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アメリカの文化政策vol.1 〜上手に寄付金を集める方法〜
アメリカの芸術援助は、民間主導型と言われています。現に数字を見れば、公的助成はアメリカの芸術活動全体の財源のたった1割にしか満たないようです。つまり、残り9割は個人や企業、NPO法人などからの寄付金でまかなわれているわけです。 これだけを見れば、「アメリカは芸術を愛する素晴らしい国だ!」と思えますが、実は必ずしもそうではないようです。ちょっと意地悪な言い方をすれば、芸術への寄付は「税金対策」だったりもするのです。 ●マテリアル・フォー・アーツ アメリカでは、個人や企業が芸術団体などに寄付をすることで、その寄付金に見合った税金控除が行われます。どうせ税金としてごっそり取られてしまうのであれば、寄付することで何かの役に立てたほうが嬉しいですよね。 その活動の一例として、ニューヨーク市の文化部(DCA)と清掃局が共同で行っている「マテリアル・フォー・アーツ」というプログラムがあります。これは、不要になった一般家庭の家具や、企業の抱える大量の不良在庫などを芸術団体に無料で提供するというものです。 ゴミを提供したい人の家まで清掃局が引き取りに来てくれるので、提供者への負担は一切ありません。いわゆる、ゴミのリサイクルとでも言いましょうか。こうして提供した人はゴミの価格相当分を市に自己申告し、「DCAへの芸術寄付金」とみなされて税金から控除されるという仕組みになっているので、どうせ捨てるのであれば寄付しようという思うのは当然です。 芸術団体にとって、家具などの道具をレンタルすると日数によってかなりの値段がかかりますし、作るにも大きな手間がかかります。一度使ったら捨てる運命にある舞台装置も少なくありません。どこの芸術団体も、制作費はなるべく抑えたいところ。道具にお金を大量にかけることは、資金を圧迫してしまう恐れがあるので、DCAから無料で家具やいろいろな物品をもらえるとなると大喜びです。 本当に、うまい仕組みですよね。 ●マッチング・トラスト 「マテリアル・フォー・アーツ」プログラムなどから、アメリカの助成は民間主導型とはいいながらも、その流れを作ってくれているのは確実に連邦政府や州、市、郡などの公的機関であることはお分かりいただけたかと思います。 アメリカは、地方分権型の国家です。地方の行政は地方に任せるというやり方ですから、芸術の助成に関しても地方によって様々です。そして、各地方を束ねる存在として連邦政府が存在するように、芸術面においても「全米芸術基金(NEA)」という大統領直轄の独立機関が存在します。 1996年以降、NEAに直接助成を求めることの出来るのは非営利団体のみとなってしまいましたが、それ以前は芸術家個人や団体も直接申請することが出来ました。この時に使われていたのが「マッチング・トラスト」という方法です。 「マッチング・トラスト」とは、NEAの助成だけに頼るのではなく、NEAからもらった助成金と同額〜2・3倍の比率に“マッチする”寄付金を他からも獲得するように努力します、という条件の下で助成金を交付するという仕組みのことです。 この「マッチング・トラスト」によって、NEAの出した助成金1に対して、民間からはその11倍の寄付金を引き出す効果を生んでいたそうです。 つまり、寄付金を出す側からすると、どこのどんな団体だか分からないところに寄付するのではなく、連邦政府直轄のNEAが認めた団体に寄付するという安心感が、11倍もの寄付を集めるポイントになっていたのだそうです。 また、助成を受ける団体としても、1度でも「マッチング・トラスト」の条件を破れば次の助成はないわけですから、助成金にあぐらをかくことなく、自分たちのできる限りの営業努力、作品の質向上等へ自然と目が向いてゆきます。多くの団体の中から、自分たちの作品や活動が認められるように競争することで、全体のレベルアップにもつながったことでしょう。 これまた、うまいやり方です。 これらの活動を見るにつけ、「芸術の国・アメリカ」を生んだ政策に感心すると同時に、日本の助成の仕組みや、それを受け取る側との関係に大きな違いがあることに、ちょっとした不満を感じてしまうのでした…。 参考文献 ・効率文化施設職員のための制作基礎知識(出版:財団法人地域創造) ・文部科学省ホームページ: http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpad199301/hpad199301_2_074.html |
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(文・ O)2006/10/16
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