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各地の小学校で行われている演劇・表現の授業

演劇教育の実践と研究を進めている日本演劇教育連盟は、今月、新刊書『子どもいきいき表現−ドラマ・コミュニケーション−』を刊行する。これは、現在小学校で行われている演劇活動のようすを具体的にレポートし、その意義を示して、演劇教育をより広く普及しようというねらいで発行されるものである。ぜひ一読を勧めたい内容である。

目次を見てみよう。

第1章 出会いのコミュニケーション
出会いの場を演出する(東京/田部井泰)、表現から始まる新学期(東京/大垣花子)、1年1組ドラマの教室(東京/福田三津夫)

第2章 表現を楽しむ授業
劇あそびを楽しもう(埼玉/平井まどか)、身体表現を楽しもう(埼玉/伊藤行雄)、朗読・群読を楽しもう(大阪/内部恵子)、人形劇を楽しもう(静岡/中村明弘)

第3章 遊びから始める劇づくり
表現の芽を育てる(東京/大垣花子)、「支え合い」の劇づくり(神奈川/金子忍)、チャレンジ劇づくり(東京/大門高子)、教室が劇場に変わる(山口/廣本康恵)

第4章 総合学習としての劇活動
「生活科」の劇活動(東京/神尾タマ子)、表現のある教室一年間(埼玉/内田高志)、劇をつくる学校をつくる(山形/佐々木勝夫)

第5章 ドラマとしての表現教育
 ドラマとしての表現教育(埼玉/佐々木博)

1章から4章までの各論は実際に行われた授業や行事のようすである。小学校では毎日の生活のどんな場面で演劇・表現の活動が行われているのか、子どもたちの表現の芽を育てるためにどのような支援・指導がされているのか、たしかな実践の事例がいくつも紹介されている。

4月新学期の出会いは、子どもたちにとって期待と不安の時である。どんな先生かな、仲の良い友だちはいるかな、子ども同士、子どもと教師、その日から意識的な取り組みが行われている。そして1年間を通して行われる授業。低学年の「生活科」、中・高学年の「『総合的な学習』の時間」、国語科、等々の授業としての活動。あるいは学習発表会や学芸会、全校の行事としての活動もある。

実践の内容も、表現あそび、劇あそび、劇づくり、人形劇、朗読・群読など、さまざまである。

各論はそれぞれ独立した実践例であるが、全体として学校での演劇・表現教育のおおよそが見えてくるように構成されているが、一方また共通して読み取れることもある。

これらの授業や行事に、子どもたちの関心や興味をどうやってもたせ引き付けるか、動機づけ、気持ちの高まり、ひとつの劇を上演するまでのさまざまなくふうや留意事項、活動の計画の立て方。またすべてが難なく進められ、うまくできあがるのではけっしてなくて、試行錯誤や思惑はずれなども当然あるのだが、それをどうやって乗り越えるのか、等々がうかがえるのがおもしろい。

そして、教員自身に子どもたちに向けてひらかれた心、こういう授業や活動を創り楽しむ「遊び心」のようなものが根底にあることが浮かび上がってくるが、その陰には意欲的な研修を進めてきた各執筆者の努力があったことと思われる。

最終の5章では、このような教育がなぜ必要なのかを、子どもたちの現状を見つめるところから説いている。この本は小学校の実践を集めたものであるが、基本的な考え方や具体例はそこに留まらない。副題に「ドラマ・コミュニケーション」とあるように、子ども一人ひとりの想像力や創造性を触発することはもちろん、集団や社会のなかで生きるコミュニケーションの感覚を育むために演劇教育がいかに有効かが、当事者感覚・現場感覚の言葉で論じられていて読みやすい。

なお、この本で紹介されている実践は、いずれも教師自身が行っているものであり、昨今増えてきた演劇人によるものではないが、子どもの表現や演劇活動に関心のある人だれにでも具体的な参考になり、励ましになる1冊だと思う。


(文・日本演劇教育連盟・市橋久生)2006/6/5