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演劇教育とインターネット

前回、このコーナーで紹介したイギリス・スコットランドの「TAGシアターカンパ ニー」の活動について。1度きりの教師向け演劇トレーニングにとどまらず、その 後、インターネットを通じて、学校間、生徒間を結び、演劇においてのコミュニケー ションを場を提供しているという記事に、大阪、九州、北陸の読者の方からの問い合 わせや要望のメールが編集部宛に相次ぎ、スタッフ一同、このメールマガジンの反響 に驚いています……。

今回は、TAGシアターカンパニーが、エデュケーション現場にどのようにインター ネットを導入しているのかを具体的に紹介しながら、演劇教育におけるインターネッ トの力を考察してゆきたい。

演劇教育に限らず、教育現場全体において、大きく注目されているのが、インター ネットの活用法。日本でも、全国の私・公立学校にインターネットが普及しはじめて おり、文部科学省では今年度中に、全国全ての公立学校でインターネット接続が完了 するとしている。

しかし、インターネットの教育への活用には、いくつかの課題がある。ひとつは校内 インフラの整備までには、予算的にももうしばらく時間がかかること。もうひとつ は、教える教師側のレベルである。

パソコンを使った授業の多くは、パソコンの操作の仕方や、簡単な計算問題の練習な どに終始してしまっているという事実がある。教える側にもノウハウがなく、教育用 コンテンツも試行錯誤の状態。ハードはあるがソフトは無いという状態だ。

演劇教育にインターネットを活用しているスコットランドのTAGシアターカンパ ニーは、国内4ヶ所で2日間にわたって、教師を対象とした演劇教育のトレーニング を実施したのち、その後さらに2日間、インターネットとパソコンの講習も開いてい る。トレーニング後は、演劇教育ノウハウを各学校に持ち帰った教師と生徒が活動の 中心となる。そのため、教師にパソコンの活用法を十分に理解してもらうことで、オ ンラインでの相談・アドバイス・コミュニティスペースの提供など、インターネット を通じてのアフターサポートをより効果的に行うのが狙いだ。

この演劇ワークショップで取り上げられたテーマは「コミュニティ(地域社会)」。 子どもたちは、トレーニングを受けた教師の指導のもと、自分たちの住む地域社会の 抱える問題をリサーチし、創造力を働かせて、理想の地域社会を空想してゆくという もの。その後、子供たちは、空想によって創りあげた“理想のコミュニティ”を、T AGシアターカンパニーのホームページ上で紹介し、まるで現実のもののように、 「ぼくたちの国はこんな国だ!」と語る。フィクションを空想し、工夫して表現する というこの作業は、演劇教育における「ドラマ作り」の手法である。

他の学校からも、様々な「理想の国」が紹介される。子供たちは、他の地域からの刺 激や意見を受け入れながら、空想をより大きく、具体的に広げてゆく。このとき、T AGシアターカンパニーはインターネットを通じて、人々が集まり、表現できる広 場、すなわち“舞台”をも提供していることになる。もちろん、ここに至るまでの作 業においても、教師とTAGシアターカンパニーとで、インターネットを通じた連絡 ・相談・アドバイスが頻繁に交わされてゆく。教師同士でも、掲示板を利用しての意 見交換を行う。演劇教育に最も重要な「継続性」を、インターネットを活用すること で実現させたのである――――。

もちろん、ここに紹介したのは1つの例である。日本の教育現場においては演劇もイ ンターネットも、まだ十分にその力を発揮できてはいない。ともに表現力とコミュニ ケーション力を養う、自由度の高いツールであるだけに、教える側のイメージが十分 に固まっていないのが現状である。その点、未成熟な2つの分野を組み合わせて、新 しい形を提案したTAGシアターカンパニーこそが、優れた表現力を持っているとい うのはさすがだ。

現代の日本においては、子供たちのイメージ力や表現力を養う以上に、教える側のイ メージ力・表現力を膨らませるためのワークショップが、最も必要なのかもしれな い。演劇も、インターネットも、教師のイメージ力によって、その可能性は無限に広 がってゆくのである。


2001/9/3   





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