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 あらためて、「総合」に演劇・表現を!


「総合的な学習の時間」が採り入れられて、小・中学校では5年、高校では4年経った。

ほかの教科と違って教科書がない中で、それぞれの学校では教師たちが研究や創意工夫を続け、試行錯誤を繰り返しながら、日々の授業を行っている。

しかし、依然として、その負担感を拭いきれないという声も聞こえる。さらには、生徒たちの学力低下論が、その論拠に疑問を指摘されながらも印象として語られ、対策として他の教科の授業時間を増やすために「総合」の時間を減らすという案も浮かび上がっている。

では、「総合的な学習の時間」について、そもそもなぜ、どんな目的で、どのような学習を行おうとするのか?文部科学省はどう言っているかを、あらためて確かめてみよう。

■「総合的な学習の時間」とは…

・ 「生きる力」の育成を目指し、各学校が創意工夫を生かして、これまでの教科の枠を超えた学習地域や学校、子どもたちの実態に応じ、学校が創意工夫を生かして特色ある教育活動が行える時間。

・ 国際理解、情報、環境、福祉・健康など従来の教科をまたがるような課題に関する学習を行える時間。

■ねらいは…

・ 自ら学び、自ら考える力の育成。

・ 学び方や調べ方を身につけること。

■特色は…

・ 学校が創意工夫を発揮して行う体験的な学習や問題解決的な学習。(教科書はない)

・ 異年齢集団による学習や地域の人々の参加による学習、地域の自然や施設を生かした学習。

導入時に、文部科学省が「国際理解」など4つの分野を例として示したことによって、テーマをそれらにおく学校は多い。

しかし、今日の「子どもたちの実態」を思えば、「表現とコミュニケーション」こそが最優先的な課題であると考え、それをテーマにした授業に取り組んでいる学校も決して少なくない。この間、この連載でも「表現とコミュニケーション」に関する取り組みの実践を紹介してきたように、全国で数多くの実践が報告・紹介されてきている。

コミュニケーション・ゲームを含む身体(音声)の表現や演劇の活動が、いきいきとした人間関係を育んでいる現場があちこちにあるのだ。

3月2日、東京・世田谷区立奥沢中学校1年生による「職場体験・働く人を見つめる」発表会が行われた。世田谷パブリックシアター学芸部が協力して行った授業である。

この学校では、国語の総合単元「働く人を見つめる」を、学級活動、総合的な学習の時間も活用して取り組んできた。その授業のまとめとして、生徒たちがさまざまな表現方法を駆使して発表した。

16のグループに分かれ、地元のブティックやケーキ屋さん、図書館や大学の研究室、幼稚園や番組制作会社などを訪ねて話を聞き、それをグループごとに発表するというもの。口頭、映像、劇、人形劇、インタビューに応じてくれた人になりきって再現して見せるなど、多様なパフォーマンスに笑いが起こったり、しんみりと聞き入ったりと、午前・午後4時間にもおよぶ発表会は、みんなの集中が最後まで切れない。

この発表には、生徒たちと訪問先のおとなたち、表現を工夫する生徒たちとアドバイスをする教師や世田谷パブリックシアター学芸部のメンバー、そして、発表する人たちと見ている人たち(友だち、家族、街のおとなたち、他校の教師たち)、これら相互の間にコミュニケーションの空気が生まれているのだ。

このような学びがいかに楽しく、充実感があるか、生徒たちの表情が教えてくれる。その楽しさ・喜びが、さらに意欲を触発するのだ。そういう学びの意欲を抑えるような、競争と序列化の刺激による学力向上なら、子どもたちの「生きる力」にはならないだろう。自分自身が発見し、納得したものこそ、「知」の栄養として蓄積されるのだろう。

演劇、あるいは表現活動は、「総合的な学習の時間」の内であれ外であれ、もっともっと必要だということが、いっそう認識されていくことを望んでいる。

※奥沢中学校のこれまでの事例は、『演劇と教育』2005年7月号の 星陽子、すずきこーたの報告に詳しい。

(文・日本演劇教育連盟・市橋久生)2007/03/05