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演劇人が支える映画「ゴスフォート・パーク」
10月26日、恵比寿ガーデンシネマにて、アカデミー賞・脚本賞、ゴールデン・グローブ賞監督賞をはじめ23の映画賞を受賞したロバート・アルトマン監督の集大成ともいえる最新作、「ゴスフォート・パーク」(本年度アカデミー賞脚本賞受賞)が上演された。 1932年11月、イギリス。「ゴスフォード・パーク」と呼ばれるカントリー・ハウスでパーティーが催され、イギリス貴族達が続々と集まってくる。晩餐の席には倦怠と煙草の煙が満ち、パーティーの一日目の夜は、何事もなく更けていった。それぞれのベッドルームの扉が閉じられるまでは…。パーティーのホスト役である主人、マッコドール卿が何者かに殺害されたのだ。 ゴスフォート・パークに集まってきた人々は、貴族達だけではない。豪華な暮らしをする“階上”の住人である彼らのお世話をするメイド達。つまり、“階下”の人々も加わり、総勢24名もの登場人物が描き出す、アルトマン監督が最も得意とする「アンサンブル劇」になっている。 この作品のように、様々な登場人物が一つの場所に集い、それぞれの人生が交錯していくストーリーは、その原点である名作の名を借りて、「グランド・ホテル方式」と呼ばれている。 アルトマン監督は、登場してくるあらゆる人物に「人生」と「背景」を与え、“階上”の人々も“階下”の人々も、それぞれ全く違った方向を向いているように配置しながらも、“殺人事件”という大きな幹を置くことで、それぞれの“向き”に深い意味を持たせている。 本筋とは関係ないと思って楽しんでいたはずのエピソードが、突然本筋に絡み付いてゆくのだから、ますます謎解きに没頭させられる。 そして、この作品の魅力は、超一流の俳優陣にもある。 長年に渡って監督を支えてきたプロデューサーのデヴィッド・レヴィによって、ほとんどがイギリス人という魅力的なアンサンブル・キャストが出来上がったという。アルトマン監督は「イギリス人俳優は舞台との結びつきが強いので、演技が力強く、それぞれがアンサンブル演技を非常によく理解している」と語り、今回のキャスティングに大いに満足してるようだ。 それもその筈。なんと、24名のキャストのうち10名が、過去1年間の間にロンドンやブロードウェイの大舞台で主役を張っている大物なのだ。 主演・助演で2度のアカデミー賞を受賞と、4度のノミネート暦を誇り、最近では「ハリー・ポッターと賢者の石」が記憶に新しい“マギー・スミス”。 1963年のナショナル・シアター・カンパニーのオリジナルメンバーでもあり、映画では「スリーピー・ホロー」や「インサイダー」、「シャーロット・グレイ」等に出演している“マイケル・ガンボン”。 1975年にロイヤル・シェイクスピア・カンパニーに参加し、「ヘンリー5世」で主役を務める他、「エイリアン3」などにも出演し、幅広い役柄に挑戦している “チャールズ・ダンス”。 「アメリカン・ビューティー」のサム・メンデス監督が演出した「シラノ・ド・ベルジュラク」での演技が絶賛された、“トム・ホランダー”。 本来、舞台中心の俳優で、ロンドン批評家協会賞イアン・チャールソン賞などに輝いている“クローディー・ブレイクリー”。 ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーに所属し、舞台女優として輝かしいキャリアを築きながら、映画にも積極的に出演し、アカデミー賞助演女優賞にもノミネートされた“ヘレン・ミレン”。 その他、ドンマー・ウェアハウスの舞台の真っ最中の“エミリー・ワトソン”、今年トニー賞に輝いた“アラン・ベイツ”等々、書き始めれば紙面が足りないほどの名優陣で構成されている。 そして、これらの俳優達全員にワイヤレスマイクを用意し、自然に演技するように、と言う以外は特に指示を与えず、カメラを回すのがアルトマン監督の手法なのである。 そうなると勿論、いっせいに全員がしゃべりだす事がある。これは、アルトマン監督の作品の魅力でもあるが、役者がその場で生きてこそ出てくる空気を狙ったものだ。「最高のセリフは時として即興から生まれてくる。」と監督自身も語っているように、非常に演劇的な要素を持った映画になっているのである。 映画好きを自称しながらも、演劇を見ない人は多い。また、演劇的な演技を「大げさだ」と言って敬遠する映画俳優志望の若者も多い。しかし、人を演じ、人を感じ、その時々で空気を作り上げていく舞台演劇の力強さは、劇場を飛び出し、銀幕を通しても色あせる事はない。 この映画を通して、改めて舞台の薫り立つ雰囲気を感じてもらえる筈だ。是非、お芝居から遠のいている人達に見てもらいたい作品の一つである。 |
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(文・O)2002/10/28
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