が子どもを背おいリズムに合わせて回る)など、ふれあいながら楽しみながら、いろんな動きや思い切った表現へ。

いざ親子でスキンシップをと思っても意外と難しいけれど、このようなごっこ遊びを使えば、自然と楽しく触れ合える。昔と違って今はそういう遊びになじみがないぶんだけ、子どもとのコミュニケーションをどう取って良いか分からないお母さんも少なくないようですが、わらべ歌はそれを全てスムーズに導いてくれます。とってもシンプルだけど、奥深い。そんな見事なプログラムです。

ひと通りわらべ歌で遊んだのち、大沢さんは絵本を取り出しました。
題名は『もこもこもこ』。谷川俊太郎の絵本です。

絵本には、空と地面の絵だけ。「もこ」は地面の一部の盛り上がり。それがページをめくるごとに、さらに大きくなったり小さくなったり。たまに「にょき」、そして最後は「シーン」と静まり返ったかと思うと……「もこ!」と再び出てくる。とても不思議な絵本です。

言葉は、「もこ」とか「にょき」とか「ぽろり」という擬音語ばかり。子どもたちはあっという間にこの世界に引き込まれていきます。先ほどまでにぎやかだった子も、大沢さんにかぶりついて、静かに集中してその世界を楽しんでいる様子。
子どもたちの熱狂的なリクエストに答えてもう一冊。

今度は、五味太郎の『いっぽんばしわたる』。今度は読んだあと、みんなではしを創って渡ってみることになりました。

「ここに一本橋があるよ。順番に渡ろう〜」

お話のようにウサギやヒヨコになって、見えない橋を想像して渡っていきます。そしてラストは、橋から落ちて「どぼ〜〜ん!!」。元気よく落っこちることができたみたいですよ。

「さよならあんころもち」の歌で今日のワークショップは無事終了。子どもたちもお母さんたちも、たっぷり触れ合ってたっぷり楽しめて、とても幸せな表情です。

わらべ歌やお話の世界に入って、想像力を膨らませながら、自由に動いたり、お母さんの身体にたくさんタッチしたりで、子どもたちは大満足。ワークショップが始まる前の表情が、みるみる変わってゆきました。最初はお母さんから離れられなかった子どもたちも、たった一時間で、自由な好奇心が育っていく様子が、手に取るようにわかりましたよ。

『表現遊び』のワークショップには、演劇の要素がいっぱいに詰まっています。それがこんなふうに子育てに役立つエッセンスを持っているということを知ることができる貴重な体験となりました!


■ワークショップ終了後の大沢さんにお話を伺いました。

Q今回のワークショップの目的は?

A 親子のコミュニケーションですね。そこではまず何よりお母さんがリラックスして楽しむことが大切。乳幼児期の子どもたちは、空気や匂い、音、明るさ、そして母親の表情にとても敏感。全心身の感覚を研ぎ澄ませて、世の中のあらゆる出来事と日々出会っているのです。わらべうた遊びに込められる様々な要素の中でも、特に「感じ取る力」を、学校に入る前のこの時期にゆったり育てたいと思います。私のわらべうたの師匠は、遠野地方でわらべうたを伝承されている「阿部ヤヱ」さん、そして山の音楽舎でわらべうた遊びの実践をされている川中美樹さんです。「人間の何を育てるのか?」という点で、自分が携わっているドラマ教育とも通じる部分が多々あり、益々わらべうたの魅力に取り付かれているこの頃です。

Q大沢さんは、小学生を始めに幅広い年齢層の子どもたちにも、ドラマを用いた表現教育を行なっていらっしゃいますが、演劇と教育との関わりについて、どのように考えていらっしゃいますか?
A 演劇を教育や表現活動に取り入れることの最大の役割は、感動する力と問題解決の力を養うことにあるのではないかと思います。
「もし〜だったら?」と想像することから、日常生活の中では経験できない「誰か」になったり、「何か」にチャレンジしたり、そこで思わぬ「事件」に遭遇したりすることができるのです。「もしもの世界を、真剣に生きてみる」そこで生まれるコミュニケーションや、困難を乗り越える力、仲間と共感共有する力は、必ずや実際の社会で生きていく力になるものと思います。
また、演劇を含む「アート」には「感動」つまりこころを揺さぶる力があります。これが人間の行動の原動力となり、感じる力、考える力、気づく力を活性化することができるのです。子どもたちには、自立して生きていく糧となる感動体験をたくさんして欲しい。演劇にはそんな機会を子どもたちに提供できる可能性が大いにあると思います。

左:アシスタント ソン・ジュンヒョンくん
中央:講師 大沢愛さん
右:アシスタント 釘本光さん   

アート・イン・ライフ  ホームページ  http://www.artinlife.jp/life/life_index.htm


2005/11

ワークショップ・レポートでは、今後も全国のさまざまなワークショップを取り上げてゆきます。ご意見ご感想、また「うちのワークショップも取り上げて!」「こんなワークショップを知りたい!」などのご要望がございましたら、こちらまで、どしどしお寄せくださ い。お待ちしています。