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〜フリースクール・彩星学舎の演劇講座〜
学習障害(LD)や不登校、高校の中途退学者などに学びの場を提供するフリースクール。この数年間でかなり活動が活発になってきたが、その中でもとりわけ面白い活動をしているのが、埼玉県にある「彩星学舎」である。 彩星学舎は、学力充実を目指す児童・生徒はもちろんのこと、学習障害やいじめで不登校になってしまった児童・生徒、さらには学びたいという意欲を持った大人達にまで開かれた、「もう一つの学びの場」である。 ここは、約20年前、ヘッドマスターである垣花卓信氏が始めた「埼大教育セミナー」が母体となっている。垣花氏は、いろんな体験を通して幅広い知識を自分の中に取り込み、その知識をもとに、外に向かって表現をする「体験的総合学習」や、生徒の間に講師が入り、授業を円滑に進めながら個々のベースに応じた学習を進める「チームティーチング」など、“詰め込み型”の学習とは正反対の教育実践を行なっていた。そして約15年前からは、不登校・社会人・高校再受験・大検といった様々なニーズを持った人たちに対する教育を実践している。 そして、1999年4月、より充実した体験的総合学習やチームティーチングの実践の場として開校したのが、「彩星学舎/埼大教育セミナー」だ。 ここでは、それぞれ個々の生徒の個性にあわせて、いくつかのコース分けをしている。広域通信制高校に在籍する生徒に対しては、“社会的自立”と“仲間との連帯”を主な課題として指導・援助する「ペガサスコース」のほか、長期欠席児童・生徒を対象とした「オリオンコース」、学びたいという欲求のある全ての人に開かれた「レオコース」、民間による擬似大学の「シリウスコース」など。いずれも、受講する側 のニーズを考えたカリキュラム設定がなされている。 注目すべきは、全てのコース共通で設定されている科目。それが、「演劇の講座」と、「演劇の公演」である。 「演劇の講座」は、コミュニケーション術や社会適応力の向上を目的とした授業。ところが、不登校やひきこもりなどの対人的な問題を抱える生徒たちは、他人に対する不信感や恐怖感が強い。そんな彼らの“殻”を破るための講師の努力は、どんなものだろうか? 例えば高校生であっても、他人の身体を「いのち(生命)」としてではなく、「もの」として扱おうとする。平気で人を突き飛ばしたり、相手の嫌がることをわざと試してみたりするのは、相手の生命を気遣うよりも、自分を主張するために、ついつい凶暴になってしまう証である。不登校や引きこもりなどで、他人と接する時間が少なかった生徒達には、講師が、彼らとじっくり向かい合いながら、長い時間をかけて、信頼や優しさに気づかせてゆく。 ただし、そうした感情や考え方は、理論的に説明するよりも、本人の感性に訴えかけることが、もっとも効果的である。そんな中で、大きな存在意義を発揮するのが、「演劇の公演」だ。 「演劇の公演」は、たった一度きり、いわば“一期一会”の緊張感の中で、さまざまな相手と共有する。「公演を成功させたい!」という目的を達成するには、他人との協力作業が、必要不可欠になる。 彩星学舎の「演劇の公演」には、親や親戚、地域の人々など、およそ160人以上の 観客が集まる。人との接し方に苦しむ出演者たち。そして、そんな彼らにどうやって接するべきかを悩む観客たち。だが、その間に“演劇”を介在させることで、それまで臆病になりがちだった双方向コミュニケーションが、伸び伸びとした雰囲気のオープンなものに変化する。それこそが、「演劇の公演」の魅力である。観客、出演者は、こうした“演劇”を通して、コミュニケーションに対する大きな自信を得るのである。 また、他人と協力して1つの目的を達成しようとするエネルギーは、フリースクール に通う生徒たちのコミュニケーション能力以外にも、大きな変化をもたらした。幼い頃の病気がもとで勉強についていけず、漢字の読み書きもままならなかった生徒が、 毎日少しずつ漢字の練習を始めたり、無気力だった生徒がコントの制作に意欲を燃やしたり、口数の少なかった生徒がよく発言をするようになったり……。発信すること、自信を持つことの大切さを感じた彼ら誰もに、何かしらの心境の変化が現れた。 今年3月、彩星学舎の第1期生4人が卒業した。専門学校に進学したり、彩星学舎の研究科に進んだりと進路はバラバラだが、演劇を通じて学んだことは、必ず社会での生活に活かされてゆく。演劇は、“芸術”としてだけではなく、“日常”にも大きな影響を与える。彩星学舎の活動とその成果は、これから、もっと一般社会に伝えられ てゆくことだろう。 |
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(文・O)2002.06.03
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