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アメリカの芸術教育普及プログラム・後編
1990年頃からアメリカで活発になっているのが、芸術の普及を目指した教育プロ グラム。前回は、芸術を通じて学習するという「Learn Through Ar t」についてを取り上げたが、今回は、もう1つのキーワードである「Learn Art(芸術を学ぶ)」の取り組みをご紹介しよう。 「Learn Through Art」 (芸術を通じて学習する) 「Learn Art」 (芸術を学ぶ) 日本の場合、「芸術を学ぶ」というと、中学校や高校の芸術鑑賞会などがイメージさ れる。劇場に向かう前の授業で、これから鑑賞する作品についての簡単な説明を聞 き、いざ会場へ行くと、生徒達はみな眠ってしまって、たいして記憶に残らない、も しくは、とっても退屈な思い出しか残らないアレである。 しかし、ここでご紹介するのは、そんなものとは全く違う。 Learn Artのポリシーをもっとも強く打ち出しているのは、アメリカの舞台 芸術の殿堂であるリンカーン・センターの教育部「リンカーン・センター・インス ティテュート(LCI)」だ。LCIのプログラムのは、芸術を利用して何かをする のではなく、芸術作品そのものとの付き合い方を学び、鑑賞能力を養うことを目的に した活動を行っている。 まず、年度ごとに学習の対象となる10前後の【ユニット】を選出する。このユニッ トとは、1つの作品の場合であったり、あるパフォーマーの特定の演目であったり、 1つの劇団や楽団そのものである。もちろん、選ばれるユニットはレベルの高さにつ いて、専門家たちが太鼓判を押したものだ。 これらのユニットを、LCIプログラム加盟校の教師陣は、夏休みがスタートする6 月に全て鑑賞する。さらには、鑑賞したユニットのワークショップを3週間にわたっ て体験するのである。 ワークショップを行うのは、実際に舞台に立つ役者や音楽家、ダンサーたち。ワーク ショップが行われるスタジオで、教師たちは動かない(?)身体を必死に動かし、 「身体で表現するって、こういうことか!」「リズムを刻むって楽しい!」「ことば を発するって、気持ちいい!」と、表現の魅力をココロとカラダに深く刻み込む。 そして、ワークショップの後にもう1度、ユニット公演を観る。こうすることで、教 師は、表現されている世界を十分に理解し、感動できる。実際に体験することで、芸 術を鑑賞する目を養うことになるのだ。 そのあとの教師たちの課題は、「自分自身が受けた体験や感動を、どうやって生徒た ちに伝えるか?」である。 教師たちは、9月の新学期開始までに、自分の体感を生徒たちに伝えるためのプログ ラムを考えることになる。8月中には、LCIから各ユニットに関するさまざまな知 識や情報などの要素が配られるので、これを参考にしながら、LCIのスタッフや アーティストとともに、授業進行の組み立てについての打ち合わせを重ねる。 自分の体感したことや、生徒たちに伝えたいことを明確にし、「あの感動を生徒たち に伝えるにはどうしたらいいか?」を、頭を悩ませながら、必死になって授業を組み 立てる……。 Learn Artで大切なのは、まず教師が生徒になること。そして、その体験を 授業に反映させることである。「生きた芸術」を体験した者のコトバが、流暢である 必要はない。それよりも、「感動を伝えたい!」という気持ちを持つことだ。そうす ることで、教師のコトバが「生きたコトバ」として生徒たちに伝わり、後に彼らが本 物のユニット公演を観るとき、「生きた芸術」の魅力を素直に受け止められるように なるのだ。 日本の場合、芸術文化の普及が遅れていることを嘆くことはあっても、その理由が論 じられ、改善されることは少ない。多くの公共ホールが何百万円(時には何千万円 !)も払ってクラシックコンサートを開催しているが、その担当者はベートーベンす ら知らないということだってしばしばなのだから。 学校の芸術鑑賞会だって、教師ですらあまり理解していない古典芸能を、「教科書に 載っているから」「教養だから」といって見せているだけ。LCIが聞いたらば、 きっと「もったいない!」とびっくりすることは間違いないだろう。 子供にゲージュツを無理矢理に“鑑賞”させるよりも、大人が自分自身で芸術に“感 動”することのほうが、芸術文化の普及につながるはず。これって、日本人にとって はそんなに難しいことなのだろうか……? |
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2001/10/15
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