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授業で実践「演劇でコミュニケーション」〜東京・N小学校〜
「ありのままの自分を表す喜び」「ありのままの姿を互いに認め合う良さ」そんなことを子どもたちに実感してほしいと願って、小野裕子さんは東京・N小学校で6年生33名の授業に演劇活動を採り入れた(2005年度)。 学校では、毎年11月に、それまでの学芸会に代えて学習発表会を開いている。発表会では劇も演じられることもあったが、国際理解教育に力を入れている教育委員会の方針もあってか、「世界の国々」や「世界の偉人伝記」といったものを劇仕立てにして発表する、というようなものが多い。「総合的な学習」のまとめとして劇をやるという場合によく見られることであるが、これでは「表現として中途半端」な気がすると小野さんは思っていた。 05年度、小野さんの学級でも子どもたちの多くから、この学習発表会で「劇をやりたい!」と言う声があがった。 小野さんは積極的に校外からゲストを迎えて、指導に当たってもらうことにした。その場合にとても大切にしているのは、ゲストティーチャーと事前・事後にしっかり話し合うことである。当たり前のことのように思えるかもしれないが、実はけっこう大変なことなのである。教員に時間の余裕は乏しい。わざわざ来てくれるゲストは演劇の道を行く人である。対等に話し合ったり授業プログラムを共同で創ったり、ということは外から見ているほどには容易ではない。 小野さんの場合は、親しく相談できる友人でもあったから、事前に1回ごとのテーマやキーワードを決めて行うことができた。また、授業後には、子どもたちの集中力やテンションの高まり方、声の出し方などについて検討した。そして、表現遊びで子どもたちの気持ちをほぐす、その後グループに分かれて即興で寸劇を楽しむ、といった具合に進めてくれた。 加えて、05年度には、演劇教育の経験豊かな講師を3回ほど迎えることができた。この演劇体験授業でも、表現遊びやコミュニケーション・ゲームのようなものが存分に行われ、子どもたちの心に劇上演への期待が高まっていった。 たとえば、みんなで一つの円形にならぶ。これがなかなか難しい。隣の人と適当な距離を保ち、さらに全体として大きな円形になる、というワークであるが、くっついてしまったり離れすぎたり、また楕円形になってしまうなど、お互いに指示し合ったりしているうちにかえって収拾がつかなくなってしまうということが見られがちなワークである。 「カウント・アップ」と呼ばれるゲームでは、講師にほめられ子どもたちが喜んだ。ほかの人と声が重ならないように、1から順に数を言い合う。子どもたちは、その場の空気に集中する。ほかの子の息遣いが感じられるまでに集中し、2・3・4・……と数え、目標の数まで言い合えたときのみんなの歓声。 これらは、相手との関係の中で自分の位置を認識ししっかりと立つ、また、集中力や達成感、あるいは仲間意識や連帯感などを実感できるもので、演劇的な要素が含まれている。 このような授業の先に11月末の学習発表会=劇上演があったのである。『ユタとふしぎな仲間たち』のお話(三浦哲郎原作)をもとに脚本を創り、子どもたちの好きな「ロック・ソーラン」の踊りを最後に入れて、友情の芽生えを喜び合うという舞台に仕上げた。 学習発表会で劇をやるという企画は職員会で理解され、保護者には大変好評であった。反面、学芸会の復活になるのではないか、この劇が前例になると次年度は負担になる、という意見も聞かれた。 小野さんは、今そしてこれからの子どもたちには、人と関わる力を育てることが重要であり、それには表現活動に意義があると考えている。人と関わりながらさまざまな問題解決を図る、生き方の基本を培うのに演劇が有効だと思っている。 このような小野さんの原体験は学生時代に受けた演劇講座である。教員になると早速、「演劇でコミュニケーション」の授業を行うようになった。「演じる」というと、「自分を飾り立てることのように思う子」(小野)もいるが、そうではなくて、ありのままの自分を出していいんだよ、お互いに認め合おうねというメッセージを贈りたい。「総合的な学習の時間」はそのための具体的な場であり、授業をとおして子どもたちの成長を実感できると考えている。 |
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(文・日本演劇教育連盟・市橋久生)2006/7/3
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