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路上演劇祭の地  メキシコ

メキシコは、困窮する農家、都市の人口の増加と周辺部のスラム化、失業問題、路上 生活者の低年齢化、蔓延するドラッグや暴力など、深刻な社会問題を数多く抱えてい る。同時に、社会全体に関わる構造的な改革が無視され、犯罪に直接関わった者だけ が罰せられて、問題の解決にはつながらないという状況が続いている。

そんなどん底の社会情勢の中で、1992年に第1回メキシコ路上演劇祭が開催され た。市内の公園や広場で、クラウン芸や大道芸、学生劇団からプロ劇団まで集まり、 芝居やパフォーマンスを展開、中には、路上で生活する子供たちが、自らの生活をス ケッチして演じたような芝居もあったとう。実は、このフェスティバルの中心は、メ キシコの国や人々が、自分の抱える身近な問題を描いたドラマだったのである。

“自分自身を描いた演劇”を観ることで、普段は見過ごしたり、諦めたりしている テーマに真っ向から取り組み、問題の在りかを見つめることが出来る。さらには、自 らで演じることで「変わらなくちゃ!」という希望を持ち、どん底のサイクルから脱 出するきっかけとなる可能性が生まれてくる。

そんな演劇が、閉じられた劇場空間で、一部の裕福な人々のためだけに存在していた のでは本末転倒。「開かれた空間(=路上)で上演して初めて、より多くの人々に考 えるきっかけを作ることが出来る」というのが、この路上演劇祭の意義なのである。

現代の日本が抱えている問題はメキシコとはタイプが違うものの、失業問題や、自殺 者の急増、若者の犯罪、子供の引きこもりなど、年々深刻さを増している点で共通し ている。そしてまた、こうした問題をどのように解決してゆくべきかを考えるとき、 メキシコの路上演劇祭は、1つのヒントでもある。

2001年4月、メキシコで路上演劇祭を10年間に渡ってプロデュースしてきたギ ジェルモ・ディアス氏が来日し、東京・世田谷、静岡・浜松の2ヶ所で、「路上演劇 祭japan」が実現した。このイベントでは、演劇だけでなく、音楽や朗読、ダン スなども盛り込まれ、さらにはシンポジウムやワークショップなども開かれた。もち ろん、参加者は子どもから大人まで誰でもOK。まさに、全ての人に“開かれたイベ ント”である。

そして、「路上演劇祭japan」は、「もういちどやりたい!」という大勢の人々 の声により、今年6月に、世田谷で再び開催されることが決定した。

子供から若者、大人、高齢者、さらには在日外国人、身体障害者など、全ての人々 が、文化芸術を通じて交流することで、新しい出会いや発見が生まれる。さらに、そ んな貴重なイベントが、民間の人々の希望によって再び開催できるということが素晴 らしい。

ヨーロッパ、ラテンアメリカ、アジアでは、路上演劇が、人々の交流の場所や社会的 な問題を考える場所、そして人々が生き生きと楽しむ場所として確実に存在してい る。そして日本でも増えることを期待する。

(文・TMK)2002/4/15




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