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地域が支える子ども演劇.2 兵庫県立ピッコロ劇団

公共ホールで行なわれるこども向けの演劇は、普段演劇に触れる機会の少ない子 どもたちに、どのような影響を与えているのだろうか。今回は兵庫県立ピッコロ劇団 を見てみたい。

ピッコロ劇団は、全国で初めての県立劇団である。1978年に誕生した兵庫県立尼 崎青少年創造劇場(ピッコロシアター)が、地域社会の文化活動のリーダーと将来の 演劇創造者を養成する目的で開いた演劇学校の集大成として、1994年に結成さ れた。劇団員たちは劇団の活動に専念できるように、年間192万円が支給され、さ らに活動実績によっては+αが与えられる。尼崎は「近松門左衛門の街」と言われて いるだけに、職業演劇がすでに根付いている土地柄のようだ。

ピッコロ劇団の公演の特徴は、「観客参加型」であるということ。会場入り口では衣 装に着替えた劇団員が、3歳くらいから小学校低学年くらいのこども達をスカウトす る。勿論、それ以外の子どもでも「出たい」と希望すれば、その場で衣装や小道具を 渡され、客席に向かわずに舞台袖の子ども専用ステージにのぼっていく。

芝居もすぐに開幕するわけではない。その前に、演劇的要素を交えたゲーム(シア ターゲーム)などをして会場との交流を図ったり、出演希望を出した子どもたちの練 習を公開したりする。やがて、客席と出演者が一体になったところで幕が開くのであ る。

ピッコロ劇団が誕生して間もない1995年、神戸は未曾有の震災に見舞われた。町 中の建物は崩壊し、人々の心も落ち込んでいった。ここでピッコロ劇団は、絶望に打 ちひしがれる市民のために、間近に控えていた劇場公演を延期し、その代わりに避難 所や学校など52箇所を巡回公演することにしたのだ。

会場はロープを1本はっただけの青空劇場である。少しでも傷ついた人々に笑顔を取 り戻してもらおうと、身体を思いっきり動かすシアターゲームや寸劇を力いっぱい演 じていった。このとき生まれたのが、観客参加型公演「震災版・桃太郎」である。鬼 に扮した劇団員達を観客の子ども達が退治するのだ。

震災以来、笑顔をなくしていた子ども達も、この公演によって身体を目いっぱいに動 かして心を解放し、それまで溜め込んでいた哀しさや苦しさを解消することができ た。…………こども達に笑顔が戻った。そして、大声で笑いながらイキイキと演じる 彼らの姿を見て、大人達にも笑顔が戻った。こうして、ピッコロ劇団は地域の市民に 受け入れられ、震災の翌年には、尼崎商工会議所が先頭に立って、地域の中に後援会 も組織された。

あれから7年。町はハード面での復興は進んでいるが、不況の影響もあり、まだまだ 苦しい状況を引きずっているという。演劇を取り巻く環境も例外ではない。「劇場に もっと多くの観客が集まってこそ、本当の復興ではないか」兵庫県立尼崎青少年創造 劇場館長の山根淑子氏は、そう語っている。

役者と一緒に舞台に立つ子ども達。彼らはそこで、舞台の楽しさだけでなく、大勢で 1つのモノを創り上げる喜びを知る。震災から始まったピッコロ劇団のこの公演は、 将来を担う子ども達の文化的成長に大きくかかわっているだろう。

ただ演劇鑑賞を呼びかけるだけでなく、子ども達にとって本当に必要な舞台を創造す るピッコロ劇団。メンバー達の顔は、7年前に比べて、格段にたくましく輝いている。

(文・O)2001/1/7   





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