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演劇って使える!

小中学校のカリキュラムでは、「総合学習」の時間がますます増えてゆく……。その 中で注目を集める演劇とは、一体どのように使われ、どんな役割を担っているのだ ろうか。

広島県広島市立八本松中学校では、「舞台芸術ふれあい教室」として、世界で最も 有名なオペラ「カルメン」を教材として取り上げ、各教科に密接にリンクさせながら 授業を進めている。
どのように授業を進めているのか具体的に紹介していこう。

1、興味を持たせる。

八本松中学校では、生徒達が「カルメン」に興味を持たせるために、 国語の授業で「カルメン」の物語を読んだり、音楽の授業でオペラの歴史やオペラ作品に ついてを紹介するなど、多くの科目の中で連携させることで、 「カルメン」の世界観やオペラの魅力を伝える努力をしている。

2、問題に気づく

物語を知れば、登場人物の行動について、さまざまな問題や疑問が生じることに なる。例えば「人を好きになることってなんだろう?」とか、「嫉妬って?」な ど……。
それらを生徒が自らで気づき、考えることが、総合教育の初めの一歩となる。す なわち、「カルメン」を教材として、その魅力を一方的に語るのではなく、生徒 達があくまでも自発的に研究、洞察するようになること。この点が、総合教育 として最も重要なことである。

3、登場人物(他者)の気持ちを考える

登場人物をより身近に感じ、彼らの行動を理解するためには、自分自身が登場人 物になりきることが、一番効果的である。八本松中学校の生徒は、それぞれがカ ルメンの登場人物を演じることで、自分ならどうするか、自分ならどう思うか、 また、なぜ登場人物(他者)はそのような行動に出たのかを考えてゆく。 さらに、社会で「スペインの歴史と地理的条件」を取り上げたり、スペイン日本 人学校と交流することで、当時の人々の思考や習慣から気持ちを想像するため の手助けをする。
こうしたサポート体制が、八本松中学校の素晴らしい努力である。

4、他者を表現する

登場人物の心理を理解したら、次は“表現”のステージへ。八本松中学校では、 ただ演じるのではなく、プロ歌劇団と共に「カルメン」を上演する。生徒達は、 この上演を通して、役者達の豊かな表現力を学び、表現することの楽しさを知 ることになる。また、大勢で演じるオペラは、他者との共同作業である。自己を 主張しながら、他者を理解する。演劇作りの現場は、コミュニケーション術の最 適な実践場なのである。

「気づく」「考える」「表現する」といったことは、総合教育の根本的な理念であ り、そのプロセスは、演劇の出来上がってゆくプロセスと一致する。 演劇を用いることで、生徒たちの想像力や感受性を養い、コミュニケーションを築き ながら、1つのものを作り上げてゆく。その中で生まれる協調性やチームワーク。 また、自己表現と他者理解というテーマは、生徒たちが実感する達成感と連帯感に より、さらに大きな効果を得ることができる――。

もちろん、八本松中学校のような例は、あくまでも特異であり、これが全てというわ けではない。演劇教育として取り上げるテーマも、家庭や社会など、もっと身近な ものでもいい。

大事なことは、「気づく」「考える」「表現する」というサイクルを、生徒達が自ら 進めてゆくこと。教育ツールとしての演劇は、この点に最も優れているといえる。 なぜならば、他人を演じるということに専門的な技術はなく、自由に表現できるか ら。
自由な表現には、個性的な着眼点と考え方が活かされるから、なのだ。
演劇が教育現場で果たす役割は、今後増えていくことと思うが、同時に解決しなけれ ばならない問題も多く存在する。次回は、そんな演劇教育の問題点について考えてゆ こう。

2001/7/16   





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