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ギリシャの演劇 〜政府が演劇を支配し、演劇が国民を支配した国〜

古代ギリシャと言えば、神話、悲劇、そして円形型の劇場・コロッセアムがイメージ される。

かつて、その円形ステージでは、多くの人々を集め、奴隷達の「殺し合い」が繰り広 げられていた。そして、その「殺し合い」の観戦から、今もお馴染みの2つのエン ターテイメントが生まれた。……「演劇」と「プロレス」である。この2つ、確かに パッとしたイメージは違うが、“生”を感じさせるライブ感覚や緊張感は、大いに共 通する要素である。

奴隷達の殺し合いを観戦するという娯楽は、やがて仮面をつけて行なわれるようにな り、さらには、その仮面になりきるという、より演劇に近い形に進化(退化?)して いった。

その後、この娯楽が市民に与える影響を重視した政府が、劇場運営の主導権を握り、 政治問題や社会問題を取り入れた演劇が活発になった。国立劇場は政府の力に縛ら れ、自由な表現を失った“死んだような演劇”が繰り広げられた。

古代に端を発するギリシャ演劇の流れは、政治と結びついていったのである。

国民たちは、演劇が語る政府のプロパガンダによって洗脳され、精神を支配されてし まった。近代ギリシャ演劇では、芸術的な意義のない、空白の長い時代が続いた。そ んな低レベルな演劇であっても、人々はこぞって劇場に足を運び、政府のプロパガン ダを熱狂的に受け入れていった。どんなテーマであっても、人を、街を、国をも支配 してしまう演劇の力には、改めて驚かされる。

現代のギリシャ演劇は、政府に芸術と表現を支配されるという時代を経て、今、徐々 に活気を取り戻してきている。もっとも、以前のように、演劇の力が全国民に大きな 影響を与えるということはなくなったが、芸術的なレベルは高くなり、世界的にもギ リシャ演劇の評価はぐんぐんと上がってきている。有史以来、波乱万丈の歴史を刻ん できたギリシャは、演劇のジャンルでもまた、激しい浮き沈みの末に、今、上昇気流 に乗りつつある。

近年、ギリシャでは、様々なプログラムのフェスティバルが開催されている。例え ば、夏には「アテネ・フェスティバル」という、演劇、舞踏、音楽などを世界から集 めた大規模なイベントがある。満点の星空のもとで、世界の一流のパフォーマンスを 楽しめるという、贅沢で豪快なイベントだ。その他にもギリシャの古典劇を楽しむイ ベントも数多い。ギリシャ演劇が完全に復活する日は、そう遠くない。

シェークスピアよりも古く、シェークスピアよりもバリエーション豊かなギリシャの 古典劇の数々。今でも、世界中の一流カンパニーに好んで上演され(日本の劇団四季 も「アンドロマック」を開幕する)、人々の心を揺さぶっている。

奴隷の殺し合いから生まれてきた「人間」のドラマは、これから目が離せなくなりそ うだ。 

(文・TMK)2002/02/04




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